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靴底の摩耗を減らす樹脂配合と射出圧縮温度のバランス

目次
靴底の摩耗が抱える課題と製造現場の現状
靴底、すなわちアウトソールは、消費者にとって“靴の寿命”を左右する決定的な部位です。摩耗が早ければ、どんなに快適な履き心地やデザインを誇る靴でも早々に買い替えを迫られてしまいます。
しかし靴の製造業界を俯瞰すると、一貫して昭和的な「長年の勘と経験」を重視する企業が多い現実があります。実際の現場では、未だに職人技による微調整や、「この樹脂配合がうちの秘伝」「押し込み温度はこのあたりが標準」というアナログな管理が根強いです。
世界的には持続可能で高性能な靴づくりの要求が高まる中、現場力とデータ解析の両輪で摩耗性能を高める改善が急務になっています。本記事では、「樹脂配合」そして「射出圧縮温度」の関係性にスポットを当て、実践的な知見と革新的なアイデアをご紹介します。
靴底の摩耗(アウトソールの磨耗)要因を深く掘り下げる
摩耗とは何か?表層だけではない「材料内部」のすり減り
摩耗とは、使用中に生じる接地面の物理的な削れを指します。アウトソールでは、単なる表面のゴムや樹脂の削れだけでなく、「材料内部」の繊維や充填材の剥離、粒子レベルの微細な破壊も進行しています。
現場目線から言えば、「硬いほど減らない」という単純発想は通用しません。硬化しすぎると逆に割れ・欠けが発生しやすくなります。一方、柔らかいと摩擦熱や引きずり動作で“スリップ摩耗”が急激に進みます。
摩耗に影響する5大因子を整理
1. 樹脂(ゴム)材質自体の耐摩耗性
2. 耐熱性(摩擦熱で軟化・劣化しないか)
3. 充填材やフィラーの種類・分散性
4. 成形状態(内部の気泡や未熟な混錬)
5. 使用環境(水濡れ・油汚れ・路面粗さ)
これらの中でも、製造現場が主にコントロールできるのは「樹脂配合」と「成形条件(射出圧縮温度)」です。以下、両者の関係性や実践的改善例を見ていきます。
摩耗を減らす樹脂配合—古典的手法と最新トレンド
従来の現場知見—定番配合とその限界
長年、おおくの製造現場で使われてきたのは、EVA樹脂や合成ゴム、TPU(熱可塑性ポリウレタン)などです。ここにカーボンブラックやシリカ、カルシウム系のフィラーを適量添加することで、適度な硬度やコストバランスを調整していました。
昭和世代の職人からは「カーボン含有比を高めると黒ずむ」「フィラー過多は成型不良の元」など、経験に基づく“配合レシピ”が重宝されてきました。ただし、こうした感覚的配合では、「ムラ」や「想定外の耐久性低下」が発生しやすく、再現性の柱になりません。
現代の先進配合—高性能フィラーやナノ分散技術の活用
近年は、摩耗試験データを数千回も取得し、AI解析する事例が増えています。その中から浮き彫りになってきたのが「ナノレベルで制御された複合材料」の有効性です。
例:
– シリカの粒径を超微細化し、高分散化したフィラー配合
– 疎水性ポリマーやブレンドポリマーの選定・改質
– 生分解性ポリマー+天然由来粒子の環境対応型アウトソール
このような手法は、たんなる“摩耗の耐久性”だけでなく、「スリップ防止」「静電気防止」「リサイクル性」といった付加価値も生み出しています。
また、「現場での再現性」確保のためには、原材料メーカーと密接な連携体制をとり、毎ロットごとの特性調査まで徹底することが肝要です。現場と開発部門、原材料調達担当者が三位一体となることで、狙い通りの成果に近づけます。
射出圧縮温度—摩耗特性との相関を科学する
なぜ成形温度が摩耗に効くのか?現場での事例紹介
射出成形では、材料が加熱され型に流し込まれるわけですが、この「温度プロファイル」がアウトソールの分子配列・結晶化度・フィラーの配向性などに強く影響を与えています。
– 低すぎれば:樹脂の流動性不足→未充填・気泡→脆弱なアウトソール
– 高すぎれば:分子配列がランダムになり、フィラーが集まって分散悪化→表面が粗く、実用摩耗に弱くなる
たとえばTPU系では、180~230℃の範囲で最適温度を探ることが王道ですが、最新の生分解性樹脂やハイブリッド素材では、この温度帯が細かく変動します。摩耗率測定に加え、衝撃分散性や屈曲耐久も加味して現場内で徹底検証する姿勢が求められます。
生産現場のアナログ管理とデジタル化の攻防
未だ「日々の成形品を目視・触感チェック」「不良が多い時は温度をちょっとずつ上げ下げ」—この昭和的管理も根強いですが、最近では
– サーマルイメージャーで金型温度分布の見える化
– IoTデバイスによる各工程条件の完全ログ管理
などデジタル化が進行しています。
この「データと勘」のハイブリッド管理の中で、どの温度帯が「摩耗特性最大化」に最も寄与するかを“定量的に”可視化することこそ、現場力を次のレベルに引き上げるカギです。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点を理解せよ
バイヤーが靴底に求める本音—コスト・品質・サステナビリティのバランスで悩む
バイヤー(調達担当者)は、ただ安価なアウトソールを求めているわけではありません。
– 摩耗耐久(アフタークレーム低減)
– 環境配慮(リサイクル材/生分解性材)
– コスト競争力
の“三本柱”でサプライヤー選定を進めます。
近年のRFP(提案依頼書)には、「具体的にどれだけ摩耗率が低減できるか」「新規エコ素材の安定供給可能か」といった、新たな定量要求が増えてきています。
サプライヤーに期待される新たな価値提案とは?
サプライヤー側も従来の“価格競争”だけでは、バイヤーから選ばれづらくなっています。
– 摩耗データの見える化と実証試験実施
– 製造現場での安定成形ノウハウ提供
– 持続可能な素材開発、新規素材安定調達力
– メーカーとの協働開発(共同研究・QCD改善プロジェクト)
こうした総合的な「価値組み立て」が差別化のポイントです。材料メーカーと現場の成形現場、品質管理部門…これらサプライチェーン全体の一体運用が、ロングランの受注獲得につながっていきます。
まとめ:靴底の摩耗低減は、現場×科学×共創が鍵を握る
靴底の摩耗対策は、単なる材料選定や成形条件の一元管理だけでは成し得ません。現場の「職人勘」もデータ解析も、配合の深化も成形現場のプロセス改良も、すべてが一体となり革新を生みます。
従来の昭和的現場力に、情報科学(IoT・AI解析)やサステナブル素材といった“新地平”を組み合わせ、「なぜ摩耗が減るのか」を根本的に問い続けるラテラルシンキングこそが、成熟しきったアナログ業界の壁を乗り越える突破口です。
バイヤー、サプライヤー、製造現場の三位一体で、アウトソール性能の新たな地平線を切り拓きましょう。
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