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改善成果を見える化できないコンサルタントの課題

目次
はじめに:製造業の現場における「改善」とは何か
製造業において「改善」は永遠のキーワードです。
現場の効率化だけでなく、コストダウンや品質向上、納期短縮など、さまざまな側面で求められます。
その中で、外部の力――つまりコンサルタントの存在が大きくなっています。
専門的なノウハウや経験を持つコンサルタントは、一見すると救世主のように思われがちです。
しかし、現場目線で長年歩んできた私から見ると、多くのコンサルタントが「改善成果の見える化」という大きな課題に直面しています。
なぜ改善がうまく“見える化”できないのか――。
昭和時代のアナログな文化から抜け出せない業界特有の事情や、現場と上層部の意識ギャップ、さらには成果指標(KPI)の設定方法など、その要因は多岐に渡ります。
この記事では、実際の製造現場の実体験やバイヤー・サプライヤー双方の視点、最新の業界動向も交えながら、課題の本質と具体的な打開策を深掘りします。
現場で感じる「コンサルタント」のリアルな課題
成果が「見えない」ことがもたらす弊害
改善活動を外部コンサルタントに依頼したものの、最終的な成果が数字や実感として”見えない”という悩みは非常に多いです。
この「見えない成果」は、現場作業員のやる気低下、経営層の不信感、サプライヤー側からバイヤーへの説明責任困難など、組織全体にネガティブな影響を与えます。
昭和から続く“オレ流”の文化が障壁
多くの現場では、「昔からこのやり方でうまくやってきた」「数字でどうこう言うな、目で見て分かるだろ」という“オレ流”の文化が今も根強いです。
このような現場文化は、外部コンサルタントが導入しようとするデジタル指標やエビデンスベースの改善策をシャットアウトしやすく、結果的に改善成果の見える化が進みません。
バイヤーの視点:なぜ見える化が必要か
部品調達や工程外注を担当するバイヤーにとって、サプライヤー側の改善成果が見えにくいことは致命的です。
期待していたコストダウンや納期短縮が実感できなければ取引リスクと判断され、サプライヤーの評価ダウンや取引中断にもつながります。
だからこそ、コンサルタントによる改善の「成果指標・可視化」が必須となります。
「見える化」できない原因はどこにあるのか
業界動向:デジタル化に立ち遅れる現場
近年、IoTやAI、BIツールなど、最先端技術による生産現場のデータ収集・分析が急速に進展しています。
しかし日本の多くの中小~大手製造業では、依然として紙・手作業・口頭コミュニケーションに頼るアナログ文化が色濃く残っています。
これが「見える化」推進の大きな壁となっています。
KPI設定の失敗
よくある事例として、「品質不良率を減らします」「作業時間を短縮します」といったKPI設定があります。
しかし、現場では「どの“現象”を、どの“数字”で、どう評価するか」が人によって異なるため、KPI自体の認識がバラつきます。
これにより「結局、何が良くなったの?」と答えづらくなります。
現場巻き込みの甘さ・現場不信
コンサルタント提案の“正しさ”だけを押し付けても、実際に手を動かすのは現場の人間です。
「どうせ外の人がまた上っ面だけ…」と冷めた目線が蔓延すると、改善の本質や成果測定まで辿り着きません。
プロジェクトゴールと現場の日常業務のギャップ
改善はしばしば「キャンペーン」的に始まり、数ヶ月後には停滞します。
これは、プロジェクトのゴールが現場の日常業務とリンクせず、「やらされ感」や「一時的な努力」で終わるたためです。
真の「見える化」実現のための打ち手
1. 現場KPIの再構築と定義明確化
まず前提として、「何をもって改善とするのか」「どの数値が最重要なのか」を現場のメンバーと徹底的に議論しましょう。
たとえば「ピッキング工数削減」を目指すなら、「1回あたりのピッキング時間」「月次の合計歩数」「ピッキング人員数」など、現場で誰もが納得しやすい指標を選びます。
さらに、「いつ」「誰が」「どんな方法で」測定するのかも明記し管理します。
数字自体よりも、“数字の信頼性”を現場に染み込ませましょう。
2. ローコストデジタル化によるリアルタイム化
最新のIoTや高額なMESシステムだけが「見える化」ではありません。
・市販のタイムスタディアプリ(スマホで作業時間計測、写真つき報告)
・フリーのダッシュボードツール(Googleデータポータルなど)による現場KPI共有
・共有サーバを使ったExcel集計・グラフ化
など、まずは「現場の手間にならない」「小規模でも継続できる」方法を選びましょう。
こうした積み上げこそが、昭和から脱却し得る突破口となります。
3. 成果のストーリーテリング化
「数値」だけでなく「エピソード」の見える化も重要です。
当初は抵抗していたベテラン作業者が、改善後に「ラクになった」「こんな変化を感じている」と自らコメントするような場面を、写真や会話も盛り込みまとめましょう。
これが組織の内外へのアピール材料となり、モチベーション向上や他工程への水平展開に繋がります。
4. バイヤー・サプライヤー間の“共通指標”を持つ
調達現場では「歩留まり90%→95%に向上」「納期遵守率が90%→98%に改善」といった分かりやすい指標が重要視されます。
サプライヤー側が、「ここまで努力し、この数字まで良化しました」と毎月簡単にレポートできる体制を整えましょう。
バイヤーに「このサプライヤーは信用できる」と感じさせる唯一の手段が、この見える化=エビデンスの提出です。
5. 継続的なフィードバックサイクルを回す
PDCAサイクルの形骸化は避けられませんが、一方で「月1回の朝礼でKPI進捗と現場ヒアリング」を必ず実施するだけでも、現場の改善モチベーションは大きく変わります。
見える化=単発イベントではなく、日常業務の一部と思わせることがコンサルタントの真骨頂です。
業界全体のトレンドと今後の課題
ものづくりDXと日本的現場主義の両立
経済産業省による「ものづくり白書」でも、デジタル化・自動化による現場生産性向上がキーワードとなっています。
一方で、「現場の肌ざわり」「人の気付き」といった日本特有の現場力が再評価されているのも事実です。
改善成果の見える化には、「デジタル×アナログ」のハイブリッド思考が求められます。
バイヤー・サプライヤー関係性の進化
従来の「コスト交渉」中心から「共創パートナーシップ」へと、関係性は大きく変化しています。
改善成果の見える化は、バイヤー・サプライヤー双方が納得感を持ち、ともに価値を生み出す礎となるでしょう。
まとめ:見える化できるコンサルタントこそ、業界の未来を担う
改善の成果が「見えない」という悩みは昭和から続く日本の製造現場に広く根付いています。
しかし、それは決して乗り越えられない壁ではありません。
現場・バイヤー・サプライヤーの三者が「共通の物差し=見える化指標」を持ち、デジタルもアナログも適切に使い分けることで解決します。
コンサルタント自身も、最前線で汗を流し、現場の声に耳を傾けながら、ストーリーテリング力やデータ活用力を磨く努力が求められます。
ものづくりの現場が進化するためには、「改善の本質はみんなで見えることであり、みんなで納得すること」です。
この意識変革こそが、バイヤーもサプライヤーも、現場も経営も、業界全体が新たな地平線を切り拓く鍵となるのです。
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