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輸出入コストを抑えるための日本現地倉庫利用の実務知識

目次
はじめに:製造業が直面する輸出入コストの現実
グローバル化が進む現代の製造業において、原材料、部品、完成品の輸出入は避けて通れません。
少しでもコストを抑えることは企業の利益確保や競争力維持に直結します。
しかし、多くの製造業現場では「輸出入コスト」を単なる運賃や関税だけの問題と捉えてしまいがちです。
実際には倉庫保管費用やリードタイム短縮、在庫管理の工夫、物流業者との折衝、さらには昭和的アナログ商習慣が色濃く残る取引現場ならではの「暗黙のルール」など、見落とされがちなコスト要因が多く存在します。
これらを正しく理解し現地倉庫の活用方法を戦略的に見直すことが、持続的なコストダウンとスムーズなサプライチェーン運営の鍵になります。
今回は、私が20年以上の製造業経験と調達・物流現場で培ったノウハウを元に、「日本現地倉庫」の賢い使い方と実務ポイントを深堀りします。
現場で「何に気を付けてコスト管理をすべきか」はもちろん、昭和から続くアナログな業界慣習がなぜいまだ残っているのか、なぜ2020年代でも倉庫利用がカギを握るのかまで、バイヤー目線・サプライヤー目線で余すことなくお届けします。
そもそも「現地倉庫」とは?なぜ必要か
「現地倉庫」の定義と種類
輸出入取引で「現地倉庫」と言えば、大きく分けて以下のような種類があります。
- 輸入側(日本)での商品引取りや検品・加工を行うための保管場所
- 物流業者(フォワーダー)が提供する一時保管型の保税倉庫
- サプライヤー側(海外現地)に置くコンソリデーション倉庫
この記事では「日本側」の現地倉庫、つまり日本国内の物流拠点や外部委託倉庫(3PLやメーカー専用倉庫)を中心に解説します。
なぜ倉庫費用が“見直しポイント”なのか
倉庫は単なる「モノを置く場所」ではありません。
輸入コスト削減、品質管理、JIT(ジャストインタイム)生産の実現など、さまざまな目的に使われます。
一方で、在庫過剰や無駄な保管日数が発生すればコストはどんどん膨れ上がります。
製造業の多くは、「昔からの商慣習」でダラダラと長期保管を続けてしまったり、自社スペース不足のまま外部倉庫へ高額な委託費用を支払ったりしています。
この見直しなしに、いくら国際運賃や原材料価格を抑えても“ボトルネック”となる部分が残り、トータルコストダウンにはなかなかつながりません。
日本倉庫の賢い活用によるコスト圧縮手法
ポイント1:輸送・通関~倉庫入庫までを徹底チェック
まずは輸入プロセス全体を俯瞰し、下記の点で“無駄なコスト”がないか洗い出しましょう。
- 荷物の到着タイミングに余裕を持たせすぎて在庫膨張になっていないか
- 通関→デリバリー→倉庫入庫のリードタイムが過剰に長くなっていないか
- 荷物のバラ積み後の検品・仕分けで“手待ち”(無駄な人件費発生)が無いか
現場が「保管スペース足りない」「通関が遅れるのが怖い」などの理由で過剰在庫を許容していないか要注視です。
サプライヤーやフォワーダーとの打ち合わせで、「現地倉庫でのバッファ在庫は最小限」と明確に意思統一しておくことも現実的なコスト圧縮策の第一歩です。
ポイント2:先行納入型と分納型・どちらがベターか?
