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スマートフォンのガラスが割れにくくなる化学強化と研磨技術

目次
スマートフォンのガラスが割れにくくなる化学強化と研磨技術
スマートフォンが私たちの生活に欠かせない存在となって久しいです。
しかし、誰もが経験する困りごとがあります。
それが、落下や衝撃による「ガラス割れ」です。
「なぜスマートフォンのガラスは割れるのか?」
「どうすれば割れにくくできるのか?」
この疑問に対して、製造現場の視点から化学強化と研磨技術という2つのキーワードを中心に、深く掘り下げて解説します。
なぜスマートフォンのガラスは割れるのか?
ガラスの特性と脆さ
一般的に使われているガラスの多くは「ソーダライムガラス」と呼ばれるもので、透明度や成型性に優れる一方で、衝撃や曲げ応力に弱いという欠点を持ちます。
これは、ガラスが無機材料であり、分子配列が不規則なため、外部からの力が集中しやすくクラック(微細なひび割れ)が入りやすいためです。
スマートフォンのガラスにしばしば選ばれるのが「アルミノシリケートガラス」です。
このガラスは、ナトリウム(Na)やアルミニウム(Al)を主成分にすることで、より強度を上げる工夫がなされています。
それでも、落下時の衝撃などでクラックが入れば、簡単に割れてしまいます。
工場目線で見た割れの原因
製造現場の管理者として、スマートフォンガラスの割れの主な原因は、
1. 外部衝撃による局所的な応力集中
2. 製造時の微細な傷や異物混入
3. 組立工程での加重・圧迫
に集約されます。
特に、製造ラインでわずかな傷が付着すると、その箇所が割れの発生源となりやすく、品質管理の観点から工程ごとに詳細な検査や改善が徹底されています。
化学強化ガラスとは何か?
化学強化のメカニズム
割れやすさの克服策として、“化学強化ガラス”が登場しました。
代表的なのが「イオン交換法」と呼ばれる加工方法です。
アルミノシリケートガラスを高温のカリウム塩(KNO3など)に浸し、表面のナトリウムイオンとカリウムイオンを交換させることで、表層に圧縮応力層が生じます。
表面に強い圧縮応力が発生すると、外部から加わる引張応力を相殺するため、クラックの発生や進展を防ぎ、ガラスの割れにくさが大幅に向上します。
これが、いわゆる「化学強化ガラス」であり、「ゴリラガラス」や「ドラゴントレイル」といった商標製品がこの技術を用いています。
化学強化の限界と現場課題
化学強化にも限界があります。
イオン交換はあくまで表面層に限られ、内部まで強化されるわけではありません。
そのため、深い傷や大きな衝撃には耐えきれず、結局割れてしまうこともあります。
現場では均質な強化層を均一に作るため、温度管理・液濃度・処理時間の徹底が必要です。
さらに、強化後の研磨処理や組立工程で新たな傷がつくと、強化の意味が薄れてしまいます。
ガラス研磨技術が果たす役割
表面粗さの低減と割れ防止
化学強化の効果を最大限に引き出すもう1つのカギが「ガラス研磨技術」です。
ガラス表面には、製造工程で目に見えない微細な凹凸や傷が必ず存在します。
これら表面の凹凸=「表面粗さ」が大きいほど、そこからクラックが発生し割れやすくなります。
逆に、ナノレベルにまで表面を平滑化できれば、強化ガラスの持つ強度を最大限に発揮できるのです。
現場での研磨工程
ガラスメーカーやスマートフォンのサプライヤーでは、研磨工程の自動化と高度化が進められています。
たとえば、
1. 機械研磨:粗研磨で大まかに表面を整形
2. 精密研磨:細かい研磨剤で表面の粗さを低減
3. 化学的機械研磨(CMP):化学薬品と物理的な研磨を組み合わせることで、ナノオーダーの平滑な表面を形成
といった多段階のプロセスを経て、スマートフォン用の高品質なガラスが作られます。
現場目線では、ウエット工程での異物混入(コンタミネーション)や洗浄効率、生産タクトの最適化、研磨スラリーの品質管理など、多くのノウハウが集積されています。
