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輸入関税還付制度を活用した製造業のコスト削減方法

目次
はじめに:製造業のコスト削減は永遠のテーマ
製造業の現場において、利益の源泉は「コストの合理化」にあります。
特にグローバル競争が激化している現在、ほんのわずかなコスト差が受注・失注の明暗を分ける時代です。
生産設備の導入や原材料の選定方法、サプライヤーの選定、在庫管理の最適化など、多くの施策が検討される中で、意外と活用されていないのが「輸入関税還付制度(関税の戻し制度)」です。
この記事では、20年以上、現場と経営に関わってきた筆者の経験を織り交ぜながら、なぜ関税還付制度が製造業のコスト削減につながるのか、どう活用すればよいのかについて、分かりやすく解説します。
輸入関税還付制度とは何か?
仕組みの概要
輸入関税還付制度(ドローバック制度とも呼ばれます)は、輸入原材料や部品を用いて生産した製品を、再度輸出する場合に、その原材料等の輸入時に支払った関税を一定条件下で還付(返金)してもらえる制度です。
たとえば、海外から部品や素材を輸入して国内で加工・組み立てをし、再び海外へ完成品として輸出した場合、国内に最終的にとどまらない分の輸入関税については課税する意味が薄くなるため、条件を満たせば返してもらえる仕組みが成立します。
具体的な事例
例えば、自動車部品メーカーの場合、中国から鋼板や樹脂原材料を輸入し、日本の工場で自動車部品を製造した後、完成品の一部をアメリカやタイへ輸出したとします。
この際、輸入時に支払った関税は本来コストとなりますが、還付制度を活用することで、一定割合を返金してもらうことができ、実質的な原材料コストを下げることが可能です。
昭和的な「勘と経験」から抜け出して法制度を駆使する
なぜ活用が進まないのか
こうした制度は実は長い歴史がありますが、いまだに製造業の現場では「知らなかった」「面倒くさそう」といった理由で、昭和の時代から続くアナログ作業の延長感覚によって取り組みが遅れがちな風潮があります。
また、工場長や購買部門の多くが、「現場の改善」や「品質向上」には熱心なのですが、貿易実務や法制度についての感度は高くないことが多いのが実情です。
活用しないリスク
関税還付制度をうまく活用している海外メーカーが、その分だけ実質コストを大幅に下げて競争力を高めている現実があります。
同じ条件で戦っているつもりが「見えざるコスト差」に負けてしまう。
これが、今の日本のものづくり立国の足かせになりかねません。
具体的な導入プロセスと注意点
制度の全体フロー
1. 輸入する原材料や部品ごとの明細、ロット管理
2. それらをどの製品として、どこに販売(輸出)しているかのトレース
3. 関税還付の申請に必要な書類やデータ化作業
4. 税関への申請と説明責任(監査対応)
「製造現場の材料管理」、「品質管理」、「販売・輸出管理」を一気通貫でシステム化することが、実は還付制度の活用では必須の要件なのです。
たとえば、生産管理システム(ERP・MES等)や在庫管理システムと、税関対応の間でデータが分断していたり、紙・Excel管理のままだと、還付用の証明データの作成が極端に難しくなります。
アナログな管理体制を放置していると、「やりたいけど無理」ということになりがちです。
導入時のチェックリスト
– 輸入原材料の調達ルートと現場の管理手段は網羅・明確化されているか?
– 部門横断で情報共有(調達・生産・販売・経理・法務)が行われているか?
– データの一元管理体制が整っているか?
– 税関や通関業者とのコミュニケーションルートは確保できているか?
– 社内教育や外部セミナー受講を通じて最新情報をキャッチアップしているか?
ひとつひとつ地道に進めることが、最大限のコスト還元を引き出す秘訣です。
サプライヤー‐バイヤー目線で考える:期待値の違いを埋める
バイヤーの考え:真のコスト意識とは
バイヤー側はしばしば「見積価格」や「原価」だけで調達判断を下してしまいがちです。
しかし、関税還付制度の活用によって、実際には原価よりもさらにコストを下げられる余地があります。
つまり、「法制度をフル活用すること」も競争入札で勝ち抜く重要なバイヤースキルです。
また、大手完成品メーカーでは、原材料コストのわずかな低減が膨大な利益ロスや利益創出に直結するため、バイヤーには制度活用に対するアンテナの高さが求められます。
サプライヤーの動き方:新提案営業で差をつける
一方、サプライヤー側は「関税還付の可能性があります」と逆提案することで、バイヤーとの商談で信頼を得ることができます。
自社の原材料サプライや部品納入ルートの中で、還付制度の組み込みをシミュレーションすると、通常提案よりも一歩踏み込んだ「攻めの営業」が実現します。
これは、価格競争だけでなく、マージンを守りつつベストバリューを提供する秘策にもなります。
デジタル化と連携でアナログ業界を脱却するポイント
システム化の推進役になるために
昭和的な「紙伝票」「手書き帳簿」「個人PCでのExcel管理」から脱却し、原材料ロットごとのトレーサビリティを確保したうえで、デジタルツールによる一元集約管理が求められます。
特に生産管理・在庫管理システムと会計システム、貿易管理システムを連携させ、現場・事務・経営がデータに基づいて対話できる体制を整えることが「関税還付制度を武器に変える」条件です。
現場側と管理側のマインドのギャップを埋め、デジタル化を「負担」ではなく「武器」へと転換しましょう。
カイゼン文化との親和性
日本の製造業では、改善提案(カイゼン)が根付いています。
コスト低減、効率化、安全性向上にこだわったカイゼン活動と、こうした法制度の積極活用は本質的には相性が良いのです。
例えば、日々改善の中で「なぜそのコストが発生するのか」「仕入れの選択肢は本当に最適か」を繰り返し問い直すと、最終的には還付制度の活用ポイントに自然と至ります。
アナログ作業を整理し、「制度利用の前提となるデータの可視化」を推し進めることもカイゼンの一部です。
まとめ:関税還付制度活用が製造業の新常識になる
製造業の現場は、まだまだ改善・合理化の伸びしろに満ちています。
「原材料の仕入れを最安値にする」だけがコスト削減ではありません。
関税還付制度のような法制度を活用することは、いまやコスト競争に勝ち残るための最前線です。
知らなかった…では済まされない差が、国内外で確実に広がっています。
アナログの常識を少しずつデジタルに置き換え、現場の枠を超えて法制度まで駆使することで、真に「ローカル発グローバル競争力」を生み出しましょう。
サプライヤーもバイヤーも、調達・購買も品質管理部門も――すべての現場人が、一歩踏み出して制度活用に取り組むことが、日本のモノづくりの未来につながります。
今こそ、現場力と制度活用のハイブリッドで、新しい景色を切り拓きましょう。
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