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歯磨き粉の発泡性を高める界面活性剤の選定と混合工程

目次
歯磨き粉の発泡性を高める界面活性剤とは
歯磨き粉の発泡性は、ユーザーの磨き心地や爽快感、さらには洗浄効果に大きく影響します。
この発泡性を左右する重要な成分が「界面活性剤」です。
界面活性剤は、液体と気体、あるいは液体と固体の界面で分子が集まり、界面の性質を変えることで泡立ちを生み出します。
現在、多くの歯磨き粉メーカーがしのぎを削って研究しているのが、「効率的な泡立ち」と「安全性」の両立です。
とくに昭和時代から抜け出せない保守的な製造現場や、コスト重視の業界風土が残るなかでも、界面活性剤の技術革新が求められています。
本記事では、界面活性剤の基礎知識から、発泡性を高めるための選定ポイント・実践的な混合工程まで、私の実体験を交えながら詳しく解説します。
界面活性剤の種類と特徴
陰イオン系界面活性剤
歯磨き粉にもっとも多く使われているのが陰イオン系界面活性剤です。
代表的な成分はラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate:SLS)です。
ラウリル硫酸ナトリウムは非常に泡立ちがよく、「歯磨き粉=泡立つもの」という消費者のニーズに応えやすいというメリットがあります。
また比較的安価で供給が安定していることも、コスト重視のメーカーに重宝される理由です。
その一方で、刺激が強く、特に口内炎や粘膜の弱い方には違和感を与えるケースがあることも事実です。
このため、最近では同じ陰イオン系でもより穏やかなラウロイルサルコシンナトリウム(Sodium Lauroyl Sarcosinate)等への切り替えが進む事例も増えています。
非イオン系界面活性剤
非イオン系界面活性剤は刺激が少なく、穏やかな洗浄力が特徴です。
発泡性自体はやや控えめですが、安全性を重視するニーズの高まりや、歯科専売の高価格帯製品を中心に採用が進んでいます。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが代表的です。
コストや原料調達といった面では、従来の陰イオン系よりもハードルが高いものの、”脱・昭和”のトレンドを先取りする動きとして注目されています。
両性イオン系界面活性剤
両性イオン系は陰イオン系・陽イオン系の両方の特性を持ち、低刺激かつ適度な発泡性を有します。
歯科領域においては、N-ココイルグリシンカリウムなどが代表的で、刺激を極力避けたいユーザー向けや、子ども用製品によく利用されます。
発泡性と刺激性のバランス、さらには添加する他成分との相性を見極めることが、界面活性剤選定上最大のポイントとなってきます。
発泡性のメカニズムと評価方法
発泡の原理
界面活性剤は、その分子構造に親水基(水になじむ部分)と疎水基(油になじむ部分)の両方を持っています。
この両性分子が水中に分散すると、空気が混入した際に気泡を包み込む膜を形成します。
この膜が安定して多く作られるほど、泡立ちが良くなるのです。
現場での発泡評価方法
発泡性を評価する際は、以下の手法が一般的です。
– ビーカー試験:定量の試料に所定量の水を加え、機械攪拌して泡立ち量・消泡性を測定
– 消費者パネルテスト:実際の使用時の主観評価をフィードバック
– 粘度変化測定:泡立ちによるクリーム状の変化や塗布感も重要な指標
特に現場の品質管理では、同一処方での「日々の安定性」もしっかり管理されます。
とくにアナログな製造現場だと、微妙な原料ロット差・設備の汚れ・投入温度のズレなどでも発泡性が変化してしまうため、定期的な評価が不可欠です。
界面活性剤を選定する際の実践的なポイント
原材料規格との整合性
昭和の時代から多くのメーカーで「過去採用実績」に頼る傾向がありますが、近年はグローバルな規格適合や化学物質取扱い基準(GHS、REACH等)も厳しくなっています。
「いつもの界面活性剤」は本当に最新の規格や調達ルートに合致しているか、定期的に洗い直す必要があります。