アナログな現場力と、デジタルによる自動化・統計管理を組み合わせたハイブリッド型の運用が求められています。
昭和から抜け出せない課題と最新技術の融合
製造業といえば、「熟練工」の勘や経験が不可欠とされる昭和的な現場文化が色濃く残る業界です。
ガラス研磨も、一昔前までは職人技に頼る部分が多く、標準化が難しい工程の1つでした。
しかし、昨今は自動化ロボットやAI画像検査、ビッグデータを活用した異常検知など、デジタル技術の導入が進んでいます。
手作業のノウハウをデータ化する試みも始まり、熟練工の経験値とITが融合しつつあります。
例えば、不良品の発生原因をAIが自動解析し、工程内のどこで傷や欠陥が生じているのかを即座にフィードバックする仕組みが稼働しつつあります。
工場全体でQCD(品質・コスト・納期)のバランスを可視化しつつ、日本の現場らしい「匠の技」も活用する。
これこそが令和版の製造現場です。
サプライヤーとバイヤー、それぞれの思惑
バイヤーが求める価値とサプライヤーの課題
スマートフォンのメーカー(バイヤー)は、強度・薄さ・タッチ感度・コストを高次元で両立するガラスを常に求めています。
一方、多品種少量化や短納期化といった市場ニーズにも応える必要があり、ガラスメーカー(サプライヤー)は厳しい要求にさらされています。
バイヤー側としては、納入するガラスの物性検査データ(曲げ強度、表面硬度、傷耐性など)を自社開発基準で細かく指定し、サプライヤーに安定供給・低コスト・高品質を要求します。
中には、絶えず性能向上を求める“コストダウン圧力”も存在します。
一方のサプライヤーは、品質管理・工程改善と同時に、自動化投資や生産性向上、環境規制(脱炭素・省エネ対応)も求められます。
中国・韓国など海外勢とのグローバルサプライチェーンの競争も激しく、優れた研磨や化学強化のノウハウを武器に差別化を図っています。
バイヤー視点で知っておきたい現場課題
バイヤーを目指す方や、サプライヤーの方がバイヤーの考えを知りたい場合、以下の現場課題は知っておいて損はありません。
・化学強化層の「深さ」と「均一性」は、工程管理に大きく依存し、測定や検査のノウハウが重要。
・研磨後の表面洗浄や乾燥工程で微細な異物が残存すると、タッチパネルの不具合や歩留まり悪化のリスク。
・表面のナノ凹凸やサブミクロンレベルの傷は、外観検査AIの導入で解決しつつあるが、「不良」と「許容範囲」の基準作りがバイヤーとサプライヤー間のせめぎ合いポイント。
良質な調達は、こうした“両者の知恵と工夫のすり合わせ”の上に成り立っているのです。
今後のスマートフォンガラス技術の展望
今後、スマートフォンガラスがさらに進化すると言われています。
・自己修復型コーティング
・柔軟に曲がるフォルダブルガラス
・抗菌・防指紋機能付きの多機能化
など、ユーザー体験を一層高める新素材・新工法の開発が始まっています。
それらのコア技術となるのが、今日取り上げた「化学強化」と「超精密研磨」です。
アナログな熟練工の技と、IoT・AIなどの最新テクノロジーの融合が、日本ならではの製造現場の進化を支えています。
昭和から令和へと進化する製造現場、その最前線から得られる知見は、今後のスマートフォン産業のみならず、他の電子機器・自動車・建材などへの応用もますます広がるでしょう。
まとめ:現場目線を活かした調達・品質管理の重要性
スマートフォンのガラスが「割れにくくなる」理由には、
・化学強化による表面圧縮層の付与
・超精密なガラス研磨・洗浄技術の進化
という2つの技術革新が深く関与しています。
ものづくりの現場では、こうした加工から品質検査まで多岐にわたる技能やノウハウを持ち寄り、「割れにくい」「美しい」「加工しやすい」「歩留まりが高い」といった、バイヤーからの高い要求水準に応えています。
製造業のバイヤーを目指す人や、サプライヤーの立場で品質向上に挑戦している方は、ぜひこうした現場感覚と最先端技術の両輪で、さらなるものづくりの進化を追求していってください。
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