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見せ方を誤ったせいで改善が形骸化する失敗談

目次
はじめに
現場に改善活動を根付かせることは、昭和から続くアナログな製造業界においても、変わらぬ“永遠の課題”です。
多くの工場で「少しでも効率化しよう」「不良を減らそう」「ムダをなくそう」といったスローガンが掲げられています。
しかし、最初の旗振りは盛り上がるものの、数カ月もすれば活動自体が下火に。
「やったフリ」「やらされ感」によって、結局何も変わらない……。
こうした「形骸化」の背景には、実は“見せ方”の失敗が大きく関わっていることをご存じでしょうか。
本記事では、実際の現場マネジメントや現場指導で体験した失敗談を交えつつ、「なぜ改善活動が形骸化するのか」「現場で息づく改善とは何か」「業界あるあるの“昭和的マネジメント”からどう脱却するか」を、深く掘り下げて解説します。
調達やバイヤーとしてサプライヤーの現場運営を知りたい方にも、きっと役立つ内容です。
なぜ見せ方が重要なのか
目的が伝わらない「やらされ」改善
改善活動が形骸化する最大の要因、それは「目的が現場まで浸透していない」ことにあります。
トップダウンで「全員で改善しましょう」と指示が降りてくる。
各部署が「やりましたアピール」のために小手先の活動を報告する。
会議用の資料づくりだけが進化し、現場のムダや不具合はほぼ変化なし。
現場のメンバーからすれば、「また社長や部長が思い付きで始めたのか」「結果はどうせ上が気にするだけ」と冷めた空気が広がるのは当然です。
これこそが“見せ方を誤った”失敗例です。
「改善報告プレゼン」の落とし穴
たとえば、私が工場長時代に推進したQCサークル活動。
20チーム近くがテーマを掲げ、半年ごとに活動成果をパワーポイントで発表しました。
当初は大盛況でしたが、2年目には発表会自体が形骸化。
なぜか。
全社で「もっと分かりやすく」「カッコいい資料を」と指導した結果、報告会が“資料コンテスト化”したのです。
現場の改善も、実際には「Aさんの地味なひと手間」「工具の整理」など細かな積み重ねが大半です。
それを「資料映え」させようとすると、本質とズレが生じます。
「見せるための改善」にすり替わり、「現場のための改善」ではなくなる。
この本末転倒な状況こそ、最大の落とし穴です。
形骸化のメカニズムと背景
「できるだけムダを減らしたい」の本心
現場が本気で改善に取り組まない理由。
それは「現状を変えるリスク」に他なりません。
昭和から続く多くの現場では、「これまで続けてきたやり方」に安心感があります。
「新しいやり方は本当に安全なのか」「上司にダメ出しされないか」。
現場リーダーやパートスタッフほど、変化には慎重になります。
トップや管理職が“見せたい”成果主義を押し出すほど、現場では「とりあえず無難にやり過ごそう」が蔓延します。
本音は「ムダを減らしたい」ですが、自分たちが損したり怒られたりするくらいなら、やらない方が得策——こうした心理的安全性の欠如が、活動の形骸化を招いているのです。
紙とエクセルが支配する「昭和型現場」構造
また、昭和的な製造業の大半が、いまだ「紙」と「エクセル文化」です。
改善提案があがっても「記入シート」を経由し、「ハンコ」を何重にももらい、エクセルに転記して「上司宛の報告書を作る」。
この手間自体が、改善を“コスト”に変えています。
歴史ある工場ほど「なぜこのルールがあるか」を誰も説明できないまま、帳票・報告フローだけが守られる悪循環。
現場側も「結局、形だけ整えればいい」と割り切ってしまうのです。
サプライヤー・バイヤーから見る「見せ方」のリアル
バイヤーが見ているのは「現場のリアリティ」
バイヤーとしてサプライヤー工場を監査した経験から言えば、「きれいな資料」や「おしゃれな改善履歴」は参考にはなっても本質ではありません。
バイヤーが評価するのは、現場が「なぜ・なにを・どう変えたのか」「その結果どうなったか」というプロセスです。
むしろ見栄えばかりを意識した資料や、意味の分からないスローガンが壁に貼られていると、「本音と建前が乖離した工場」というイメージを強く持ちます。
