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現場で使われる差別的な言葉が企業価値を損なう構造

目次
はじめに:現場に根付く言葉の力と企業価値
製造業の現場では、日常会話や業務指示の中で多くの言葉が飛び交っています。
その中には、古くから使われてきた通称や略語、さらには感情のこもった語気の強い言葉までさまざまな表現が見られます。
そして時に、無自覚のうちに差別的、排他的な意図を含む言葉が用いられてしまうこともあります。
これらの「差別的な言葉」は、使い手が意図していなくても現場の空気に根付きやすい傾向にあります。
しかし現代は、ダイバーシティやインクルージョンが企業価値の中核となる時代です。
このような傷つける言葉が職場に流布し続けることで、企業のイメージやブランド価値が大きく毀損されるリスクが高まっています。
現場でよく使われてしまう言葉の背景や、なぜそれが企業価値を損なう構造になっているのか。
管理職や調達・購買担当者の経験をもとに、実態と改善のヒントを整理していきます。
現場でよく耳にする差別的な言葉の現状
無自覚な差別ワードとその具体例
工場現場では、長年の慣習や通称から、無自覚に差別的なニュアンスが含まれる言葉が使われています。
たとえば「女だからできない」、「外人作業員は遅い」、「お前の国のやり方では通用しない」など、人種や性別、年齢、国籍等を揶揄する発言が見られます。
一方で、「できないやつはクズ」「使えない部品」「馬鹿なバイヤー」などの極端な評価語も、日常会話に紛れてしまいがちです。
こうした言葉は、個人の尊厳を損ないモチベーションを低下させるだけでなく、離職や訴訟リスク、場合によっては被害者が告発しSNS等で炎上するリスクもはらんでいます。
なぜアナログ業界で根付きやすいのか
昭和時代から続く製造現場は、技術継承や属人的なノウハウ優先主義という文化も根強く残っています。
そのため「昔から使われている呼び方だから」「冗談だから通じるだろう」といった温度感で、不適切な言葉がアップデートされずに使い続けられてきました。
加えて、現場作業が中心の環境では多様性教育の研修やガイドラインの整備が後回しになりがちです。
「現場は結果がすべて」「厳しく指導しないと品質が落ちる」といったプレッシャーや焦燥感から、強い言葉に頼ってしまう傾向も否定できません。
なぜ差別的な言葉が企業価値を毀損するのか
従業員エンゲージメントと生産性の低下
差別的な言葉が飛び交う職場では、従業員一人ひとりが「自分は大切にされていない」「この会社は公平ではない」と感じやすくなります。
その結果、モチベーションの低下・エンゲージメントの減退・優秀な人材の流出などの深刻な副作用をもたらします。
さらに、ハラスメントがまん延している職場では人的ミスや事故、クレームが起きやすくなり、組織全体のQCD(品質・コスト・納期)管理にも悪影響を及ぼします。
現場目線では「言葉の問題」と片付けがちですが、これは明確な生産性損失につながるため、経営課題として避けては通れません。
バイヤー・サプライヤーの関係悪化と商機損失
製造業のバイヤーがサプライヤーに対して意図せず上から目線の発言をしたり、差別的な言い回しを使った場合、取引先との信頼関係が著しく損なわれます。
特にグローバル化が進む昨今では、多様な価値観を持つ海外サプライヤーとの連携強化、論理的・建設的な交渉力が求められています。
調達購買のトップは、そうした無意識のバイアスや旧態依然とした発言が「日本メーカーとは取引したくない」という世界的なイメージ悪化につながることを強く認識しなくてはなりません。
また、世間の目が厳しい時代。
万一内部告発やSNSでの炎上リスクが現実化した場合には、受注停止や株価下落など目に見える形での事業損失にも直結します。
ブランドイメージと採用力の低下
新卒・中途ともに就職活動をする際には、「その企業がどんな現場文化を持っているか」が重視されています。
