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購買部門が知るべき日本中小企業の余剰在庫活用とコスト削減

購買部門が知るべき日本中小企業の余剰在庫活用とコスト削減
はじめに―現場の「ムダ」とどう向き合うか
日本の製造業、とりわけ中小企業の現場には多くの「ムダ」が潜んでいます。
その代表格が「余剰在庫」です。
私が長年、製造現場から購買や生産、工場経営まで携わる中で常々感じるのは、「なぜ、こんなに在庫が溜まるのか」という疑問でした。
しかし昭和時代から続く商習慣や「足りないより余る方が安心」という心理、得意先の急な要望に備える責任感などが複雑に絡み合い、慢性的な余剰在庫が発生しています。
本記事では、余剰在庫の現状分析と、購買部門が主導するコスト削減への実践的アプローチ、さらにサプライヤー・バイヤー双方の立場から見える新しい地平線について、現場目線でお伝えします。
余剰在庫のリアル—なぜ中小企業では在庫が溜まりやすいのか
根強いアナログ管理と「安心」文化
中小企業の多くは、未だ棚卸や在庫管理をエクセルや紙で行っています。
このため在庫の見える化が進まず、「多めに発注しておく」「予備部品をストック」という考え方が根強く残っています。
この安心志向は短期的には納期遅延のリスクを減らしますが、長期的には資金繰りや保管コストを圧迫する大きな要因となります。
特有のサプライチェーン構造と発注制度
日本製造業の伝統的な系列取引や下請け制度は、サプライヤー側に「納期最優先」や「下請けが断れない」構造を強いてきました。
その結果、「念のため在庫」→「余裾在庫の膨張」→「いつ使うか分からず棚の肥やし」という悪循環が顕在化しています。
余剰在庫の隠れたコスト—本当に怖いのは「見えない損失」
現金流出と機会損失
余剰在庫は単純に「保管コスト」が生じるだけでなく、多くの場合キャッシュフローに直接的な悪影響を与えます。
平均的な部品在庫回転率が下がれば、その分だけ現金化できるタイミングが遅れ、運転資金を圧迫することになるのです。
また、倉庫スペースや管理工数もムダを生み、多忙な現場にさらに負担がのしかかります。
陳腐化・廃棄ロス
需要予測の変化やモデルチェンジなどにより、「二度と使われない部品」「賞味期限切れの原材料」などがそのままデッドストック化します。
廃棄費用や再利用のための追加コストも見逃せません。
購買部門が主導するべき、余剰在庫の「見える化」アプローチ
在庫の「実態把握」から始める
まず現場と協力し、全ての棚卸データ・発注履歴を洗い出します。
「過去12カ月間未使用のアイテム」「発注ロットが大きすぎる品目」に赤信号を灯し、潜在的な余剰在庫リストを作成します。
現場ヒアリングは必須
現場担当者や営業、設計といった全ての関係部署から「なぜ余剰が生まれたのか」「今後の消化見通しはあるのか」を丁寧に聞き取りましょう。
多くの場合、「あの得意先が突然言ってきて…」という裏事情や、「あの品番は次期モデルまで使わない」など貴重な現場情報が隠れています。
購買部門はデータだけでなく「生きた声」に耳を傾けることが必要です。
デジタル・アナログ併用で管理精度を高める
最近は中小企業でも、安価なクラウド在庫管理システムが普及しています。
ですが昭和から続く現場では「紙伝票が現実」も珍しくありません。
まずはバーコードやQRコードなど簡易なツールを併用し、「情報の鮮度」を確保しましょう。
小さな一歩ですが、「見える化」が全ての改革の起点となります。
余剰在庫を「活用」「現金化」する現場の知恵
社内・グループ内での流用
複数の製造ラインや拠点を持つ場合、他ラインで消化可能な在庫がないか横断的に調査します。
意外と「こちらでは不要」でも「別ラインでは不足」というケースがあるものです。
グループ内BtoB取引を活用した事例も増えています。
サプライヤーへの返品・再販交渉
サプライヤーとの強いパートナーシップがあれば、未開封商品や特殊品について返品や引取再販を相談しましょう。
長年の取引関係がある場合、「次回発注との相殺」など柔軟に応じてもらえるケースもあります。
在庫マッチングサービスの活用
近年、余剰在庫専門のマッチングサイトやオークションサイト(たとえばモノタロウ、ラクマ在庫市場など)が台頭しています。
「他社の困りごと」を「自社の在庫消化ニーズ」が埋める新たなBtoBエコシステムです。
売却値は低くなりがちですが、廃棄よりは「まし」と割り切る柔軟性も大切です。
コスト削減の本当のカギは「計画」と「コミュニケーション」
サプライヤーとの連携強化
購買担当者はサプライヤーとの「情報共有の密度」を上げましょう。
例えば需要が不安定な品目については、発注頻度の見直し(小ロット・多頻度化)、VMI(ベンダー在庫管理)といった共同管理モデルの導入が有効です。
需要変動への機動的な調整
設計変更、営業活動、需要予測の変動が激しい時代、購買部門単独では捌ききれない課題も多くなっています。
そこで営業・設計・生産管理の全体で「この部品はどこまで先回りして用意すべきか」を繰り返し議論する仕組みづくりが重要です。
現場リーダーの「納得感」を大事にする
購買だけで在庫削減を押し付けても、現場は納得せず新たな「隠し在庫」が生まれるだけです。
現場リーダーと協働し、「どこまで余剰を許容するか」「なぜ削減が会社全体にとって有益なのか」という共通認識を持つことが何よりも大切です。
サプライヤー視点—バイヤーの心理を知る
サプライヤーの方は、バイヤーが単に「安く買いたい」「値引きしたい」だけではなく、会社全体の在庫・キャッシュフローリスク、品質・納期対応など複数のKPIで判断していることを理解しておきましょう。
余剰在庫を押し付ける体質は信頼を毀損します。
逆に、余剰在庫削減に向けた新提案や協力姿勢を示すことで、長期的なパートナーシップの深化につながります。
デジタル革命時代、アナログ中小企業に求められる変革
デジタル技術が進化し続ける一方で、「うちはパソコン、数字が苦手」「古い手帳で十分」という現場は依然多いです。
しかし「小さな一歩」としてスマホアプリで写真を送信する、グループチャットで在庫情報を共有するといった極めて簡便な方法でも、在庫削減の第一歩が踏み出せます。
大事なのは、「アナログ現場の知見」と「デジタルの効率性」を組み合わせていく現実的なアプローチです。
まとめ—中小企業購買部門の「知恵」と「つながり」が未来を変える
中小企業における余剰在庫問題は、長年の商慣習や心理的要素、組織体制の壁が複雑に絡み合っています。
しかし購買部門が現場目線で実態把握・見える化を推進し、サプライヤーとも腹を割って対話することで、まだまだコスト削減や現金化余地は大きく残されています。
これからの時代は「ムダを共有し、知恵とデータをつなぐ」姿勢が、製造業の発展に不可欠です。
余剰在庫活用のノウハウを磨き、自社・業界全体の底上げに貢献しましょう。
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