多くの調達担当者は「1回で大量に輸入し、倉庫にストックしておけば安心」と考えがちですが、必ずしも最善策ではありません。
- 先行納入型(大ロット一括輸入+倉庫保管)…運賃のスケールメリットは出やすいが、在庫・倉庫コスト増。
- 分納型(小ロット分けて複数回入庫)…輸送単価は高くても在庫と倉庫費用を圧縮しやすい。
季節波動や販売計画、調達側のキャッシュフロー事情も加味して、二つのバランスをきめ細かく管理することが成功のカギです。
「分納は手間がかかるから」と避けず、外部倉庫の効率的な利用との組み合わせも検討しましょう。
ポイント3:QCD(品質・コスト・納期)と現場の“安全在庫”神話からの脱却
日本の製造業には「在庫があれば安心」という昭和的安全志向が根強く残っています。
納期遵守やクレーム対策のために、「つい余分に倉庫にストックしてしまう」ケースが山のようにあります。
しかしDX時代です。
販売実績や需給計画、消費サイクルのデータを元に、適正在庫やバッファの最適化を進めることが重要です。
もし過剰在庫が必要なら、「なぜそれだけのバッファが必要なのか」ロジックを現場・経営層と共有し、無駄なコスト発生を未然に防ぎましょう。
ポイント4:物流業者・倉庫会社との“ギブ&テイク”発想
物流サービスは「委託する側VSされる側」の対立構造では機能しません。
日本型の商習慣では交渉の場が形式的にもなりやすいですが、「現場の作業負荷がどう生じているか」「無駄なダブルハンドリングや棚移動が起きていないか」を一緒に分析し、コスト分担の最適化案を相談できる関係がベストです。
仕様変更やリードタイム短縮、夜間・休日対応、突発的な輸送依頼など「プラスアルファの手当」をついつい口頭指示や慣例で済ませがちな業界ですが、「その都度単価が上がってはいないか」「必要経費がブラックボックス化していないか」書面化・見える化を心掛けましょう。
若手バイヤー向け:倉庫利用における“気付き”と現場コミュニケーションのコツ
初めて倉庫・物流現場に立ち合う若手バイヤーがよく陥る“失敗”には以下のようなものがあります。
- 作業員や物流コーディネーターが暗黙知で動いているため、問題箇所が見えない
- 帳票や伝票管理がデジタル化されていないことに戸惑う
- 「現場には現場の事情がある」と言われて改善提案に躊躇してしまう
こうした時は、現場作業の流れに実際に立ち会い、「なぜその段取りなのか?」「人やスペースを効率化する余地はないか?」自分の目で確かめることが一番です。
さらに、下記のコミュニケーションをオススメします。
- 「なぜここで止まっているのか」を現場に率直に質問
- 不具合や遅延が発生した際は、倉庫会社・ドライバー・発注側担当者の“三者合同”レビューを実施
- 倉庫利用料や委託費の“小さな値上げ”も必ずレビューし、背景を明文化
これにより、自己流の要求だけが先行せず、物流現場との共通言語でWin-Winの改善が実現します。
サプライヤー側から見た「日本現地倉庫」の意義と対策
サプライヤーとして日本向け輸出を手がけている企業にとっては、日本現地倉庫は“バイヤーの顔が見えないコスト負担”になりがちです。
一方で、現地倉庫を上手に活用すれば以下のメリットもあります。
- ジャストインタイム納入によるバイヤーからの信頼確保
- 急なリードタイム短縮やバッファ在庫要求への柔軟対応
- 緊急トラブル時の在庫振分け・納期調整力の向上
現地倉庫の運用コストやリスク分担(たとえばFOB、CIFなどインコタームズの再整理)、帳票・検品業務のアウトソーシング戦略をあらかじめ日本側バイヤーと合意しておくことが重要です。
また、日本市場向けの特殊な検品・表示作業が発生する場合、現地倉庫(3PLや専門委託業者)を活用することで、一気に日本品質基準にも適合しやすくなります。
まとめ:変化を恐れず、現場から輸出入コストの新しい地平線へ
製造業が直面する「輸出入コスト」の本当のポイントは、年々複雑化する国際物流・バイヤーとサプライヤー双方の意思決定の背後にあります。
そして、その重要なカギを握っているのが“日本現地倉庫”の上手な活用です。
“不透明な慣習”や“目先のコスト”にとらわれず、現場の実情を正しく理解し、コストの見える化、現場に寄り添った物流設計、デジタルピッキングやWMS(倉庫管理システム)の導入など、新しい工夫や対話を積み重ねてください。
古い昭和流も活かしつつ、令和時代の最先端技術も柔軟に吸収し、持続的な利益と顧客満足、サステナビリティを両立できる“次世代の物流・調達プロ”を目指しましょう。
バイヤー志望の方も、サプライヤーの皆さんも、まずは「倉庫の現場」から、一歩踏み込んだコスト圧縮の新たな視点を探求することをオススメします。
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