投稿日:2025年10月15日

缶詰ラベルのズレを防ぐ糊粘度と貼付タイミング制御

はじめに:なぜ缶詰ラベルのズレが問題なのか

缶詰のラベル貼付時、わずかなズレが見た目の印象を大きく左右し、商品の価値や信頼性に直結します。

特に日本の製造業においては、細部にまでこだわる品質管理がブランドイメージを支えています。

しかし、現場ではラベルのズレが根強く発生し続けています。

「昭和時代から変わらないアナログ工程のまま」や「微調整でごまかしている」現場も多く、自動化や見える化が叫ばれる中、いまだ根絶には至っていません。

この記事では、糊(のり)の粘度調整や貼付タイミング制御など、根本的かつ現場目線の課題解決方法について、深堀りしていきます。

缶詰ラベル貼付の基本工程とズレ要因

缶詰ラベル貼付の流れ

缶詰の表面にラベルを貼る工程はおおむね以下の順序で進みます。

1. 缶詰の表面に糊を塗布
2. ラベル供給機から所定位置にラベルを送り出す
3. 糊面とラベルを接触させる
4. 圧着ローラーなどで密着させ固定

この一連の動作のいずれかでわずかなズレが発生すると、ラベルの傾き、ずれ、浮きといった品質不良が発生します。

主なズレの要因

ラベルのズレが起こる原因を深く掘り下げてみましょう。

– 糊の粘度が合っていない(柔らかすぎる/硬すぎる)
– 糊の塗布量が不均一
– ラベル供給タイミングの誤差
– 缶体とラベル供給装置の連動不良
– 缶詰自体の搬送精度のばらつき
– ラベル素材自体の寸法精度・伸縮
– 温度・湿度管理の不備による粘度変化

製造現場では、これらが複雑に絡み合って問題を深刻化させています。

とくに中小メーカーでは、現場作業者の「勘」や手作業による微調整で運用されていることが多く、再現性の高い安定した品質を維持するのが難しい状況です。

糊粘度の考え方と調整ポイント

そもそも「適切な糊粘度」とは

適切な糊の粘度とは、ラベルが缶体表面に均一に密着し、且つ貼付工程で「余分なズレ」を生じさせないバランスのことです。

粘度が低すぎる(さらさら)は、すぐに流れてしまいラベルが滑りやすくなります。

一方、粘度が高すぎる(どろどろ)と、糊が塊となって均一に伸びず、ラベルの一部だけが過度に密着、あるいは圧着時にズレの元となる場合があります。

また、糊が乾ききる前の「貼付可能な持ち時間」も粘度設定に影響します。

製造現場では季節や気温・湿度によって粘度が変化しやすいため、毎日同じ設定で運用できるとは限りません。

粘度管理の実践アイデア

1. 糊の粘度計を導入し、毎ロット数値で管理する
2. 気温・湿度データと粘度調整記録を紐付け、適正条件を「見える化」する
3. 糊メーカーと連携し「標準温度帯での適正粘度」&「季節変動時の調整ポイント」をマニュアル化する
4. チェックシートやサンプルワーク(写真付き)で作業者間のばらつきを減らす

ベテラン作業者頼みから脱却し、現場データに根ざした「粘度管理の仕組みづくり」は大手メーカー・中小サプライヤー問わず重要です。

また、粘度の測定そのものを自動化し、「品質の数値化」を進める動きも現場で進み始めています。

貼付タイミングの精密制御がカギを握る

ラベル供給と缶体搬送の同期化の重要性

ラベルの供給タイミングがわずかでもズレてしまうと、どれだけ糊や缶体が最適であっても、貼付位置のバラツキは避けられません。

特に高速自動ラインでは「1mm,0.1秒」のズレが、目立つ品質不良の大きな原因になります。

ここで重要なのが、ラベル供給装置と缶体搬送機構の同期精度の確保です。
– 光電センサー、エンコーダでの位置・タイミング監視
– PLC制御やサーボモーターによる動作制御
– エラー発生時の自動停止および履歴管理
– 品質不良履歴の自動記録とフィードバック

