投稿日:2025年10月20日

塗装乾燥不良によるべたつき発生を防ぐ加熱条件の最適化

はじめに:塗装乾燥不良がもたらす現場課題

工場の生産現場で塗装工程を抱える方にとって、「べたつき」は悩ましい現象の一つです。

見た目の美しさだけでなく、製品の耐久性や後工程での作業性にも大きく影響します。

とりわけ自動車、家電、産業装置など多様な業界で、塗装乾燥の不良率低減は品質保証の要といえます。

しかし一方で、いまだに昭和時代から続く“勘と経験”頼りの乾燥管理や、不十分な加熱設備に頼る現場も見受けられます。

現場では「とりあえずこの温度、この時間でやってきた」「特に問題になっていないから見直さない」といった思考に陥りがちです。

本記事では、塗装乾燥不良によるべたつき発生の原因を深掘りするとともに、その解決策として加熱条件最適化のベストプラクティスを実践目線、バイヤーやサプライヤーの視点も交えて紹介します。

塗装乾燥での「べたつき」発生メカニズム

べたつき発生の主な原因

塗膜が乾燥しきらずべたつきが残る現象、その主な原因として以下の3点が挙げられます。

1. 加熱温度の不足
2. 乾燥時間の不足
3. 風量・換気の不足(揮発成分が滞留)

塗料には溶剤や水分が含まれており、揮発・硬化して初めて塗膜となります。

この際、大事なのが“十分な温度・時間・空気流”の三要素です。

塗膜内部に揮発しきれなかった成分が残っていると、時間が経っても表面や内部がべたついたままとなり、後工程でのブロッキングや不具合につながります。

塗装条件最適化のレバー群

加熱乾燥の条件を見直す具体的な要素は下記の通りです。

  • 乾燥炉温度・搬送スピード
  • 製品形状や塗料の種類
  • 塗布量(膜厚)
  • 炉内の風量や空気の流れ

これらは単独ではなく、相互に作用します。

“温度を上げればよい”と単純に考えるのは危険です。

加熱しすぎは焼き付き、変形、塗膜のヒビ割れ、色ムラなど新たな不良のリスクを招くためです。

塗料メーカーのカタログスペックを鵜呑みにせず、現場の条件・設備・ロットごとに最適解を模索することが大切です。

昭和アナログ現場の現実とAI・デジタル化への展望

いまだ残る現場の“勘と経験”頼り

現場の多くでは、未だに“○℃で△分焼いているから大丈夫”と、昔からのやり方が踏襲されています。

しかし、塗装材料や製品形状、環境温度は常に変動します。

工場長やラインリーダーの卓越したノウハウは財産ですが、標準化されず属人化すると異常発生や品質低下の温床となります。

紙の日報、熟練者の目視や触診ばかりで「数字」や「データ」に基づく合理的な改善が進みにくいのが実情です。

現場に求められるデータドリブンな最適化

現代のスマートファクトリー化では、加熱炉のセンサー情報や製品内部温度のモニタリング、QRでのトレーサビリティといったデジタル化が進みつつあります。

逐一データを取得し「異常があれば即時アラート」「作業履歴と不良品発生を紐付けて管理」といった取り組みが進めば、現場の“カン”から“カクシン”へシフトできます。

加熱乾燥プロセスにも、サーモグラフィや非接触温度センサなどが普及し始め、最適温度プロファイルの記録、炉内温度分布の均一化、過熱や冷却不良の可視化といった管理が可能になりました。

今後は、AIによる異常予兆感知も現実味を帯びています。

品質保証部門、バイヤー、サプライヤーの観点

品質保証部門が求める視点

品質保証部門の立場では、「再現性」と「検証性」が重視されます。

同じ条件で焼けば誰がやっても同じ品質になること、繰り返し測定・判定できる手順書や検査指標が必要です。

現象としてのべたつき判断を感覚・主観に頼るのではなく、粘着力や摩擦係数、光沢度など測定技術を導入する。

これが顧客への品質説明責任(トレーサビリティ)でも重要視されます。

バイヤーから見た加熱条件最適化のメリット

バイヤーの立場から見ると、塗装乾燥不良による品質トラブルは納期遅延や工数増をもたらします。

適切な加熱条件管理を行うサプライヤーは、安定生産・不良品削減を通じてQCD(Quality, Cost, Delivery)全体を底上げでき、バイヤーからの信頼を勝ち取れます。

協力会社選定の際、加熱プロセスの最適化やデジタルデータで客観的管理をしているかは一つの重要な評価ポイントです。

サプライヤー視点の業界動向・付加価値提案

購買担当やバイヤーが求めるのは、単なるコストカットだけではありません。

納期確実性や、突発トラブル時の原因説明力も注目されます。

塗装乾燥条件を“標準化”しつつ、“状態監視”をして「再発防止・早期発見ノウハウ」を提供できれば、それがサプライヤー側の差別化要素となります。

生産工程内での温度・湿度・風量などの“見える化”を社内で推進し、顧客に対し品質データを証拠として提出することも、今後の新たな信用獲得に大きく寄与します。

現場実践!加熱条件最適化の進め方

1. 現状プロセスの「見える化」から始める

まずは現場の乾燥条件(温度・時間・風量・重量変化など)を系列ごと詳細に記録しましょう。

市販のデータロガーや簡易温度センサなど、投資リターンの大きい省力器具も豊富にあります。

1日の各時間帯や炉の入口・出口など、位置ごとに温度のバラつきがないか、製品ごとの差異はないか、実測データで傾向を洗い出します。

2. 塗膜の「べたつき」定量化・試験方法を取り入れる

べたつきの有無を客観的に判定するため、摩擦抵抗値・テーププルオフ法・ガラスビーズ転がし法など定量的な方法を導入しましょう。

これにより作業者の主観ばかりに依存しない品質管理体制が構築されます。

結果を蓄積し、「どの条件でべたつきゼロが達成できるか?」をデータで統計化します。

3. プロセスウィンドウの設定・整流化

温度・時間に多少のバラつきがあっても良品となる“工程余裕幅”を見極めます。

このウインドウ(範囲)を狭めず実現できれば、現場環境変化や条件誤差があっても安定生産ができます。

不具合が発生しやすい「危険ゾーン」「管理範囲外」に踏み込まない運用を意識し、教育も徹底します。

4. 設備メンテナンス・冗長化の徹底

加熱炉のヒーターや送風機は、劣化・汚れにより規定温度や風量に達しないことがあります。

定期点検、メンテナンス周期の短縮化、センサキャリブレーションの実施、リスク分散のための二重化・予備部品の常備など、あらかじめ対策しておくことが長期安定には不可欠です。

まとめ:塗装乾燥最適化で“現場の進化”を実現しよう

昭和アナログ現場からの脱却、DX時代の最先端現場づくりに挑戦するなら、加熱条件の最適化は必須テーマです。

製造現場の一時的な不良対応ではなく、データと科学で“なぜ”を突き詰めた粘り強い標準化・再現性向上こそが、今後の競争力につながります。

バイヤーもサプライヤーも、従来の調達・供給関係を超えた共創・課題解決型パートナーとして連携し、より高品質かつ生産性の高い現場を目指していきましょう。

塗装乾燥の最適化は、ライン一体のものづくり革新にも直結します。

現場の皆さんの一歩踏み込んだ取り組みが、今後ますますの製造業発展の原動力となるはずです。

You cannot copy content of this page