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オリジナルドレッシングを商品化するときの分離・沈殿対策の基本

目次
はじめに:オリジナルドレッシング開発に立ちはだかる壁
オリジナルドレッシングの開発や商品化は、飲食店や食品メーカーにとって大きなビジネスチャンスになります。
一方、現場レベルで商品化する際、「分離」や「沈殿」といった現象が避けて通れない課題になることも事実です。
これらの問題を解決しないまま出荷してしまえば、店頭や消費者のもとで品質劣化が発生し、ブランドイメージや売上に大きなダメージを与えかねません。
本記事では、長年現場で経験を積んだ筆者の立場から、ドレッシングの商品化で直面する分離・沈殿問題の具体策を分かりやすく解説します。
また、古くから続くアナログな現場が多い食品業界でも、実践しやすい現場目線の工夫やトレンドを紹介します。
ドレッシングの分離・沈殿はなぜ起こるのか?
基本的な現象メカニズム
ドレッシングは、油・酢や水分・粉末(スパイス、塩、糖分)、野菜ペーストなど複数の素材を混ぜ合わせて作ります。
しかし、物質の比重や性質の違いから時間経過とともに「油と水が分離する」「粉末や固形分が沈殿する」といったことが起きます。
とくにオリジナル処方では、既製品で使われる安定剤や乳化剤の配合ノウハウが社内にないことが多いため、分離・沈殿は特に起こりやすい問題と言えます。
分離・沈殿が商品に与えるリスク
消費者の視点に立つと、「見た目が悪い」「沈殿が混ざらず最後まで食感が一様でない」「分離した油がベタつく」といった不満が生まれます。
これがクレームや返品、SNSでの悪評拡散の火種にもなりかねません。
また、小売店が賞味期限切れ前に廃棄判断する基準にもなるため、BtoB取引や問屋との付き合いが多い現場では見逃せない課題です。
分離・沈殿対策の基本的な技術とその選択
1. レシピ段階での工夫
商品開発初期から分離・沈殿の発生しやすい素材の配合調整が重要です。
油分と水分のバランス、糖や塩、調味素材の濃度を適正化することで、物理的な分離・沈殿の最小化が進みます。
水分が多い材料やすりおろした野菜を使う場合、繊維ごと丁寧にピュレすることで固形分の浮遊バランスが良くなります。
また、古典的ながら「すりごま」「刻み海苔」「粉砕したナッツ」など吸水性や粘性のある副材料を活用するのも一手です。
2. 乳化剤・安定剤の賢い活用
大量生産の現場では、レシピへの「乳化剤」や「増粘安定剤」の添加も審査対象となります。
レシピのオリジナリティと安全性を損なわず、消費者の「無添加志向」にも配慮しつつ、必要最小限の添加で効果が出る素材を選ぶことが大切です。
具体的には、酢に溶けるレシチン系(大豆由来や卵黄由来)、寒天やグァーガムなどの天然多糖類、トマトやりんごのペクチンなどを活用します。
これらは使用量が多すぎると味や香り、物性に影響するため、理論値だけでなく、実際に試作を繰り返して最適量を現場で発見してください。
3. ミキシング・攪拌工程の最適化
特にアナログ現場が多い中小規模工場では、混ぜ方の“クセ”が商品品質に大きく関わることも珍しくありません。
家庭のハンドミキサーでは分散が不十分となりがちなため、ラボスケール試作以上では業務用の高速ミキサーやホモミキサーを使いましょう。
また、ミキサーの羽根の形状や容器の大きさ・回転数を変えてみることも有効です。
あえて最終的に再び手作業でボトリング直前にサッと撹拌工程を追加するアナログ技術も、現場では効果的な工夫です。
4. 充填・包装段階での注意点
沈殿や分離を防ぐ最後の砦は充填・包装工程です。
特に“流動性”や“粘度”が均一になるよう、ホット充填や冷却工程を最適化することで、内容物の微細な偏りを防げます。