業界全体のイメージや、口コミサイトの投稿で「現場の言葉づかいが荒い」「差別用語が横行している」というネガティブ評価が広がれば、人材確保はますます困難になるでしょう。
多様性を受け入れ、働きやすい職場環境を目指す“SDGs”や“ダイバーシティ経営”の掛け声が増す中、言葉づかいのアップデートは企業の信用創出=価値向上に直結する時代なのです。
現場改革のために求められる視点とアクション
トップダウンとボトムアップの両輪アプローチ
まず重要なのは、トップ(経営層)が現場の言葉に対して強い問題意識を持つことです。
単なる表現指導ではなく、人権啓発・ダイバーシティ研修を経営戦略の一環として位置づけ、経営理念に「全従業員の尊重・公平・開放性」を明文化して取り組むことが不可欠です。
また、現場からの声(ボトムアップ)も重要です。
従業員同士が本音で意見を言い合え、差別的な発言や感じた違和感を適切に共有できる「フラットな環境」を整えることが生産性アップ、改善の原動力となります。
現場リーダー・工場長の役割
現場リーダーや工場長は、「誰もが安心して働ける工場」を目指して言葉の使い方や指導方法をアップデートする必要があります。
かつては「厳しく叱責しないと覚えない」という風土が一般的でしたが、今は個々の多様性やライフスタイルを尊重し、ポジティブなフィードバックやお互いを認め合うマネジメントが求められます。
身近な例では、注意をする場合も「これができていなかった理由を一緒に考えよう」「あなたの経験を活かすにはどうしたらいいか」というフレーズに置き換えます。
日本語特有の上下関係・婉曲表現も重要ですが、あくまで相手をリスペクトする姿勢を強調することで、現場全体の空気を好転させることができます。
業界特有のアナログ文化からの脱却
製造業界は「カイゼン」「暗黙知」「現場主義」といった独特の価値観が色濃く残っており、これがしばしば変革のボトルネックになります。
しかし、今や世界のモノづくり現場は急速にデジタル化・自動化が進み、多様な人材が活躍できる体制構築が加速しています。
昭和のやり方や言葉づかいに固執せず、
「この言葉は本当に必要か?」
「新入社員や女性、外国人が見聞きしても誇れる表現か?」
と常に自問自答し「半歩先の現場文化」にシフトしていくことが求められます。
今こそデジタル&多様性時代のマインドセットへ
IT・自動化推進と共振するダイバーシティ経営
工場の自動化や設備のデジタル化は、効率や安全、品質向上だけでなく、現場スタッフの多様性活用を推進する絶好の契機でもあります。
ITツールやチャットシステムの導入時には、言葉の可視化・公的記録が残るため、匿名での不安共有やコミュニケーション改善も期待できます。
また、国籍・性・年齢・キャリア背景の異なる人材がワンチームとなり協力し合う現場づくりには「誰に対してもリスペクトある言葉づかい」が不可欠です。
バイヤー・サプライヤー含めたサプライチェーン全体で多様性志向を進化させることで、企業価値・競争力は劇的に高まります。
現場から始まる未来志向の企業文化改革
「言葉」は文化そのものです。
現場での実践・現場リーダーの姿勢・経営の本気が、業界全体の進化を牽引します。
一人ひとりが「言葉の力」に敏感になり、昨日よりもより良い表現・伝え方を意識することが、ひいては日本の製造業の持続的成長に直結すると確信しています。
まとめ:差別的言葉をなくす構造改革が真の競争力を生む
これまで当たり前のように使われてきた現場の差別的言葉。
その放置は、人材流出・ブランド毀損・取引停止等のリスクに直結します。
業界全体のアップデートのために、
・ 企業のトップ層による強い意思表示
・ 現場からの心理的安全性の確保
・ 多様性を認め合うマネジメント
・ 新しいITツールの活用
など多角的アプローチが不可欠です。
昭和の発想から一歩先を行く令和・未来型のものづくりへ。
現場から変える「言葉と企業価値」の関係性こそが、日本の製造業が世界と戦い続ける唯一の道だと強く伝えたいと思います。
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