投稿日:2025年9月24日

既存データを整理せずシステムに移行してエラーが頻発した事例

はじめに:古い現場ならではの“あるある”に向き合う

製造業の現場において、IT化やシステム導入は近年ますます加速しています。

「今のシステムが古いから、新しいシステムに変えよう」「業務の効率化を図ろう」といった声は日常的に聞かれます。

しかし、特に昭和時代から続く企業では、古いエクセル管理表や紙台帳をそのまま新システムに移行しようとして、かえって混乱やエラーが頻発するケースが後を絶ちません。

この現象は、調達購買や生産管理、品質管理のどの分野でも起こり得る業界全体の課題です。

この記事では、現場目線で実際に起こった「既存データを整理せずシステム移行してエラーが頻発した」事例を紹介しつつ、その原因・教訓・具体的な対応策について掘り下げていきます。

IT化推進に悩む製造業関係者、調達バイヤー志望の方、サプライヤーの現場担当者にとっても必ず参考になるはずです。

既存データの「整理しない移行」が招く代表的な失敗例

事例1:マスターデータの重複により部品発注ミスが多発

とある中堅製造業A社は、自社独自で開発した古い部品管理システムから、市販のERP(統合基幹業務システム)に切り替えることになりました。

現場の狙いは「発注作業の自動化」「在庫の見える化」でした。

ところが、工程ごとに異なる担当者がエクセルや帳票で部品データを管理していたため、同じ部品でも名称や品番、単位が微妙に違うまま大量に登録されていました。

いざERPへデータを“そのまま”移行した結果、同じ部品が複数登録され、注文時に在庫情報がバラバラとなり、注文漏れやダブル発注が多発。

結局、システム導入後の3か月間はエラー処理や訂正に追われ、現場の効率化どころか、一時的に生産ラインが止まる事態にまで発展しました。

事例2:旧仕様のまま在庫情報移管で棚卸し大混乱

B社は、生産管理にも手書きの伝票や表計算ソフトを使っていました。

棚卸し情報をそのまま新システムに入力する際に、実は“在庫場所の表記方法”や“数量単位”に各現場ごと独自のローカルルールが存在していたのです。

これを事前に統一せず、移行のみを急いでしまった結果、システム上で在庫残がマイナスになったり、本来ないはずの場所に在庫が表示されたり、現地とシステムの棚卸結果が全く合わなくなりました。

最終的には、一部の在庫情報を再度全て手入力し直さざるを得ず、導入プロジェクトの大幅な遅延を招きました。

事例3:品質管理データの“闇”構造化されず追跡不能に

C社の品質管理部門では、過去からの検査記録・クレーム情報を紙とファイルで保管していました。

これを「一気にデジタルで一元管理」という旗印のもと、スキャン画像や簡易なデータ入力でシステムに移管しました。

ところが項目名や管理番号が現場担当者ごと違い、新システム上で検索や抽出ができない、時系列の追跡ができない異常事態に。

最悪の場合、クレーム品の原因特定や対策履歴の把握まで追いきれなくなり、現場の信頼低下につながっています。

なぜデータ整理を怠りがちなのか:アナログ文化の根深い背景

現場の「スピード優先」と「忖度」文化の弊害

現場では「とにかく稼働中のシステムをすぐにリニューアルしたい」「現状のやり方を変えるのは面倒」といった声が根強く残っています。

また、「データ整理=人事異動や過去担当者のやり方否定」に繋がるケースもあり、波風を立てたくないという“忖度”が邪魔をして、根本改革が進みません。

こうした文化が、既存データ整理の大切さを軽視させてしまうのです。

システムベンダー側の「お客様本位」偏重も一因

ITシステム導入を担当するSIerやベンダー側も「まずは現行データを全部渡してください」と言うものの、現場のアナログ情報の特性やバラつきまで深く踏み込まないまま移行させる傾向があります。

