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織布中の油汚れ・異物混入を防ぐ糸処理と機械保全の徹底方法

目次
はじめに:繊維業界が直面する課題と現場目線の重要性
織布工場における油汚れや異物混入は、製品品質を大きく左右する深刻な問題です。
近年、グローバル市場の品質要求が厳しさを増し、不良発生によるクレームや納期遅延は自社の評価を左右します。
特に昭和時代から続くアナログな現場では、「これまで通り」で進めてしまい、気付けば時代遅れのままトラブルを繰り返すケースも少なくありません。
本記事では、約20年の工場勤務経験と、調達・品質・生産管理など多角的な視点を生かし、バイヤーやサプライヤー、現場を支える皆様が「実践できる」「納得できる」糸処理と機械保全の方法を詳しく解説します。
織布工程に潜む油汚れ・異物混入の現実
どこで油汚れ・異物は混入するのか
油汚れ・異物が混入する主なタイミングは、実は糸入荷から布の完成までの至る所に点在しています。
主な発生要因を整理すると次のようになります。
- 原糸自体の加工時残留油分
- 糸搬送・ストック中の周囲からの汚染(ホコリ、繊維くず、虫など)
- 整経やサイジング工程での追加油分や薬剤の付着
- 織機の機械潤滑油・グリスの飛散
- 現場作業者の手指・衣服からの移染
また、異物も油だけではありません。
金属片やビニール、糸玉、虫、ヘアー(髪の毛)、誤って混入した部材などが製品に入ると、不良品扱いとなり最悪の場合返品・取引停止というリスクもあります。
クレーム対応事例から見る本質
筆者自身、バイヤーや顧客から「油シミが取れない」「異物が何度も混入している」という厳しいクレームに数多く直面してきました。
調査を進めていくと、ベテランの「昔ながら」に頼った作業でチェックが曖昧だった、もしくはその場しのぎで目視検査だけに頼っていたという現場も多々ありました。
こうしたクレームは、色柄や繊細な用途(医療・自動車用・高級服地など)で顕著になり、組織的な再発防止策と現場の“腹落ち”が不可欠です。
糸処理でできる徹底的な対策
入荷時から「疑ってかかる」チェック体制を
油や異物混入防止の第一歩は、原糸(ヤーン)が工場に届いた瞬間から始まります。
書類上のスペックや仕様を信じすぎず、実物を目と手で確かめることが重要です。
- 入荷時に包装ごとランダムサンプリングで油分・異物有無を目視/拡大検査
- 油分判定紙や簡易表面テスター、UVライト照射などを活用した傾向管理
- 糸束をばらして、奥側の異物混入や結束異常も要チェック
現場で怠りがちなのが「同じロットでもバラつき有り」であることの理解です。
全量目視検査は現実的でない場合でも、定期的なサンプル抽出と記録を行い、「異常発見時の即通報ルール」を徹底しましょう。
糸のコンディショニングでリスクを減らす
織布現場の湿度や温度は日々大きく変動します。
乾燥しすぎていると静電気で繊維くずや埃を呼び寄せ、逆に湿度が高すぎるとカビ臭やヤケ、油移りのリスクが高まります。
糸保管エリアでの空調・加湿管理は、機械的なメンテナンスと同等に重要視するべきです。
また、糸自体のコンディショニング(ほどき残しや解れを防ぐリワインド、不要な糸くず落とし、静電気除去)をルーチン作業とし、できるだけ現場全体に標準化しましょう。
作業者の「人為的混入」も意識する
油汚れ・異物混入は、多くの場合「人の気の緩み」「見逃し」によるものです。
現場の服装規定や手洗い・作業台清掃、腕時計や装飾品着用禁止などの基本ルールを掲示し、定期的な指さし呼称やチェックリストを活用してください。
定期的な教育(現物での発生事例共有、なぜダメかを技術的に説明)も効果的です。
