投稿日:2025年9月16日

購買部門が検討すべき日本中小製造業の代替材活用方法

はじめに 〜代替材活用が日本の中小製造業を救う〜

日本の中小製造業は、原材料価格の高騰やサプライチェーンリスクの増加、厳しい納期短縮プレッシャーなど、これまでにない過酷な環境にあります。

昭和時代からの「この材料しか使わない」「このやり方がベスト」という固定観念に頼るだけでは、市場競争で生き残ることは難しい時代となりました。

そこで今、改めて注目されているのが「代替材」の活用です。

購買部門にとって、コストダウンだけでなく、安定調達や品質確保、ひいてはグローバル競争に勝ち残るためにも、代替材検討は非常に重要なテーマです。

本記事では、現場目線で中小製造業が押さえるべき代替材活用方法や、購買が現場と一体となって進めるための具体的なポイント、そして業界の今後の動向を詳しく解説します。

なぜ今、代替材活用が必要なのか?

部材調達を取り巻く三重苦

2020年代に入り、中小製造業の現場では以下のような「三重苦」に直面しています。

– 鉄や銅、樹脂、半導体などの原材料価格が高騰
– 特定サプライヤーへの依存リスク増(例:地政学的リスク、自然災害)
– 働き方改革での60時間制限や人手不足による納期短縮要求

従来、購買部門は「安く、早く、安定して買う」ことに注力してきました。

しかし、過去の商流や仕様に固執することは、調達停止や顧客ロスを招くおそれがあります。

昭和型アナログ調達の限界

例えば、「この部品は古河銅がなければだめだ」「この板金は厚さ3.2mmでなければ通らない」など、細かい仕様・材料に過度にこだわる場面はいまだ日常的です。

昨今の、市場環境や材料入手難に目を向ければ、「何を使うか」よりも「何を使えるか」「何が一番流通しているか」を再考するチャンスと言えます。

代替材の代表的な種類と選定の考え方

鉄・非鉄金属材料の代替

鋼材(SS400やS45Cなど)であれば、外観や強度要件が許せば「規格外在庫」「海外調達品」「中古材」「溶接構造材の流用」など多くの余地があります。

またアルミのA5052指定を、A5083やA6061でも性能的に大差ない用途なら替えることで、納期短縮や大幅コストダウンも実現可能です。

ステンレス(SUS304)の代わりにSUS430や、表面処理の工夫(耐食塗装)でコストと安定性を担保する選択も増えています。

樹脂・ゴム材料の代替

樹脂パーツでは、ABSをポリカーボネートやPOMへ、あるいは同一社内でリサイクル原料使用へ転換する事例もよく見られます。

ゴム材料では、NR(天然ゴム)高騰時にCR(クロロプレン)、EPDMなどへの代替も進んでいます。

電子部品・機構部品の代替

半導体や電子部品の調達困難を受けて、汎用ICやモジュールへの設計変更も拡大しています。

また、ベアリングやバネなどの機械部品では型番を限定せず、寸法互換品や海外製サプライヤーの活用も一般化しています。

購買現場から見る実践的な代替材活用プロセス

1.社内仕様把握と現場ニーズのヒアリング

まず重要なのは、本当に「この材料・規格でしかいけないのか」を現場・設計部門にヒアリングすることです。

現場発想では、加工性・溶接性・加工機への適合など“肌感覚”の要件を無視しないことが大切です。

単なる「安い材料への置き換え」では、工程負担やリードタイム延長、最悪は不良率悪化など逆効果となります。

2.候補となる材料・部材の絞り込み

現状の主材料と近しい物性・性能を持つ素材を調査し、サプライヤーに対し技術照会(物性データ・試作品)を依頼します。

ここでサプライヤー自身の持つノウハウ――例えば流通在庫が豊富な規格サイズや、リサイクル材の活用方法等も積極的に収集することが鍵です。

3.社内検証と試作評価のサイクル

候補となる代替材で試作し、現場で加工・溶接・組立を一貫して評価します。

不良発生状況、工程の手間、標準化の可否、在庫性などすべてを精査します。

特に中小企業の場合、決裁権限のある現場リーダーや工場長が早めに関わることで、実装スピードが格段に上がります。

4.全社的な展開と「使い続ける仕組み」づくり

代替材の採用が決まった際は、設計部門・現場部門だけでなく、製造指示書やBOM(部品表)・発注書の表現も改訂し、再び元材に戻らない仕組みを作ります。

新しい材料・部品で問題がなかった事例が積み上がれば、他製品への水平展開も加速度的に進みます。

バイヤー・調達担当者が押さえるべき“成功のための視点”

現場と“バーティカル”に協力する姿勢

「現場の本音」をくみ取った上で、自分たち購買のミッションが「社内の最適解を掴むこと」にあると再認識しましょう。

部門間に壁があるまま「コストダウンだけ」を押し通そうとすれば失敗することも珍しくありません。

サプライヤーへの“ラテラル”な情報収集力

調達対象を「いつもの数社」に限るのではなく、異業種交流会や地方産業展示会、技術商社を積極的に接点とすることも有効です。

たとえば建築用資材や、自動車・電子部品向けグレードで思わぬ好条件の材料が見つかることもあります。

「できる/できない」ではなく“どうすればできるか”を考える発想力

代替材活用は、単純なものづくりの知見だけでなく司令塔としての折衝力や、既存サプライヤーとの関係構築も問われます。

「コスト低減」だけでなく、「安定供給」「最終顧客への説明責任」も背負う姿勢が信頼されるバイヤーの資質です。

サプライヤーから見たバイヤーの動き

サプライヤー企業としては、「納期さえ間に合えばOK」「同等品なら気にしない」というバイヤー心理を読み違えると機会損失に繋がります。

バイヤーが上記のような挑戦をしていることを理解し、材料選択肢や工程可否について“代替提案”できる営業担当が長年付き合えるパートナーとなります。

情報連携を密にしつつ、サプライヤー側も社内エンジニアと連携し現説(現地説明会)や進捗確認が行える体制が求められます。

日本の中小製造業と代替材活用の今後の展望

代替材活用を円滑に進めることで、製品の差別化・高収益化や、SDGs時代に必須の持続可能性にも寄与します。

今後、政府や業界団体の規格開放、認定リユース材流通の推進も進むでしょう。

IT活用が浸透すれば、より広範囲の材料・部材の流動性が高まり、地域や規模の壁も少なくなるはずです。

「手持ちの材料資産」「顧客からの逆提案」など、上下・左右・斜めの視点(ラテラルシンキング)で材料活用を捉え直すことが、昭和型モノづくりから脱却する成長戦略ともなります。

まとめ 〜“現場発”の代替材活用で製造業を強くする〜

– 代替材検討は、今やコストダウンだけでなく、調達リスク軽減・納期確保へも有効です。
– 各工程の“肌感覚”を無視せず、現場とバイヤーが垣根を超えて進めるのが基本です。
– サプライヤーにも「一緒に考えるパートナー」として積極提案を求めましょう。
– 業界を取り巻く流れや最新技術、デジタル活用など“ラテラル”な視点がキーファクターです。

時代遅れの固定観念を打破し、自社らしい「勝ちパターン」を発見するためにも、購買担当・バイヤー・工場長・現場リーダーの全員が、新たな材料利用とそのカイゼンプロセスに挑み続けていきましょう。

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