サプライヤーベンチマーク
調達購買部門やバイヤーとして大切なのが、サプライヤーごとの安定供給能力や品質管理体制の把握です。
原料自体は同スペックでも、保管状態や出荷管理が不十分なサプライヤーだと、発泡性・純度・異臭などが生産ラインで問題になるケースも少なくありません。
特に、同一成分表記でありながら不純物量がサプライヤーによって異なるため、定期的な受入検査、日本語と英語両方でのMSDS(安全データシート)の取得と確認を徹底することが、昭和体質企業からの脱却にもつながります。
コストだけではない「現場最適」の選択
発泡性を優先して安価な界面活性剤だけに依存するのは、長期的にはリスクも伴います。
昨今のSDGs・脱炭素ガイドライン下では、生分解性やエコ生産の視点を求められる可能性も高まっています。
現場で求められるのは、コスト・品質・サステナビリティのバランスです。
たとえば、界面活性剤の組み合わせ(ブレンド)や、水溶液との分散攪拌プロセスの改良によって発泡性を補完できる場合もあるため、調達部門、研究開発、現場技術者らの三位一体での検討が重要となります。
混合工程における実践的なノウハウ
混合のポイント―温度と時間の厳格管理
界面活性剤の発泡力は、混合時の「温度」や「攪拌速度」「投入手順」に大きく左右されます。
とくに昭和以来のアナログ工場では、「カン」や「経験」に頼ったオペレーションがいまだに色濃く残っています。
「いつもより混ぜているはずなのに泡立ちが少ない」「バッチごとに泡質が異なる」といったトラブルも度々発生します。
この問題を解決するには、混合設備の温度・回転数をセンサーでリアルタイム管理し、標準作業手順書(SOP)の作成と現場教育をセットで行う必要があります。
「デジタル化」「IoT機器の活用」といった、現場DXへの小さな一歩が最終品質の安定化に直結します。
原料の投入順序が泡立ちを左右する
界面活性剤と他成分(研磨剤、保湿剤、香料など)を同時投入すると、相互作用で泡立ちに悪影響を及ぼすことがあります。
たとえば、高濃度の研磨剤に界面活性剤が吸着しすぎたり、増粘剤によって泡膜形成が阻害されたりするのです。
大手メーカーでは、あえて界面活性剤を一次水溶液に分散させた後、他成分を段階的に加える分割混合方式を採用しています。
これによってバッチごとのばらつきを抑え、安定した仕上がりが実現できます。
このプロセス管理ノウハウは、現場改善の積み重ねから生み出された「昭和アナログ」企業の強みともいえる部分です。
現場DXとアナログ現場の融合
最近は混合工程にタブレット端末を導入し、各バッチの設定条件・泡立ち具合(写真記録)をデータベース化する試みが行われています。
この蓄積データをもとに、年1回の処方見直しや原料変更時のリスク低減に役立てる企業も出てきました。
しかし、すべてをデジタル化するのはハードルが高く、経験者による最終官能評価も欠かせません。
こうした現場目線×データ活用のハイブリッドアプローチが、令和時代の強いものづくりへと進化しています。
今後の課題と展望―昭和から令和へ、製造業現場が進むべき道
歯磨き粉の発泡性を高める界面活性剤の選定や混合工場の管理は、単なる“技術論”にとどまりません。
仕入・調達の最適化、現場力強化に加え、「製品の多様化」「安心・安全への要求」「脱炭素」「エビデンスデータ管理」など、時代の変化にどう対応していくかが問われています。
昭和から令和へ――。
アナログな現場感を残しつつ、データ・技術・人材を融合していくこと。
原料サプライヤー・バイヤー・現場技術者それぞれの立場で意識を変えていくことが、製造業のさらなる発展につながります。
歯磨き粉の発泡性という一見“小さな現場課題”──実はその先に、製造業の大きな進化の扉が開いています。
読者の皆様が、界面活性剤の選定や混合工程の深化に取り組み、それぞれの現場に新たな価値を生み出していく一助となれば幸いです。
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