機械保全で油汚れ・異物混入を最小限にする
給油ポイントの「見える化」と異常の早期発見
織機やワインダー、整経機など、糸に直接触れる箇所周辺の潤滑ポイントは徹底管理が必要です。
近年ではチェックシート化・色分けステッカー貼り・QRコードでの異常履歴管理といった手法が増えています。
油受けの増設やオイルキャッチャー(使い捨て吸着マット、ドレンカバーなど)も手軽に導入できる工夫です。
異常漏れは機械の振動音やモーターの発熱、油膜の切れ目などからも初期兆候が分かります。
ベテランの「勘」も重宝しますが、温度センサや簡単な画像分析カメラなどデジタルも導入し、“アナログ+デジタル”両面で早期対応できる仕組みづくりがカギです。
潤滑油の質と機械の状態変化を把握する
油種が古い、汚れている、粘度が落ちているなどの見逃しは混入リスクを高めます。
油管理のトレンドとして、下記管理手法が推奨されつつあります。
- 潤滑油の交換周期管理や押印記録(管理台帳化)
- 定期的な油サンプル採取・分析
- 品質要求の高い織物では、“NC油”や無添加タイプへ切り替え
- 主要箇所のオイル循環路洗浄や、古いグリス除去
また、納期直前など忙しい時ほど、油や部品交換の手間を省きやすいものです。
そうしたマインドセットを現場全体で見直し、短期目線でなく長期で「止まりにくい現場」「不良を出さない現場」作りを志向しましょう。
バイヤー・サプライヤー視点で考える本質的な管理ポイント
「仕様書どおり」の限界と現場の実現力
多くのバイヤーは、図面や仕様書上で「油分量ppm以下」「異物〇個未満」と規定しています。
しかし、現実には規定値ギリギリの管理や検査すり抜けが常態化しやすく、「実際に使う段階で問題が噴出する」事態も多いのが実情です。
現場の強みは“生の情報”や“即時対応力”です。
定期的に現場同士で現物を見ながら、
「このコンマ何ミリの異物は現場のどこで必ず発生するのか」
「油染みが出やすい工程はどこか、ヒューマンエラー発生の要因は」
まで“丸裸にする”ことが、中長期の品質安定につながります。
デジタル化・省人化だけでは解決しきれない理由
近年は画像処理やAI判定機を導入する現場も増えています。
しかし、油の種類や異物のバリエーションによっては見逃しや誤検出も起こりえます。
定期的な画像ライブラリの更新、現場オペレーターによる機械判定の“目合わせ”が重要です。
「すべて自動化すれば大丈夫」という発想だけでは、アナログ現場のノウハウごと失われてしまい、結局“品質トラブル”の温床になりかねません。
「クレームゼロ」ではなく「早期発見と再発防止」を徹底する
どれだけ管理を徹底しても、全数ゼロとはできません。
重要なのは「問題兆候の早期発見」と「なぜ起きたか」「同じ失敗を繰り返さない仕組み」を現場で作ることです。
日報への簡易異物・油汚れ記載ルールや、現物ラボ保管、サプライヤー巻き込み型のカイゼン活動といった“仕組み化”を実践して継続することこそ、本質的な強い現場・信頼される調達網作りとなります。
最後に:現場でできる小さなことから変革を
油汚れ・異物混入対策は一朝一夕に実現できるものではありません。
昭和のやり方そのままに甘んじていては、将来抜本的なクレームや損失に直結します。
本記事でご紹介した「糸処理の見える化」「人為的要因への目線強化」「デジタルとアナログの融合」「現場内連携」による徹底的な管理の実践こそが、現代の繊維業界で生き残る最適解です。
日々の小さな変化・気付き・カイゼンを、現場だけでなく管理部門・調達・バイヤー・サプライヤーの垣根を越えて展開し、「日本のものづくり力」をもう一度、現場から底上げしていきましょう。
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