サプライヤーの立場でバイヤーに信頼される現場とは、「小さな改善でも本音に基づいて積み重ねている」姿がきちんと伝わる現場です。
「現場を隠す・ごまかす」は最悪の印象
私自身、買い手・売り手の両方での現場確認の場も多く経験しました。
一番やってはいけないのは「現場のムダや弱みを隠そう、ごまかそう」という対応です。
見せ方の失敗は、現場の人や管理者が「とりあえずうわべを整える」という行動に直結します。
その結果、チーム全体の信頼も、長期的な取引関係も失ってしまうリスクが高まります。
デジタル化・見える化の推進と落とし穴
最近では、多くのメーカーで「デジタルツール」による現場改善の見せ方・見える化が進んでいます。
しかし、現場の感覚を無視して「システム導入」だけが先行すると、かえって“新たな形骸化”が生まれがちです。
見かけだけのKPIやダッシュボードではなく、「現場が本音で使える」「自分の作業がどう変わるかわかる」といったリアルな運用設計が肝要です。
具体的な改善活動「見せ方」3つのポイント
改善活動を形骸化させず、「現場と共に歩む見せ方」へと転換するためには、以下のポイントが効果的です。
1. 目的と現場メリットを徹底的に共有する
「なぜこれをやるのか」「やることで自分たちがどうラクになるか」まで、徹底的に現場と対話してください。
トップやバイヤーの要望だけを伝えず、一人ひとりが「自分事」として捉え直せる言葉を投げ掛けることです。
紙一枚でも「現場の困りごとを“自分たちで解決する”」という主役意識が生まれれば、改善活動は息を吹き返します。
2. 成果だけでなく“失敗”もオープンにする
つい成果を“盛って”見せたくなりますが、むしろ「うまくいかなかったこと」「やってみて気づいた新しい課題」も正直に公開しましょう。
現場メンバーやサプライヤーも「これなら自分たちもトライできる」と、前向きな挑戦の空気が生まれます。
隠すのではなく“学びを共有”することで、現場に根付いた改善文化が形成されます。
3. 書類文化から「現場発信のデジタル活用」へ
昭和的な帳票や報告文化を、現場目線のデジタルツールに置き換えましょう。
スマホで写真を撮って進捗を記録する、チャットで気軽にアイデアを共有する、など新しいコミュニケーション手段を現場主導で増やすことです。
「報告は最小限、現場の負担も減らす」「みんなで“見える化”し本音で意見を出せる」——その実感が、推進側と現場をつなぎます。
事例:筆者が体験した「見せ方」改革の成功例
かつて私が閉塞感の強い工場現場に赴任した際、最初の1年は活動が全く形骸化していました。
紙の提案箱はホコリをかぶり、会議だけは盛大に行うものの、現場は「またお決まりの流れか」と黙々と作業するのみ。
そこで私は、一旦すべての“会議・資料”をペンディングし、30分単位で現場に入り、「現場メンバーの困りごと」をヒアリングして回りました。
集まった声を「なんでも掲示板」として休憩室に手書きで貼り出し、週1で“答え合わせミーティング”を実施。
現場主役の進め方に徹し、「報告よりも“こんな実験やってみました!”」を共有する場へと転換しました。
数カ月後には、黙っていたベテランやパートさんからも「こうしたら楽になった」「ここをもっと直したい」と提案が倍増。
外部監査のバイヤーからも、「ここは改善文化が根付いている」と高評価を得るようになった経験があります。
まとめ:現場の“空気”を変える見せ方がカギ
改善活動を継続的かつ実効性のあるものにするためには、「現場の見せ方・伝え方」を根本から見直す必要があります。
決して“上司や取引先にイイ顔をする”ための活動にせず、現場一人ひとりの「困った」「こうしたい」が主役になる土壌作りが第一です。
「目的の自分事化」「失敗もオープンな情報共有」「現場主導のツール活用」——この3つのポイントを徹底すれば、アナログが根強い製造業でも、新たな改善の地平線が拓かれるはずです。
現場力を高めたい方、自社の改善活動に新たな風を取り入れたいサプライヤーやバイヤーの皆様。
まずは“見せ方”の改革から、一歩を踏み出してみませんか。
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