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購買部門が実践する日本中小企業との共同物流活用による輸送効率化

目次
はじめに:物流現場が抱える根深い課題と変革機運
日本の製造業、とりわけ中小企業が直面している物流課題は年々深刻さを増しています。
トラックドライバー不足や物流コストの高騰、CO2排出削減など、改善しなければならないテーマが山積みです。
一方で、業界全体で見れば共同物流への理解や取組みは遅れがちであり、多くの現場では昭和型の個別納品や自社主導の輸送が色濃く残っています。
こうした古い慣習をアップデートし、調達購買部門が率先してサプライヤーや同業他社と協力し、共同物流に取り組むことは非常に重要であり、実際に効果的な成果を上げ始めています。
本記事では、現場を知るプロの視点から、日本の中小企業との共同物流の要点と、購買部門が主導して輸送効率化を実現するための実践的メソッドを解説します。
共同物流とは何か?──「荷物をまとめる」以上の意義
共同物流とは、複数の企業(バイヤー、サプライヤー、あるいは同業社間)が、同じルートあるいは近隣納品先への輸送を一括して行う取り組みです。
経済産業省や業界団体からも推進が呼びかけられる一方で、実際の現場では「本当にコストメリットがあるのか」「共同化した際、納期や品質が維持できるのか」といった不安も根強いです。
しかし、共同物流のメリットは荷物を「まとめる」こと以上にあります。
サプライチェーン全体での最適化
納品リードタイムの短縮
配送車両の空きスペース解消
CO2削減などの企業価値向上
購買部門の調整業務効率化
このように共同物流は、単なる「輸送集約」ではなく、製造業が直面する持続可能性や競争力強化にも直結する取り組みと言えます。
昭和的アナログからの脱却――なぜ共同物流が進まないのか
共同物流が普及しにくい背景には、日本のものづくり現場特有の事情があります。
現場ごとの「暗黙の了解・習慣」
長年の取引慣行や「お得意先第一」の納品文化が根強く残り、「うちはうちで運びます」といった属人的・閉鎖的な意識が消えません。
特に中小企業では、納品先での顔見知りの重要性や、自社便による荷物の柔軟な取り扱いが重視されがちです。
IT・情報交換の壁
共同物流には物流情報(出荷日、納品先、パレット数、製品詳細など)を各社で正確に「見える化」することが必要不可欠です。
しかし、現場実務ではFAXや電話、紙の帳票が今も主流で、システム化への投資やデジタルリテラシーの不足が障害となっています。
サプライヤー・バイヤー間の利害調整
「どちらが幹事役となるのか」「コスト分担はどうするか」「万が一、共同輸送で遅延・混載ミスが発生したら誰の責任か」など、落としどころを見極める難しさもあります。
こうした理由から、魅力的な施策でありながら現場への浸透が鈍い、というのが現在の日本の姿です。
購買部門がリードする共同物流活用のキーアクション
工場の購買部門が共同物流を推進するとき、成功への分岐点は「現場目線での一歩」の踏み出し方です。
以下に、現場経験に基づく実践的なアクションを整理します。
1. サプライヤーマッピングと近隣企業のリストアップ
自社の購買先・仕入れ先を地図上にプロットし、どのサプライヤーが地理的に近いのか、他社の納入先とルートが重なりやすいのかを「見える化」します。
同業他社との情報交換会、地元の異業種交流会などを活用して、協業可能な企業のリストをアップデートしましょう。
2. 話し合いの着地点を「現場の利便」に置く
共同物流の本質は「メリットの共有」です。
コストも大切ですが、ドライバー負担軽減、荷待ち時間短縮、現場スタッフの労力軽減といった“実務目線”のメリットを優先順位に据えることが協力体制づくりの近道です。
3. カイゼン型の試行導入でハードルを下げる
最初から全納品を共同化するのではなく、特定のサプライヤーや特定曜日、物流ボリュームが大きい定番品・重量物などをピンポイントで対象とした「小さな成功」からスタートするのが現実的です。
トライアル&エラーを通じて問題点を“改善”していくカイゼン型の導入が、現場の理解を得やすいです。
4. 利害調整シート作成と役割分担の明確化
共同物流では、責任範囲の線引きやコスト配分など、「曖昧さ」が後のトラブルを招きます。
事前に利害調整シート(エクセル・Googleスプレッドシートなど)で、納期、分担コスト、責任範囲、イレギュラー時の対応方法などを一覧化し、関係各社で合意を図りましょう。
5. ITツールの段階的活用
まずは無料チャットやLINEグループ、クラウドでの簡易情報共有ツールから導入し、現場が「情報の見える化」に慣れるステップを踏みます。
少しずつ受発注や出荷のデータ連携、クラウド物流システムの導入へ移行することでデジタル化の壁を越えやすくなります。
共同物流の事例紹介──実際の現場の変化
筆者が経験した実在例として、関東の電子部品メーカー複数社による基板・部品の共同納品プロジェクトを紹介します。
従来はA社・B社・C社それぞれが自社便で同じ大手セットメーカー転送倉庫に納品していました。
共同物流化実施により、
・週2回の混載便運用、納品リードタイム2日短縮
・配送コスト25%ダウン(4社合計比)
・ドライバー、荷積み担当の労働時間が大幅に削減
・サプライヤー間の部材受け渡しや空箱回収効率も向上しました。
現場からは「属人的な運送が減り、突発要員手配などの精神的プレッシャーも軽減した」と評価され、以後は同一エリアへの新規調達先開拓時も「共同物流優先」が購買部門の基準となりました。
これからの共同物流戦略──持続可能な成長に向けて
企業の社会的責任やSDGs要請が強まる今、共同物流は輸送コスト削減だけでなく、サプライチェーンにおけるレジリエンス(強靭性)やカーボンニュートラル達成にも寄与します。
また、今後はCO2排出量「見える化」やAIによる最適ルート選択など、IT活用の幅も広がります。
調達購買のプロフェッショナルとしては、単なる「物流現場の効率化係」ではなく、経営戦略の一端を担う「サプライチェーン・オーケストレーター」としての役割を強く意識することが成功の鍵です。
そして、中小企業の協力なしには成立しない、という視点を持ち続けることが日本のものづくり全体を進化させる力になるのです。
まとめ:共同物流は日本の製造業に新たな可能性を拓く
日本の製造業界の多くは、依然として昭和的な個別主義、アナログ主義に固執しがちです。
しかし、世界規模での物流効率化と環境対策が加速する現代において、共同物流は「次の地平線」を拓く切り札となります。
購買担当者、工場長、サプライヤー、それぞれの現場で働く皆さんが、ぜひ一歩踏み出し「共に運び、共に価値を高める」ためのアクションを起こしてください。
現場目線の小さな工夫から、日本のものづくりの新たな未来はきっと始まります。