昭和の現場でありがちな「熟練者による手作業のタイミング調整」から脱却し、デジタル技術やIotセンサーでの自動監視が、近年の標準となりつつあります。

設備メーカーやSIerとの連携により「見える化」「自動補正」できる体制づくりが今後のカギです。

段取り替え・金型交換時こそ要注意

缶サイズやラベル種類の段取り替え時は、タイミングずれの再発生が非常に多いです。

このとき作業標準や品質確認ポイントが「経験値」に頼っている現場は、どうしても不良が再発します。

– 段取り替え時の「糊粘度試験」「繰り返しテスト貼付」の実施
– 設備側での段取り情報記録、自動設定呼び出し
– オペレーター教育、ヒヤリハット事例のフィードバック

こうした工夫で、段取り替えごとのズレ発生リスクを下げることが可能です。

バイヤーとサプライヤーの現場実態ギャップ

サプライヤーが知っておきたい「バイヤーの悩み」

バイヤー(調達購買担当者)は、こうした「現場の小さな品質問題」がエンドユーザーの信頼損失に直結することを痛感しています。

特に食品や消費財メーカーでは、ほんの僅かなラベルズレでも
– クレーム率急増
– 店頭陳列時のブランド毀損
– コンプライアンス上のトラブル
といった深刻な事態になりかねません。

そのためバイヤーは「安定供給」「安定品質」の要求を強めていますが、サプライヤー側が思う以上に、現場課題への深い理解を求めています。

不良の再発生や更なる改善策を自主提案できるパートナーが選ばれる傾向が高まっています。

サプライヤーが発信すべき提案姿勢

サプライヤー側には、下記のようなアプローチが効果的です。

– 「糊粘度」「貼付タイミング」など現場品質データを数値で示し、技術情報を“見える化”して報告
– 季節変動や新ラベル導入時の品質リスクを事前に整理、バイヤーと共有
– 設備の段取り替えや自動監視強化の事例を提案
– クレーム未然防止のための「現場視点での提案型活動」

旧来型の「言われた通り納入」だけでなく、「現場でこんな改善をしました」といった提案力が、お互いの信頼向上や長期契約につながっています。

製造業のアナログ業界こそ、現場目線+データ連携で“昭和型バイヤー‐サプライヤー関係”から一歩進んだ協業が求められています。

デジタル化・自動化による革新事例とこれからの動向

事例:ラベルズレ撲滅プロジェクト

実際に、缶詰大手メーカーで実施されたプロジェクト事例を紹介します。

– 糊粘度を自動測定・制御するセンサーを導入し、標準偏差の値でライン管理
– サーボ制御のラベル供給装置を導入し、動作ごとにタイミングフィードバック
– 不良検出カメラでズレ発生時に即座に履歴保存し、不良要因を毎日見直す
– 作業者の段取りごとの「ひと声報告ルール」と、「数値でトラブル傾向を見える化」

結果、ラベルズレ由来の品質クレームが半年で90%削減され、定量的な効果が得られました。

現場の手作業・勘ではなく、センサー&データ連携、自動補正の“新しい現場”へと移行しつつあります。

今後の業界動向

– IoT・AI技術による画像監視、ビッグデータ解析での不良傾向抽出
– 糊自体の高性能化(温度・湿度依存性の低減)
– サプライヤー‐バイヤー間での「品質保証データの自動共有」
– 保守性・段取り容易性を踏まえた設備開発

競争力を支えるのは「現場×デジタルのハイブリッド力」。

日本の製造業、“昭和型の勘と経験”+“次世代の自動化・可視化”の融合が、缶詰のみならず全分野への波及が期待されています。

まとめ:現場視点を最優先にした、継続的な改善のすすめ

缶詰ラベルのズレ対策には、単なる操作手順見直しや人頼みの調整だけでなく、糊粘度の厳格管理、貼付タイミングの制御精度向上が必須です。

数字と現場の声をリンクさせた「仕組み化」「データ化」「自動化」が、サプライヤー・バイヤー間の新たな信頼製造に欠かせません。

今後も昭和的アナログ思考と最先端デジタル技術をつなぐ「ラテラルシンキング」で、現場起点の持続的改善を進めていきましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。

こんな現場ナレッジを、現場で働く皆さん・これからバイヤーを目指す方々へ役立てていただけますと幸いです。

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