投稿日:2025年9月10日

工場の廃熱回収システムで達成するSDGsの具体例

はじめに

製造業の現場では、日々大量のエネルギーが消費され、その過程で多くの廃熱(はいつねつ)が発生しています。
この廃熱は、従来はそのまま工場外へ放出されるケースが多く、エネルギーロスの大きな要因となっていました。
しかし、SDGs(持続可能な開発目標)の社会的な機運の高まりとともに、工場の廃熱を有効活用する「廃熱回収システム」への注目が集まっています。
本記事では、製造業経験者ならではの現場視点と業界のリアルな課題感を交え、工場の廃熱回収システムがSDGsの達成にどう貢献できるのか、具体的事例や実践的なポイントもあわせて解説します。

SDGsと製造業を取り巻く環境の変化

SDGsが製造現場にもたらすインパクト

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連で採択された17の目標・169のターゲットを持つ、世界共通のゴールです。
この中で、エネルギー、環境、働きがいなど、製造業の現場と直結するテーマが数多く含まれています。
特に近年、グローバル企業のみならず、国内の多くの製造業もSDGsへの取り組みを取引先や消費者から求められるケースが増加しています。
バイヤーやサプライヤーも、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点で評価される時代に変わりつつあります。

「昭和」型製造現場とのギャップ

一方、現場には「昔ながらのやり方」「今まで問題なかったから変えない」という、根強いアナログ文化も残っています。
デジタル化や自動化は進みつつありますが、いまだに装置や工程の省エネ・廃熱対策は「コストが出せない」「投資対効果が見えにくい」と後回しにされがちです。
しかし、いまやSDGsやカーボンニュートラルを踏まえない事業運営は、大手サプライチェーンからの脱落にもつながりかねません。

廃熱回収システムとは何か

廃熱は「捨てる資源」から「使う資源」へ

廃熱回収システムとは、工場内の熱源装置(ボイラー、炉、コンプレッサー、乾燥機など)から発生した未利用熱(排気、排水など)を回収し、再利用する設備や仕組みを指します。
たとえば、以下のようなシーンで活用されています。

  • ボイラーの排ガスから熱交換器を経由して温水を作り、工場の暖房や給湯に利用
  • 乾燥工程の排熱を前工程や空調に活用
  • 圧縮空気を作るコンプレッサーや冷却装置の廃熱を隣接工程の加熱源に利用
  • 発電機の廃熱をコ・ジェネ(熱電併給)で暖房やプロセスに供給

なぜ今、廃熱回収がSDGs達成に貢献するのか

廃熱回収は、「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「13.気候変動に具体的な対策を」など、SDGsの複数目標と直結しています。
主なポイントは以下の通りです。

  • エネルギーロスの削減により化石燃料の消費量を抑えCO₂排出削減
  • 再生可能エネルギー比率の向上
  • 工場全体の省エネルギーとコスト削減
  • 地域社会や他産業とのエネルギーシェアリングの可能性

廃熱回収システムの具体的な導入事例

1. 自動車部品メーカー:乾燥炉排熱の再利用

自動車部品の塗装・乾燥工程では、ガス炉や電気炉から大量の高温廃熱が発生します。
ある大手自動車サプライヤーでは、乾燥炉の排熱ダクトに熱交換器を設置。
回収した熱を前洗浄プロセスの温水加熱に再利用することで、プロパンガス使用量を年20%削減しました。
このシステム導入にあたり、「現場の運転管理が複雑になる」「ライン停止時の安全設計が必要」などの声もありましたが、現場主導で運用ルールを整備することで、安定稼働と省エネを両立しています。

2. 製紙工場:排水の熱回収による暖房利用

製紙工場では、抄紙工程や蒸気乾燥ラインから大量の排水が発生します。
この排水は比較的高温なため、熱交換器で熱を回収し、場内事務所や厚生棟の暖房エネルギー源としています。
ついでに、熱回収後の冷却水を植栽や外構の散水にも活用し、「環境負荷低減」を対外的にもアピールしています。
実際に、地元自治体との連携で「地域低炭素モデル工場」として認定され、企業イメージの向上にも繋がりました。