その結果、「納期最優先でとりあえずデータを一括登録」→「使い始めたらエラー噴出」という流れが繰り返されているのです。

業界としての課題:なぜ“前例があるのに”繰り返されるのか

サプライヤーやバイヤーにも波及する影響

調達購買現場では、こうした“データ不備起因のシステムエラー”が自社内だけでなくサプライヤーやバイヤー間取引にも波及します。

例えば注文書・見積書の品番や数量や価格情報が食い違い、「データ移行ミスですね、おたくの現場が…」と責任転嫁が発生。

最悪、納期遅延や商談決裂の原因となり、信頼関係が損なわれてしまいます。

「データ整備人材」の育成が追いつかない現状

業界として問題なのは「データを整理・統合できる本当の専門人材」が非常に少ないことです。

多くの場合、現場出身者が自力でシステム移行やデータメンテナンスに取り組みますが、複雑化したデータ構造やシステムマッピングの知見不足で結局失敗しやすいのです。

そのため、慢性的に「誰も責任を取りたがらない」「本気で根本から変えられない」という悪循環に陥っています。

エラーを回避し、真の業務改革を実現するための処方箋

1. データ移行前の「断捨離」と合意形成を徹底する

新システムへの移行前には、「必要な項目」「統一ルール」「残すもの、捨てるもの」の社内合意を徹底しましょう。

たとえば“部品名や品番の命名規則”“品質情報のフォーマット”など、ひとつひとつ項目を洗い出して整理することが大切です。

既存データを一度「断捨離」し、必要最小限でスタートする勇気、それを社内外で共有して納得してもらうプロセスが鍵を握ります。

2. 部門横断型の「データ整備プロジェクト」化を推進

必ず購買・製造・品質管理・営業それぞれの担当者を巻き込んだ横断チームを作り、「現場主導」でデータ整備を進めましょう。

このとき、実務に詳しい現場リーダーと、ITやデータベースに強いメンバーのタッグが理想的です。

外部コンサルやベンダーを活用する場合も、「自社のデータ表現のクセや暗黙ルール」をしっかり説明し、お互い認識を揃えてから作業を始めましょう。

3. サプライヤーやバイヤー先とも「データ共通化」で連携強化を

調達の現場では、自社だけでなくサプライヤーと共通の品番やデータ形式を持つことが理想です。

たとえば、「御社の商品データを弊社品番にマッピングします」といったやり取りを、事前にしっかり設計しておけば、発注・納品ミスや取引トラブルの予防につながります。

この文化はまだまだ浸透していませんが、今後はサプライチェーン全体の競争力向上の必須条件です。

4. 検証とアップデートの“習慣化”を徹底

システム移行は“一度で終わる”ものではありません。

「エラーや使い勝手に継続的にフィードバックして、定期的にデータを見直す」というサイクルを業務に定着させることが、長期的な安定運用のポイントです。

ラテラルシンキングで考える:現状打破への道筋

製造業の強みは「現場対応力」にあります。

ですが、古い慣習やアナログ文化に根差しすぎると、先端システムのメリットを活かしきれません。

そこで「データのあり方を一新する」という、少し高いハードルに挑戦しましょう。

たとえば現場の目利き力を活かして「どんなデータ項目が最も業務品質に効くのか」を議論し直してみる。

「紙ファイルの情報を原則デジタル化し、さらにクラウドでいつでも見られる形にする」といったチャレンジも考えられます。

業界の保守的な文化に風穴を開けるには、「データ整備」の仕組み自体を業務改革のテーマに据えて全社で頭を悩ませ取り組む姿勢が欠かせません。

まとめ:見逃してはいけない“データ整理”の重要性

既存データを整理せずにシステム移行したことで現場に混乱やエラーが頻発した例は、決して他人事ではありません。

アナログな業界風土や現場の意識、部門ごとの縦割り体質など、乗り越える壁は多いですが、「データ整備」を真剣に考えることが、製造業の底力を引き出す最初の一歩です。

今後IT化や自動化がさらに進む中で、調達・生産管理・品質管理それぞれの担当者は「データをどう扱うか?」を常に問い直し、連携を強めていく必要があります。

現場に根付いたノウハウを活かしつつ、新たな視点で「工場のデータマネジメント」を見つめ直しましょう。

それが、業界全体の発展とサプライチェーンの信頼構築に繋がるのです。

You cannot copy content of this page