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数字だけを羅列し現場改善に繋がらないコンサルタントの失敗

数字だけを羅列し現場改善に繋がらないコンサルタントの失敗
はじめに:現場から見えるコンサルタントの盲点
数字は嘘をつかない――多くのコンサルタントが好んで使うフレーズです。
確かに、工場や生産現場において数字は重要な指標となり、経営判断や改善施策を考える上で不可欠な要素です。
しかし、現場経験が浅いコンサルタントや、数字を羅列するだけのコンサルティングに依存してしまうと、本質的な「現場改善」にはつながりません。
私自身、製造現場の現場に20年以上身を置き、調達購買から生産管理、品質管理、そして自動化まで幅広い業務に携わってきました。
その中で、数字だけで語るコンサルタントの提案がいかに現場に根付かず、逆に混乱を招いた事例を数多く目の当たりにしてきました。
この記事では、そういった「数字だけを羅列するコンサルタント」がなぜ失敗しやすいのか。
そして、現場の目線から見た本当の改善とは何かを掘り下げていきます。
現場を知らないコンサルタントのありがちなアプローチ
たとえば、ある製造工場に外部コンサルタントが入り、まず最初に着手するのが「現状分析」です。
ここで多くの場合、各種データ――生産量、不良率、稼働率、リードタイムなどをExcelやBIツールで可視化します。
これ自体は決して悪いことではありません。
問題は、その次に起きることです。
数字の一覧表を元に「どこがロスなのか」「ここを○%改善できる」などと机上論で議論が進み、KPIとPDCAサイクルが示されます。
しかし、現場作業者やマネージャーの体感や感覚、組織カルチャーはそこにはありません。
「この工程の歩留まりを5%向上させましょう」「1人当たり生産性を15%上げましょう」などと、数字の独り歩きが始まるのです。
なぜ数字だけでは現場は変わらないのか
製造現場には「理論値と実際値のギャップ」が必ず存在します。
設備の老朽化、作業員ごとのスキル差、人と設備のちょっとした不具合、シフトや季節変動…。
こういった「数字には現れない現場の真実」を肌で感じているのが、現場のリーダーやベテラン作業者です。
たとえば「設備稼働率90%」という数字がはじき出されたとしても、その稼働率実現のために下請けや派遣作業者に大きな負担がかかっていれば、中長期的には逆効果になることもあります。
現場の無理な業務負担が、逆に労災や離職、モチベーション低下を招き、品質トラブルの伏線になる場合もしばしばです。
「現場目線」の不足した改善案の実例
私が過去に経験したケースをご紹介します。
ある大手コンサルタント会社が経営トップの依頼で原価低減プロジェクトを立ち上げました。
コンサルタントは契約最初の1ヶ月、膨大なデータを整理し、原価構成比や工程チャートをつびつぶに分析しました。
結果、「B工程のタクトタイム短縮」と「間接人員の削減」が効率化の鍵だという提案にまとまりました。
しかし、B工程では古い設備を毎日メンテナンスしながら稼働限界に近づけており、むしろ生産パンクが数回発生していました。
間接人員がいなくなれば、その保全や段取り替えが間に合わず、かえってラインが止まってしまう可能性も高いことは、現場の誰もが知っていました。
この提案が現場で“絵に描いた餅”だとあっという間に看破され、現場リーダーの心は閉ざされてしまいました。
結果、コンサルタントの滞在期間中、形式的な改善活動だけが続き、成果としては目標値の半分も達成できませんでした。
昭和的なアナログ現場が抱える背景事情
現在でも多くの工場、特に中小の部品メーカーや下請け工場では、デジタル化が十分には進んでいません。
熟練者の「勘」や「経験」が重宝され、日報や進捗管理も紙と手書きが常態化しています。
このような現場では、「数字で語られてもピンとこない」というのがむしろ自然な感覚です。
たとえば、長年仕入れ先と築き上げてきた信頼や顔の見えるコミュニケーション。
Aさんの手でしか調整できない繊細な段取り。
こういった無形の現場力を数字だけで評価、判断しようとされることへの抵抗感も強いのです。