3. 食品工場:吸収式冷凍機とコージェネによるエネルギー最適化

食品工場では、同時に冷却と加熱が必要なシーンが多く生じます。
ある冷凍食品メーカーでは、ガスコージェネ設備を導入し、発電時の廃熱を吸収式冷凍機の熱源に供給して冷水を作り、冷却工程の大部分をカバーしています。
電力・熱の自家消費率が高まり、外部調達エネルギーコストを約30%削減という成果を上げています。

廃熱回収システム導入時の課題

現場に根付く障壁と意識の壁

現場の管理職として一番感じるのは、「廃熱回収は理屈としては大切だが、実装にはコストと手間がかかる」「既存設備に後付けで本当にうまくいくのか」という現場の懐疑的な声です。
実際、廃熱は量や熱度の変動が大きく、安定した再利用にはシステム化・自動化技術が必要となることが多いです。
また、設備投資回収期間(ペイバックタイム)が長いと、経営層の理解を得るのが難しい場合もあります。

既成概念からの脱却がチャンスを生む

昭和型の「ムダはあたりまえ」「発熱は必要経費」といった考えから脱却し、「工程間で熱の融通を図る」「工場外にも熱を販売できる」といった柔軟な発想(ラテラルシンキング)が求められます。
たとえば、一つの工場の枠を超え、隣接する企業や公共施設、地域全体で熱のインフラシェアを行う「地域熱供給(DHC)」も今後の大きな可能性です。

バイヤー/サプライヤーの立場から見る廃熱回収

バイヤー視点:評価軸の転換

これからのバイヤー人材には、単なる仕入れ価格や納期だけでなく、「このサプライヤーがどれだけ省エネルギー・CO₂削減に取り組んでいるか」「SDGsへの本気度」を判断する総合力が求められます。
廃熱回収システムの導入事例や、温室効果ガス排出量の可視化データを提案資料に盛り込むと、サプライヤーとしての信頼度が大きく向上します。

サプライヤー視点:廃熱回収が供給力アピールに

自社工場の廃熱回収によるエネルギー最適化実績は、「安定供給力=災害時やエネルギー高騰時への適応力」の裏づけにもなります。
くわえて、「環境に配慮した生産工程」をアピールできれば、取引先のSDGs・ESG調達方針に合致し、受注競争力を強化できます。

廃熱回収システムが拓く未来~ラテラルシンキングで生まれる新地平

製造業の「枠」を超えるエネルギーシナジー

今後は廃熱回収を工場内の工程間だけにとどめず、「越境するエネルギー活用」へと発展させるラテラルシンキングが重要です。
たとえば港湾・空港・都市エリアなど、多業種が集積する地域では、廃熱を活用した電力供給や暖房ネットワークの構築が進んでいます。
また、農業分野では工場の“あまった熱”で温室栽培、養殖場の水温調整を行う異業種連携も生まれています。
こうしたラテラルな発想が、日本の成熟した昭和型産業構造を大きく変革する可能性を秘めています。

デジタル技術とAIによる「熱マネジメント」の最適化

最新のIoTセンサーやAIによる工程分析を活用することで、工場全体の熱流(ヒートフロー)を可視化し、「余剰熱の最適配分」や、「熱の需給予測」に基づくスマート制御が可能になります。
これにより、今まで見えなかったムダを排除し、脱炭素と経済合理性を両立した生産体制が実現できます。

まとめ

工場の廃熱回収システムは、単なるコスト削減・省エネの枠を超え、SDGsの達成に向けた製造業の大きな武器となります。
本気で取り組むことで、「エネルギーロスの削減」「CO₂排出減」「安全で持続可能なものづくり」「取引先から選ばれる供給力」「地域との共生」など、多くの価値を生み出します。
ぜひ、昭和型の既成概念にとらわれず、現場の“熱”に目を向け、新たな視点=ラテラルシンキングで、日本のものづくり現場の未来を切り拓いていきましょう。

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