容器選定では、冷蔵流通や店頭で「振って使いやすい」ペット素材や、シャカシャカしやすい狭口ボトルを選ぶという生活者目線も大切です。
現場で見落としがちな昭和マインドの課題と詳細な対策
なぜアナログ現場では分離・沈殿が多発するのか
伝統的な職人技を重んじる工場や、レシピが“口伝え”で管理されてきた現場では、科学的な検証が疎かになりがちです。
「昔からこれで良かった」
「うちの水道水に合う配合だ」
という声も根強く、明文化された標準作業が存在しません。
しかし現代のラベル表示や製造工程履歴の厳格な管理、量販店・ECでの広域展開には、客観的な品質安定が不可欠です。
レシピの数値管理と現場教育のポイント
現場では以下のような管理手法導入が効果的です。
・温度・湿度・水質などの分析記録を残す
・調合工程の材料ごとの投入順序や撹拌回数を定量管理する
・同じ品名でも産地やロットで乳化安定性が変わるため、実サンプルで目視確認する
これらの仕組みを根付かせることで、「失敗しても現物処分してやり直せばいい」という感覚から脱却できます。
仕組み化・標準化で人材に依存しすぎない現場へ
属人的な“カン”や“目分量”を排除することは、誰が担当しても品質を揃えられる体制づくりに直結します。
たとえばExcelの入力シートや、製造工程ごとのチェックリスト、IoT対応の温度・重量計測器など、既存設備+ちょい足しDXが小規模現場にも求められています。
バイヤー/サプライヤー双方から見た分離・沈殿対策の価値
バイヤー視点で見る「分離しにくさ」の重要性
量販チェーンや問屋のバイヤーは、見た目のクオリティだけでなく、
・長距離輸送や倉庫での保管時に品質が変わりにくい
・消費者がリピートしやすい(トラブルが少ない)
といった観点で商品を選びます。
実際にプルーフテストや加速試験(高温・長期保存)で物理的な安定性を条件に挙げる例も増えています。
サプライヤーの立場でバイヤーのニーズを先読みする方法
・「ご使用前によく振ってください」の表記だけでは足りない
・どんな温度帯の流通でも同じ状態が保てる設計になっているか
・自社で把握できていない現場テスト(輸送試験や流通模擬テスト)も積極的に提案できるか
こうした「使いやすさ=クレーム低減=売場の回転率向上」に繋がる提案こそが、営業力や信頼度を高めるポイントです。
最新技術・トレンドと今後の方向性
物理的乳化技術の進化と新素材の活用例
最近では、「超音波乳化」や「高圧乳化機」といった物理的な微細分散技術の導入も進んでいます。
また、アレルゲンフリーの乳化剤や植物性ペクチン、食物繊維由来の新しい安定剤が登場しています。
これらを使い、「食品添加物=悪」のイメージから、「天然由来の乳化安定剤」の訴求へとブランド戦略もアップデートされています。
「シェフ監修」や「ご当地素材」を支える分離・沈殿ゼロへの挑戦
オリジナル性の高い商品ほど、季節野菜や地元産素材、スパイスなどが複雑に絡み合い、乳化や分散の難易度が高まります。
しかしそこでこそ、製造現場に緻密な技術と創造性が求められます。
定番品でも「使いやすさ+美味しさ+安定性」の三拍子がそろえば、リピーター・ファン作りにつながります。
まとめ:確かな商品力は地道な分離・沈殿対策から
分離・沈殿は避けて通れない現象です。
しかし、その現象をきちんと理解し、現場・レシピ・管理・流通すべてのプロセスで細やかな工夫を重ねることが、競合との差別化やバイヤーからの信頼獲得につながります。
オリジナルドレッシングの分離・沈殿対策に悩むすべての方が、失敗を恐れず、現場のアイディアと科学的知見の「融合」に挑戦してください。
この地道な取り組みが、日本の製造業がアナログからデジタルまで一段上の成長を遂げる原動力となります。
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