コンサルタントが「データドリブン」を唱えても、現場が動かなければ一切の改善は絵空事に終わります。
現場に根付いた昭和型の企業文化も、単なるDX施策やツール導入だけでは変えられません。
なぜ「現場力」や「現場コミュニケーション」が欠かせないのか
数字よりも現場に大きなインパクトを与えるのは、「現場で何が起きているのか」を肌で知ることです。
そのためには、現場に入り作業者やリーダーと会話し、何気ない立ち話から真の課題を拾い上げる必要があります。
たとえば、調達購買の観点でバイヤーが「単価交渉」だけを重視しても、現場では長期的な品質変動の不安や、納期の波動リスクなど、表面的な数字に表れない要素が意思決定に大きく影響します。
サプライヤーとしてバイヤーの思考を知りたければ、現場でどのようなトラブルが実際に起きているのか、生産管理や品質管理の苦労がどこから生じているのかを観察する視点が不可欠です。
また、「現場力」の本質は、目に見える数値ではなく、「ちょっとした気配り」「経験に基づく予知策」「仲間同士のコミュニケーション」などの、いわゆる“暗黙知”に集約されます。
コンサルタントの多くが見落としがちですが、現場作業者の声をきちんと拾い、現場で納得感を得られる改善こそが、継続的な成果に結びつきます。
現場改善に成功した本質的コンサルティング事例
もちろん、すべてのコンサルタントが数字にだけ執着しているわけではありません。
実際に私が関与した事例で、現場と一体になって成功したコンサルティングのプロセスをご紹介します。
当初、ラインの不良率が高く現場モチベーションも低下していました。
コンサルタントはまず現場の作業フォローを徹底し、自ら作業服で現場に入り、5日間連続で現場メンバーと汗を流し課題を体感しました。
そこから、「不良とされている現象がシフト交替時に多発していること」や、「検査スキルの標準化がされていないこと」など、単なる数字には現れない事実が明らかになりました。
結果、オペレーションの再設計だけでなく、教育方法や作業手順の焦点化、軽微な設備投資(ガイド治具の作成やレイアウト変更)など、多角的な改善策となり、2か月後には不良率が半減、現場も「自分たちが主役」の改善として成果を実感しました。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点での学び
購買・調達を担うバイヤーにとって、サプライヤー工場の現場力や課題を、単なる「価格競争力」や「書類上の納期」だけで評価してしまうと、結果的にサプライチェーンリスクや品質問題を内包してしまいます。
逆にサプライヤー側も、バイヤーが求める“数字化”や“見える化”の意図を深く理解し、現場から生み出すデータやストーリーを「バイヤーの納得感」に結びつける工夫が求められます。
現場が変わると、現場のコミュニケーションや信頼関係も大きく変化します。
短期的な数字では測れない安心感や一体感が生まれ、サプライヤーとバイヤーの関係にも好循環が生まれます。
数字は結果として現れてくるものであり、まずは“現場主義”“共感”が何よりも大切なのです。
まとめ:数字だけに頼る落とし穴と、これからの現場改善の要諦
あらためて、数字は現場改善の道標として重要です。
しかし、数字の背後には「現場の日常」「人の気持ち」「工程の個性」「取引先との信頼」など、目には見えない要素が影響しています。
数字だけを羅列し、現場感覚や現実を置き去りにしたコンサルティングからは、本物の現場改善・生産性向上は生まれません。
現場に足を運び、生の声を聴き、現場力を高める。
この“地に足付いた現場主義”こそが、これからの製造業やバイヤー、サプライヤー双方が伸びていくために必要なアプローチです。
昭和・平成・令和と時代が変わっても、“現場主義”は変わりません。
数字と現場を“つなぐ”視点を持ち、アナログ的な知恵もデジタルの力もバランス良く融合していく――それが、未来の日本のものづくりにとって欠かせない知見となるはずです。
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