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常識外れの発注先が失う人材と信頼の実態

目次
はじめに:常識外れの発注先とは何か
製造業の現場では、発注先=サプライヤーの選定がビジネスの成否を大きく左右します。
最適な供給パートナーは高品質・安定納期・適正価格を実現し、競争力の源泉となります。
しかし、現場目線で言えば、世の中には「常識外れ」と呼ばれる発注先が存在します。
ここでいう“常識外れ”とは、単に変わり者とか型破りという意味ではありません。
むしろ、今なお昭和世代のアナログな習慣から脱却できず、時流を無視したまま旧態依然とした方法にしがみついている発注先のことです。
または、最近増えている「DX化ごっこ」だけで中身が伴っていない発注先も指します。
こうしたサプライヤーは、短期的なコスト削減に偏ったり、独自のルールや属人的対応を続けたりしています。
そして気づかぬうちに「人材」と「信頼」両面で大きな損失を抱え込んでいることが多いのです。
本記事では、長年のバイヤー・工場管理職としての実体験に基づき、“なぜ常識外れの発注先が人材と信頼を失うのか”を具体的に掘り下げます。
また、バイヤーを目指す方・サプライヤー関係者に向け、どうすれば負の連鎖を断ち切れるかも考察します。
現場目線から見る「常識外れ」の特徴
1. コミュニケーションの断絶が生む不信感
最も多いのは、古い体質のサプライヤーが「情報をオープンにしない」「必要なことしか伝えない」という傾向です。
例えばトラブル発生時、すぐに報告せず自社内で抱え込みがちです。
実際、仕様変更や納期調整の要求にも「そんなのは無理」と一方的に断られることが珍しくありません。
これでは、サプライチェーンの透明性も、現場の安心感もありません。
バイヤーとしては「この会社は信用できない」「重要情報を隠されてはたまらない」と次第に距離を置くようになります。
2. 成長機会を奪う属人的マネジメント
昭和モデルに根差した「◯◯さんのやり方」「ベテラン職人の一存」といった属人的運営は、今なお製造現場に根深く残っています。
新人の定着・育成や技術承継に失敗しやすく、一部のキーパーソン依存が慢性化しやすいのです。
たとえば工程管理や品質検査が紙ベースで、NOと言える人材が表に出ない会社では、次世代を担う若手が「自社で成長できない」「自己判断で動けず窮屈」と感じて辞めていきます。
また、その属人性はバイヤーにとっても「担当が変わったら全く話が合わない」「少しイレギュラーが起こると一気に対応力が落ちる」といった課題として表面化します。
3. DX化の”やってる感”だけ、実態は変わらない
近年、発注先の中にはクラウド在庫管理やIoT機器導入をアピールする企業も目立ちます。
しかし、「データ取りはしているが現場活用できず運用止まり」や、「IT担当者が一人きりで属人的に運用している」といった事例が多く見られます。
見た目のDX化で現場の効率化、エラー低減、品質保証に実質的な効果が出ていないと、取引先として継続するメリットが失われます。
むしろ「無理に新しい仕組みを導入し迷走している」といったリスクを感じやすいものです。
発注先が失う“人材”の実態
若手・中堅の離職が止まらない理由
現場任せの曖昧な教育、属人化されたノウハウ蓄積、クローズドなコミュニケーション環境。
これらが続いている会社では、若手・中堅が「ここで頑張っても成長できない」と将来を見限り、キャリアアップや転職を選びやすくなります。
一方で、現場の“なんとなく続いている仕事”や“どんぶり勘定”が横行している環境では、自らを磨く気持ちを持つ職人やエンジニアほど程なくして見切りをつけてしまいます。
さらに加速する高齢化と“人材のたらい回し”が慢性化することで、工場の現場力はますます落ち込んでいきます。
現場リーダー・管理職すら外部流出するケースも
