投稿日:2025年10月7日

プリント後のブロッキング防止に有効な積層条件と離型紙管理

はじめに:プリント後の「ブロッキング」問題と現場のリアル

プリント工程を担う生産現場で、「ブロッキング(貼り付き)」は避けて通れない悩みの一つです。

美しい発色や高機能を持つコーティングフィルムでも、積層や保管の工程で思わぬ貼り付きが発生すれば、歩留まりを損ない、後工程の生産性にも大きく響きます。

昭和から続くアナログ的な管理ではトラブルが絶えず、現場担当者は日々「なぜ今日も貼り付いたのか」と頭を抱えます。

本記事では、プリント品のブロッキングトラブルを未然に防ぐ「積層条件」と、業界で特に見落とされやすい「離型紙(剥離紙)管理」のリアルな実践ノウハウを、多くの現場経験から分かりやすく解説します。

製造業で働く方、新人バイヤーを志す方、サプライヤーの方が適切な提案を行うヒントとなる現場目線の記事になっています。

ブロッキング防止の基礎:なぜプリント品は貼り付くのか?

現場で「ブロッキング」とは、加工品同士(例えばシートやフィルム)が積層保存された際、面同士が密着し離れにくくなる現象を指します。

プリント工程では、インキが未乾燥だった、積層圧が高かった、温度・湿度が高かったなど、微妙な環境や扱い方が「ブロッキング」に直結します。

金型、インキ、基材フィルム、そして搬送工程やストック方法にまで、幅広い要因が影響します。

この「些細な違いが大きな不良へと跳ね上がる」点が、アナログに支配された業界で問題が根深くなりやすい理由です。

ブロッキングによるダメージとは何か

貼り付きの強さによっては、剥がす際にプリント面が剥離・欠損したり、シートが歪む、汚れが転写する、という致命的な不良になります。

ダウンタイムや検査、再加工コストも発生し、現場のモチベーションも下がります。

ですから現場でも「たかが貼り付き、されど貼り付き」として、対策に本腰を入れる必要があるのです。

積層時の「条件」見直しがブロッキングを防ぐ鍵

多くの工場では、製造計画の都合上、インキ面を下にしたまま積層したり、急速冷却・高温放置したり、さまざまな保存方法が現場の都合で行われています。

このとき「積層条件」そのものを細かく見直すことで、不良は劇的に減らせます。

現場で即実践できる積層条件改善のポイントを具体的にご紹介します。

1. インキの完全乾燥の見極め

「乾いているはず」との思い込みで積層されたプリント品は、極微量の未乾燥成分で簡単に貼り付いてしまいます。

目視や指触チェックでなく、実際のインキの「乾燥時間」「硬化度」テストをおすすめします。

乾燥炉や自然放置の条件も見直し、入庫前には必ず「抜き取り剥離テスト」を地道に積み重ねましょう。

2. 積層数量の厳格な管理

一度に積み上げるプリント品の枚数を減らすことで、下層品への圧力負荷や温度上昇による貼り付きリスクが激減します。

「一山50枚まで」「20kg以下」など、自社品/環境に適したガイドラインをロギングし、現場に周知徹底します。

大量生産現場では「積層カート」「シート間隔材」の活用も積極導入しましょう。

3. 保管・搬送時の湿度と温度管理

湿度60%以上、温度25℃を超過する現場では、インキ面だけでなく基材自体の軟化や表面結露も起こり易くなります。

積層室は常時空調化、湿度計を活用し、乾燥工程後は必ず「温度同調」してから積層・出庫するルール化が効果的です。

季節変動や夜間保管のケーススタディも点検しましょう。

4. 物理的積層方法の工夫

プリント面同士の直積みは貼り付きリスクが最大です。

間紙やシート状P.E.フィルムなどの「間隔材(セパレータ)」を挟み、物理的なインキ面同士の接触を避けるだけでも、不良は顕著に改善します。

また自動化搬送(ロボットピッキングなど)でも、積層位置ズレを最小化するジグやガイド治具の併用を怠らないことが大切です。

離型紙(剥離紙)管理で差がつく品質安定

積層時に多用される「離型紙」の管理不足による不良も見逃せません。

現場では余った離型紙をむやみに再利用し、想定外の貼り付き・インク転移・ゴミ混入を誘発するケースが後を絶ちません。

高品質な生産現場実現のためには、「離型紙」の扱いを徹底的に見直すことが重要です。

1. 離型紙の種類選定(ミスマッチを避ける)

離型紙は材質(上質紙・クラフト紙・PETなど)や表面処理(シリコーン・フッ素等)が異なります。

同じ「剥離紙」でも表面エネルギーの違いで貼り付き具合は大きく変化します。

プリント品の材質・インキとの相性を十分に検証し、「最適な離型紙×プリント品」マッチングテストとロットコントロールを重視してください。

2. 離型紙の管理方法(保管・清掃・静電対策)

高温高湿・直射日光を避け、専用ラックや密封容器での保管を徹底しましょう。

離型紙の表面は意外と「繊維ゴミ・埃・手脂・静電気塵」を吸着しやすく、特に静電気が多い工場では、「帯電防止対策」として静電気除去ブラシやエアブロー清掃も効果的です。

また、再利用はなるべく控え、どうしても使う場合は検査を通してからにしましょう。

3. 使用後のトレーサビリティ(ロット管理)

離型紙のロットNo.や入庫・使用実績をきちんと記録することで、不良発生時の原因特定、及び仕入先との交渉もスムーズになります。

不良が発生しやすい部分はサンプリングし、剥離テストや耐熱性・耐湿性のチェックも定期的に行いましょう。

デジタル化で「見えるブロッキング管理」へ

IoTやAIを活用した新たな積層・離型紙管理も、今後の脱アナログ現場で注目されています。

積層時の温度・湿度・圧力をリアルタイムで記録し、ブロッキング発生トレンドの自動解析、離型紙の履歴管理、エラー通知などの仕組みが実際に稼動している現場は、現状まだ一部です。

ですが、「デジタルな履歴×アナログな現場感覚」によるハイブリッドな改善活動こそが、今後の現場改革の鍵を握るでしょう。

サプライヤー・バイヤーが知るべき業界の「べき論」

現場で当たり前になっている積層・離型紙の扱いには、「それ本当に最適?」と思う点も多々あります。

全て現場任せ、ベテランの勘と経験に依存した作業フローは、変化の激しい現代生産現場には通用しません。

バイヤーやサプライヤー担当者は「現場のリアル」を知り、客観的根拠と見える化された業務標準を持つことが、顧客から信頼されるパートナーになる第一歩です。

また、不良発生時は「相手だけの責任」とせず、自社の積層・離型紙管理工程も同時に見直し、原因追求を共同で行う姿勢が重要です。

まとめ:総合的な管理でブロッキングはゼロへ近づく

プリント後のブロッキング防止には、

– インキの完全乾燥管理
– 適切な積層圧・数量・物理的積層法
– 離型紙のマッチング選定・保管・履歴管理
– 積層環境(温度・湿度)の定期点検
– デジタル活用による見える化

の全方位型アプローチが欠かせません。

一時のパッチ(対症療法)ではなく、「なぜ貼り付くのか」「なぜ管理が雑になるのか」と根本原因を多面的(ラテラル)に考えることが、現場力とQCD(品質・コスト・納期)両立の礎になります。

この記事が、製造現場に働く方、取引を考えるバイヤーやサプライヤーの皆様にとって、持続的生産性向上のヒントになれば幸いです。

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