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缶ジュースのラベルが剥がれない糊粘度と貼付圧のバランス

目次
はじめに
缶ジュースのラベル貼付工程は、多くの製造業従事者にとって一見すると単純に見える作業です。
しかし、その裏側にはラベルが剥がれないための微妙な技術的バランスが存在します。
糊(接着剤)の粘度や量、貼付時の圧力、ラベルや缶表面の状態、さらには温度・湿度まで、細かな要素が絡み合い“簡単には語れない深遠な世界”が広がっています。
本記事では、現場経験をもとに、なぜラベルが剥がれずにしっかりと貼り付くのか、その糊粘度と貼付圧に焦点をあて、実践的なノウハウや業界のアナログな側面を交えながら解説します。
1. 缶ジュースラベル貼付工程の全体像
1-1. 基本プロセスの流れ
缶ジュース製造ラインでは、飲料が充填された後、表面洗浄と乾燥を経てラベル貼付工程に入ります。
この流れは一貫生産の効率化を目指しますが、一方でラベル貼付の精度が最終的な製品品質に直結する重要なポイントでもあります。
1-2. ラベル貼付の失敗事例
ラベルが剥がれてしまう、あるいはシワ寄りや気泡が入る等のトラブルは現場でも頻発します。
特に夏場の湿度上昇や缶表面の結露、糊の塗布ムラ、糊の劣化による粘度変化により、ラベル品質は大きく左右されます。
2. 糊粘度 ― 適正な数値は「正解」ではなく「現場解」
2-1. 糊粘度の基礎知識
糊粘度はcP(センチポイズ)で管理され、一般的な水溶性糊で3000~6000cPが使われることが多いです。
この範囲は参考値にすぎません。
ライン速度、ラベル材質、缶表面の処理状態によって、最適な粘度は変動します。
現場で日々求められるのは、“理論通りにいかない”という前提に立った柔軟な対応です。
2-2. 粘度が高すぎる場合の問題
糊の粘度が高いと、ラベル貼付時に伸ばしきれず、ムラや塊ができやすくなります。
ラベルの一部が浮いてしまう現象、“浮きラベル”は典型的です。
また、糊がノズル詰まりや機器トラブルの原因となるため、過度な粘度上昇には慎重な管理が必要です。
2-3. 粘度が低すぎる場合のトラブル
逆に粘度が低いと、糊が流れやすくなり、塗布部以外への“はみ出し”や、貼付後の“糊抜け”が発生しやすいです。
この場合、ラベルがしっかり定着せず、剥がれやすくなります。
また湿度が高い現場では、粘度が低下しやすいため、管理点が増加します。
3. 貼付圧 ― アナログ現場に残る“職人の勘”
3-1. 圧力の与え方と最適条件
貼付圧は、自動化前は作業者が手で貼りつけていた時代から、機械貼付へと進化しました。
しかし現在でも“実際に良品ができる圧力”を定量化するのが難しい現場が多いです。
よく使われるのは0.05~0.3MPa程度のローラー圧。
しかし缶径やラベル長さごとに微調整が必須であり、ベテランオペレーターの“職人の勘”に頼るケースは珍しくありません。
3-2. 圧力不足・過剰時の典型トラブル
貼付圧が足りない場合、ラベルが充分に圧着されず、エッジ部分からの捲れ上がりや部分的な剥離が発生します。
逆に、圧力が過剰だとラベル表面のフィルムが延伸・変形し、シワや気泡入りの原因となります。
現場では“ちょうどよい圧力”が日々試行錯誤され、シフトごとに機械設定を調整することも日常的です。
4. 糊粘度と貼付圧の“バランス”が品質のカギ
4-1. ラベル接着のメカニズム
糊がラベルと缶表面の細かな凹凸(ミクロレベル)にしっかりと入り込み、それを適切な圧力で押し広げることで高い接着力が生まれます。
粘度と圧力のバランスが“ちょうどよい”時、初めて美しいラベル仕上がりと高い接着性が両立します。
4-2. バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場から考える品質要求
バイヤーとしては「剥がれない強度」と「美観保持」の双方を重視し、ラベル剥がれによるブランドイメージの毀損を防ぎたいものです。
一方、サプライヤー側は、過剰品質によるコスト増を避けつつ、安定供給する責任があります。
そのため、糊の仕様変更や新素材導入、貼付圧ショートチェックの導入など、双方の現実解を模索する動きが強くなっています。
5. アナログ業界だからこその「現場発信」イノベーション
5-1. “不良を減らす”現場提案の数々
製造業現場では、アナログな仕組みが今なお息づいています。
たとえば、ローラーの清掃頻度を高めたり、糊の攪拌温度を変更してみたりといった小さな工夫が、実は大きな不良減少につながります。
さらに、デジタルシフトが進んでいない工場では「五感による検査」「実機を使ったリアルタイム検証」など、現場起点のカイゼン活動が重要です。
5-2. 新たな視点で挑むDX化の課題
ここ数年、ラベル貼付工程でもセンサーやカメラの導入が進み、貼付圧やラベル位置ズレの自動検出が可能になってきました。
しかし、既存のアナログ設備に急にハイテクを導入すると、現場の混乱や新たなトラブルの温床となることもあります。
経験とデータを融合し、「何を自動化すべきか・すべきでないか」という“ラテラルな眼”がますます求められています。
6. 未来指向 ― 粘度・圧力を超える新たな製造技術へ
6-1. フィルムレス・直接印刷技術への期待
世界的には、ラベルレス缶(直接印刷)や紙ベースのエコラベルなど新たな潮流も広がっています。
糊や圧力に依存しない新工法が登場することで、“剥がれ”に悩む現場は大きく変化していくかもしれません。
6-2. 粘度・圧力バランスを科学的に最適化する未来
AIを活用した工程自動調整や、クラウドでの大量データ解析による不良予知など、今後は“職人の勘”頼みから脱却する新たな地平線が見えつつあります。
まとめ ― 「当たり前を疑う目」で品質と生産性を進化させる
缶ジュースのラベル貼付という一見きわめてシンプルな工程にも、糊粘度と貼付圧の絶妙なバランスが必要不可欠です。
理論数値やマニュアルだけでは語りきれない現場の“リアル”、アナログな工夫、不断のカイゼンが今日の品質を支えています。
バイヤーとして“なぜこの仕様なのか”を深く理解し、サプライヤーとして“現場が求めているものは何か”に立ち返ること。
AIや自動化技術が進化しても、“当たり前”を疑うラテラルな発想こそが、製造業現場の未来を切り開いていくでしょう。
メーカー現場の皆様、バイヤーやサプライヤー志望の方には、この奥深い「缶ジュースラベル貼付の世界」を、一歩踏み込んで体感し、真の課題解決へのチャレンジに繋げていただきたいと切に願っています。
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