新しいアイデアや変革提案を歓迎せず、「波風立てるな」「現状維持が正義」という空気が蔓延すると、やる気ある現場リーダーほど社外に活躍の場を求め出します。
その結果、貴重な実務ノウハウ・改善提案・マネジメント力が一気に流出し、残された現場は前に進めなくなりがちです。
発注先が失う“信頼”の本質
トラブル時の対応遅延が命取り
バイヤーが最も重視する要素の一つが、“何か問題が発生した際、いかに誠実・迅速に対応するか”です。
これを怠って自社の保身を優先したり、報告を後回しにしたりすると、問題以上に“信頼そのもの”が崩れます。
たとえば納期遅延や不良流出といった有事には、迅速な共有・原因究明・代替案の提示が不可欠です。
しかし、“常識外れ”の発注先ほど「後でまとめて報告すればいい」「まずは現場でなんとかしろ」と本質的な動きが遅れます。
最悪の場合、顧客からは
「この会社は一緒に成長できない」
「関係を続けるのは自社のリスク」
と見なされ、取引縮小や切り替えを検討される危険も孕みます。
組織的な継続改善がないという印象
“場当たり的な対応ばかり”
“組織として再発防止を仕組みにできない”
そんな体質が透けて見える発注先に、顧客企業は安心して持続的な付き合いができなくなります。
長期安定のサプライチェーン構築が求められている今の世の中では、「根本的な再発防止・プロセス改善」ができない体質は致命的です。
時代の流れと、変わらなければならない理由
業界として変革が求められる背景
これまで日本の製造業は、高度な匠の技、丁寧なものづくり姿勢、それを支える長期的な取引関係によって成長してきました。
しかし今、グローバル競争の激化やサプライチェーンリスクの多様化、DX化の波が押し寄せています。
・高齢化/技能承継
・サイバーセキュリティや情報共有
・「減点法」から「加点法」への評価転換
こうした潮流を無視し、今まで通りのやり方に固執するサプライヤーは徐々に顧客から敬遠され始めています。
“失われる人材・信頼”が未来を閉ざす
人材離れ、信頼消失が進むと、どんなに歴史ある工場やブランドでもいずれ淘汰せざるを得ません。
一方、“常識をアップデートする”“全社で持続的改善にチャレンジする”企業こそ、これからの製造業に新たな価値と信頼を提供できるのです。
バイヤー・サプライヤー、それぞれが目指すべき姿
バイヤー視点:信頼できる発注先を見極めるポイント
・現場の課題を率直に受け止め、積極的に情報共有してくれるか
・変化への挑戦(DXや人材育成)を本気で進めているか
・トラブル時の初動、根本的再発防止能力があるか
・属人化や“昭和の美学”から脱却し、組織的な知見共有を図っているか
バイヤーに求められるのは、短期の納期やコストだけでなく、供給リスクや人間関係も念頭に置いた長期的な視野です。
サプライヤー視点:生き残るためには何が必要か
・組織的な知見や情報のオープン化(現場全体で「見える化」推進)
・若手や異分野人材の活用と、ベテランからのスムーズな技能継承
・トラブル・ミスの隠蔽ゼロ、むしろ早期発見・リアルタイム共有こそ信頼につながると認識
・“なんとなく昭和”から“根拠ある改善”へのパラダイムシフト
こうした一つ一つの積み重ねが、結果として「選ばれる会社」「人が集まる会社」に変革する道しるべとなります。
おわりに:常識外れにならないために
製造業において「常識外れの発注先」が失うもの、それはコストや売上といった目に見える数字だけではありません。
むしろ、人材――すなわち組織の未来と、信頼――すなわちビジネスの根幹こそが最も大きな損失です。
時代が変わり、産業構造が大きく動く今こそ“現場の常識”を問い直し、「人と信頼を集める現代のサプライヤー像」へと大きく舵を切ることが必要です。
バイヤー・サプライヤー関係者一人ひとりが、その第一歩を自ら踏み出すことが、製造業全体の進化につながっていくでしょう。
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