投稿日:2025年9月9日

価格競争に巻き込まれない消耗品OEM商品の差別化戦略

はじめに:消耗品OEM市場が抱える課題と現状

消耗品OEM市場における差別化の必要性は年々高まっています。
多くの製造業では、消耗品を外部から調達し、自社ブランドとして販売するOEM商品の取り扱いが一般的です。
しかし、業界全体が価格競争へと陥りやすく、値崩れや利益率の低下に悩む企業が後を絶ちません。

本記事では、20年以上にわたり製造現場や管理職として培った経験から、価格競争から脱却し、消耗品OEM商品で持続的な利益を生み出すための差別化戦略を徹底解説します。
現場目線に立った実践的なアプローチと、昭和から抜け出せないアナログ業界の慣習を踏まえたリアルな動向を盛り込んでいます。

なぜ消耗品OEMは価格競争に巻き込まれやすいのか

コモディティ化の壁

消耗品OEM商品は、そのほとんどがコモディティ化(均質化)の波にさらされています。
具体的には「どこのサプライヤーから買っても、ほぼ同じ品質・同じ仕様・同じ価格」という認識を持たれがちです。
このため、購買担当者は“より安いもの”を選びがち。
結果、「価格が他社より1円でも高いと採用されない」という悲鳴が現場で上がってしまいます。

情報格差が縮小している

インターネットや調達プラットフォームの普及によって、バイヤーは瞬時に複数サプライヤーの価格や仕様を比較できるようになりました。
営業担当者の“顔パス”や従来からの情実取引は通用しにくくなり、透明性の高い取引が進む一方、価格だけを評価基準にされやすくなっています。

“昭和”的アナログ業界の変化

従来の製造業界では「長年の付き合い」が重視されてきましたが、企業の世代交代やグローバル調達の進展により、過去の実績優先から明確な付加価値やコストダウン要請が増加しています。
こうした変化の波を受ける中、OEMメーカーはなぜ自社の商品が選ばれるのかという“理由づくり”がより重要となっています。

差別化のための3つの戦略的アプローチ

価格競争に巻き込まれず、永く選ばれるOEM商品となるための差別化アプローチを3つの軸で解説します。

1. 提案型OEM:現場目線の“お困りごと”を起点とする

実践現場では、消耗品には必ず「小さな不満」や「まだ気づかれていない課題」が潜んでいます。
たとえば「消耗品の交換頻度が多い」「廃棄コストが高い」「交換作業が面倒」といった現場の声です。
単に同等品を納めるだけでなく、「貴社の交換作業を3分の1に短縮できる新設計」や「廃棄物量30%削減」など、使用現場が“嬉しい”と感じるソリューション提案を加えましょう。

顧客工場への訪問や、現場責任者へのヒアリングを徹底し、仕様提案の理由を「現場の困りごと」起点で訴求することで、価格だけでなく“メリット”で選ばれやすくなります。

2. 付加価値サービスの徹底強化

昭和型の「モノ」売りから「コト」売りへの転換が鍵となります。
たとえば以下のような付加価値を組み合わせることで、価格競争だけではない独自の立ち位置を築くことができます。

  • 定期交換・備蓄・自動発注などのサポート体制を整える
  • 消耗品の“健康診断”や手入れ方法講習会を実施する
  • トレーサビリティ管理やサステナビリティ報告に協力する

単なる納品業者から、「生産現場の効率化やリスク低減にまで踏み込むパートナー」へと昇格する視点が差別化の武器になります。

3. 独自技術・デザインでのブランド構築

競合と明確に異なる「尖った特徴」を打ち出せる自社独自技術を磨くことは、差別化の王道です。
たとえば、「日本唯一の独自材料」「特殊な製造方法」「自社開発の省エネ設計」などの独自性は、特に海外サプライヤーが台頭する中で国内製造業が生き残る上で大きな柱になります。

また、デザインやパッケージングにも目を向けることで、工場現場で「使いたい」「これでなきゃダメ」と思わせる心理的なフックも大切です。
毎日手に取る現場リーダーや作業員の目線を徹底的に意識しましょう。

バイヤーの本音を探る:選ばれるOEMサプライヤーの条件

現役工場長やバイヤーの立場から見た時、「どうやったらこのOEM消耗品サプライヤーを採用したくなるか」を掘り下げます。

安心できる訴求ポイントとは

バイヤーは「品質の安定性」「供給体制の確実さ」「緊急対応力」の3点を最重要視する傾向があります。
なぜなら、万一消耗品でライントラブルや事故が発生した場合、担当バイヤーの“評価”や“責任”が問われるからです。

評価を高める“情報発信力”

サプライヤーが積極的に技術データや改善提案、社会的責任(CSR)への対応事例などを資料や自社ウェブサイトでわかりやすく発信しているかも選定基準です。
「新着の技術情報」「他工場での採用実績」「実際の改善事例」といった“生きた情報”は、バイヤーの社内稟議をスムーズにし、あなたへの信頼感(=選ばれる理由)を高めます。

アナログ業界の根深い慣習への対策

古い慣習や現場独自のルールが根強く残る昭和型業界では、社内の“反対勢力”や意味のないルーティンが未だに存在します。
このような環境で差別化を進めていくにはコツがいります。

慣習に合わせた“段階的な提案”

いきなり大きな変革を求めず、「現在の消耗品仕様+α」からスタートし、小規模なテスト導入(トライアル)を提案しましょう。
現場担当者を取り込むには、“小さな実績作り”を重ねて信頼関係を強めることが大切です。
特に生産設備や運用フロー全体への影響を心配する声には、「現状のラインを一切変えない」「保証やサポートを約束する」などのきめ細かい配慮が効きます。

“横のつながり”を活かした口コミ戦略

昭和的な業界には“人脈”や“紹介文化”が今も色濃く残ります。
自社を利用している他社(同業・異業含む)の実例や推薦コメントを武器にすることで、説得力と信頼性が飛躍的に高まります。

まとめ:消耗品OEM商品の未来をつくるために

価格競争に巻き込まれず選ばれるためには、「現場目線での提案」「付加価値サービス」「独自技術・ブランド化」の3本柱が不可欠です。
バイヤーや現場リーダーの本音をくみ取り、昭和型のアナログ慣習も上手に活かしながら“あなたしかできない”差別化を続けていきましょう。

現場に根ざした製造業のプロとして、これからも新しい差別化の地平をともに切り開いていくことを願っています。

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