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紙皿の形崩れを防ぐパルプ配合比とプレス圧制御

目次
はじめに:紙皿製造の現場で直面する課題
紙皿は日常のイベントや飲食店、ケータリングなどで欠かせない存在です。
しかし、その製造現場では品質保持、ごみ削減の観点だけでなく、次世代の製造業としての自動化要求やSDGs対応の観点からも、さまざまな課題に直面しています。
特に、紙皿の「形崩れ」は市場の信頼を失う大きなリスクです。
この問題は、パルプの配合比率やプレス工程における圧力管理と深く関わっています。
本記事では、現場の生産性と品質維持を両立する実践論を、私自身の製造現場経験と業界動向を交えながら、深掘りしていきます。
紙皿製造における形崩れのメカニズム
形崩れの主な要因
紙皿の形崩れは、主に次の2つに由来します。
ひとつは原料パルプの特性と配合比、もうひとつは成形時のプレス圧力です。
パルプの種類や割合が適切でなければ、強度や耐水性が不十分となり、わずかな力や水分で変形してしまいます。
また、プレス圧が高すぎても低すぎても、均一な密度や形状が得られず、不良品増加や機器のトラブルを招きます。
「適正配合」と「最適圧」の業界論理
昭和の時代から、熟練工が「この配合なら大丈夫」と経験値で判断してきた現場も多いでしょう。
また、プレス圧に関しても”ハンドルの回し加減”というベテラン特有の勘が幅を利かせています。
ただし、昨今はサプライチェーンのグローバル化やエンドユーザーの品質要求により、こうしたアナログ文化の限界が露呈しつつあります。
理論に基づいた設計と工程管理が必須の時代になっています。
パルプ配合比の実践的な最適化手法
原料パルプの特徴を見極める
パルプには広葉樹パルプ(短繊維・パルプ)、針葉樹パルプ(長繊維・パルプ)、リサイクルパルプがあります。
広葉樹パルプは滑らかで美しい仕上がりになる反面、強度は劣ります。
一方、針葉樹パルプは強度が高いですが、コストは上がる傾向があります。
リサイクルパルプは環境面で評価されますが、品質にバラつきが生じやすくなります。
用途(例えば温かい料理用か、冷たいもの用か)やターゲット市場によって、これらをどう配合するかが品質とコストを両立する鍵です。
最適配合比を導く現場データの活用
現場ではまず、過去実績データを収集し、「どの配合で、どの程度の形崩れや強度不良が発生したか」を分析しましょう。
たとえば、針葉樹パルプを20%から30%に増やした場合、どのくらいコストアップし、歩留まり・耐水性・形状保持率が変わったかを定量的に評価します。
最近ではAIやIoTを活用し、配合比率・水分量・成形温度など複数パラメータの最適解を導く企業も増えています。
これは熟練工の勘をデータサイエンスで”再現”する、新たな現場力です。
プレス圧制御の理論と現場応用
なぜ「圧」の管理が重要なのか
パルプシートを成形する際のプレス工程は、「密度」と「凹凸の再現性」に直結します。
強すぎれば原紙が割れやすくなり、弱すぎれば壁面や底面の耐久性が確保できません。
また、過度な熱をかけることで逆にバインダー成分が分解し、形状が維持できなくなる危険もあります。
プレス圧・保持時間・温度の三位一体制御
最新の成形機では、油圧・空圧シリンダーの圧力をPLC(プログラムロジックコントローラー)でリアルタイム制御し、温度と圧力、保持時間の三位一体で管理しています。
例えば、
– 針葉樹パルプ比率が高い配合では、圧力をやや高め、保持時間を短縮
– リサイクルパルプ多めの場合は、熱を高めて水分の脱水性を向上させる
といった調整が有効です。
昭和的な手動ダイヤルではなく、現代は各ロットで製品試験片を事前成形→物性検査(厚み、破断強度、変形率)→データフィードバックによる数値設定を自動化するのが効率化の決め手です。
異常時のフィードバックループ構築
温度、圧力、成形品の寸法・形状不良、原材料のロット違いなど、突発的な変動にどれだけ素早く対応できるかが現場力の真髄です。
IoTセンサーやAI異常監視システムを導入し、異音・異常加熱・圧力ムラが発生した瞬間、自動でラインを停止させる保護機構の設計も重要です。
こうした工程制御の知見は、現場での「もしも」に備える意味でもノウハウの蓄積が価値になります。
サプライヤー・バイヤーの視点から見た最適生産の攻防
バイヤーが注目する品質・コスト・サステナビリティ
調達・購買部門のバイヤーは、単にコストダウンを志向するだけでなく、近年では「SDGs対応」「カーボンニュートラル」「トレーサビリティ」も強く意識しています。
・配合パルプにFSC認証材や再生材をどれだけ含めているか
・製造工程のCO2削減努力は見える化されているか
・歩留まりや廃棄物発生の管理体制はどうか
こうした観点から、単純な価格交渉ではなく「一緒に工程改善しサプライチェーン全体で競争力を高める」方向性が年々強まっています。
サプライヤーが差別化するための実践例
サプライヤーは、納入仕様書に記載されている”最低基準”をただ守るのでは、製造業として生き残れません。
たとえば、プレス成形設備のIoT化で不良低減した実績や、独自の再生パルプ配合法によるコスト・サステナビリティ両立の事例を持つこと。
あるいは、自社内での生産現場可視化ツールによって「異常時も工程データで即時説明できる体制」など、前向きな提案力が継続受注のカギとなります。
常識を打ち破る!未来のラテラルシンキング
形崩れ対策の「外れ値」探索
紙皿の形崩れを防ぐ王道ばかりに固執せず、他業種の知見も応用するラテラルシンキングが、新たな突破口になります。
たとえば、
・食品用ラップ材技術(微細な多孔質構造)を応用し、パルプ間の結合強度をナノレベルで向上
・自動車部品のプレス成形ノウハウを紙皿製造に応用し、金型のメンテナンス周期短縮や清掃工程の自動化
・DX技術で世界中の製造ラインの稼働状況をリアルタイム比較し、最適配合の”グローバルレシピ”を確立
自社の枠、業界の枠を超えた新しい発想が、成熟市場での生き残りを左右します。
まとめ:紙皿の価値を高める現場ドリブンの挑戦
紙皿の形崩れ防止には、パルプ配合比の最適化とプレス圧制御の高度化が不可欠です。
その具体的手法は、素材科学・工程制御・品質データの組み合わせによる”サイエンスと現場力の融合”です。
昨今のSDGs潮流やDX推進により、これまでの常識が大きく変わっています。
現場を知り抜いた人材が、アナログからデジタル、単純作業から高度な工程デザインへとシフトすることで、付加価値を最大化できます。
「紙皿なんて、どこでも同じ」と言わせないために。
バイヤーもサプライヤーも、現場の知恵と新技術で、次の時代のものづくりに挑戦していきましょう。
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