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OEMメーカーが持つ技術を魅せるプロダクトストーリーデザインの作り方

目次
はじめに:なぜ今「プロダクトストーリーデザイン」が必要なのか?
製造業の現場では、「いいモノを作れば自然と売れる」という思考が根強く残っています。
とりわけOEMメーカーは、優れた技術力や生産管理能力を持ちながらも、自社の強みを表舞台で語る機会が限られています。
元請企業のブランドの裏に「黒子」として徹することが求められるため、誇れる技術や現場哲学がマーケットや最終消費者に伝わりにくい特徴があるのです。
しかし、BtoBビジネスが高度化・多様化し、購買担当者やエンジニアが情報の海で選択肢を探す時代。
「なぜこの会社を選ぶのか?」が問われるようになった今、製品や技術の由来・開発背景・現場のこだわりを“物語”として伝える「プロダクトストーリーデザイン」の重要性は、日増しに高まっています。
この記事では、OEMメーカーやサプライヤーが自社の技術や生産哲学を、単なるスペックや価格ではなく“価値あるストーリー”として伝えるための実践的な方法を、現場目線で解説します。
OEMメーカーの「技術力」にストーリーが必要な理由
コモディティ化が進む今、差は「情緒」に宿る
日本の製造業、特にOEM分野は、数十年にわたり世界市場で信頼と実績を築いてきました。
しかし今や、海外勢との価格競争が激化し、同じようなスペック・品質であれば安い方へ流れるのは、バイヤーの常です。
この“均質化(コモディティ化)”が進む時代には、技術や製品の「数字には表れない価値」をどう伝えるかが、選ばれるか否かの分岐点となります。
ここでこそ、「その技術がなぜ生まれ、どんな苦悩や創意工夫、現場の知恵が込められているのか」という物語が活きてくるのです。
サプライヤーの「技術理解度」が落札を左右する
バイヤー(購買担当者)がサプライヤーを選ぶ基準は、単なる価格や納期、品質だけにとどまりません。
「この会社なら、うちの求める品質基準に本当に応えてくれそうか」
「現場の“勘所”を理解していそうか」
「もしもの時にも柔軟に動いてくれそうか」
こうした“情緒的な信頼”を裏付ける事実やエピソードは、購買現場で意外なほど重視されています。
それをデータだけでなく、現場エピソードや想いとして語ることが、「おたくにお願いしたい」の決め手になるのです。
OEMメーカーのストーリー作り:基本のステップ
1. 「失敗」の体験にこそ価値がある
一流の製造現場ほど、豪快な失敗やヒヤリ・ハットを経験しています。
たとえば、工程で出た不良品を正直に振り返り、その改善プロセスを語る。
失敗から学び、現場の知恵を総動員して克服したエピソードが生々しいほど、逆に信頼が高まる。
バイヤーもサプライヤー選定の際、すべてが順調にいくことなどないと知っています。
ピンチをどう乗り越えたか、その際どんな工夫や決断・現場哲学があったのかを、具体的な数字やエピソードとともに語りましょう。
2. 「こだわり」を掘り下げる
昭和のものづくり現場には、「手間ひまかける」こと自体が美徳とされる文化が根付いていました。
令和の現場でも、「ここだけは一歩も引けない」「この作業だけは自動化できない」など、「職人」の魂が込められているポイントが少なからず残っています。
その「妥協しない理由」や「他社との違い」を、数値で示せる場合はデータとして。
顧客の課題(使い心地、安全性、耐久性など)にどう向き合ったかを、職人の目線で描写することで、圧倒的なリアリティが生まれます。
3. 「現場の声」を主役にする
現場のリーダーや若手エンジニア、QCサークルのメンバーや調達のキーマンなど、日々試行錯誤している従業員のリアルな声。
「誰がどんな悩みを乗り越えてきたか」「他部門とどんな風に連携したか」など、顔と物語のある“現場語り”は、スペックシートの10倍説得力を持ちます。
文章や写真、あるいは短い動画インタビューで「ものづくりの裏側」を発信することで、顧客は“人を介した信頼感”を醸成できます。
デジタル時代のストーリー発信:実践ノウハウとポイント
ウェブサイト・会社案内で技術を「魅せる」
単なる設備リストやISO取得の表記で終わっていませんか?
技術や工程をプロセス図や実写・時にはイラストや3DCGを使って分かりやすく表現します。
さらに、
– 「この製品はどんな課題から開発が始まったのか?」
– 「現場で最も苦労した工程は何か?」
– 「開発リーダーの挑戦と失敗、そこからのブレークスルーは?」
などをストーリーとして記載できると、中堅バイヤーや設計者の興味を一気に引きつけます。
SNS・動画コンテンツ活用のススメ
昭和の現場では情報露出がタブーとされがちですが、若手バイヤーや技術者はYouTubeやLinkedIn、note、X(Twiiter)などの情報源にも敏感です。
簡単なショート動画、現場レポ漫画、担当者が語るミニコラム、失敗談のエピソードなど、コンテンツをこまめに投下することで「専門性」と「開かれた姿勢」を両立できます。
また、これらを通じて「バイヤーが調べやすい・知りたい情報」を意識して発信することが、受注につながる細い糸になります。
事例集・用途提案で「選ばれる理由」を具体化
単に製品のスペックを一覧するだけではなく、納入事例・用途別事例・「困りごと→解決ストーリー」を短いシナリオとしてまとめる手法が有効です。
この際、「どこに苦労し、どんなカイゼンで乗り越えたか」「顧客とどんなやりとりをしたか」を重視してください。
リアルな応答事例や現場でのやりとりは、疑似体験として購買担当者の記憶に残りやすくなります。
製造業の現場経験を活かした「ストーリー構成例」
1. 問題提起から始める
たとえば「長期間メンテナンスフリーで動く搬送装置が欲しい」という顧客課題があった、と導入。
「当初の仕様通りでは耐久性が不足していた。現場から意見が噴出した」という“現実”をさらけ出します。
2. 試行錯誤のプロセスを描写
材料選定の再検討、部品メーカーとの協議、社内での実験やデータ収集など地道な努力と失敗談を入れることで、「汗をかいている現場感」を印象づけます。
3. 現場知恵のブレークスルーと仲間の連携
熟練作業員の一言が突破口となった、外部サプライヤーのアイディアで問題が解決した ― そういった具体的エピソードが、サプライチェーン全体の価値を伝えます。
4. 数字だけでない成果と次への教訓
例えば「10万サイクルで初の不良ゼロを達成」「現場のカイゼン発案が新たなSP(Special Process)認定のきっかけとなった」といった、成果とそれが次世代製品開発にどう活きるか、未来志向で締めくくります。
アナログ気質を活かしたストーリーデザインの工夫
日本の製造業には、合理化やデジタル化一辺倒では語りきれない「温度」があります。
昭和から続く「現場主義」「現物主義」、一人一人が部品を手に取り“これはうちでしかできない”と語るDNAは、世界に誇れる無形資産です。
こうした古き良き“職人気質”は、時代遅れではありません。
むしろ、グローバルの競合メーカーが表層的なコストやスピードばかり追う中で、「人の顔が見える現場の知恵」は差別化の武器となります。
「絶対に譲れない工程」「代々受け継がれるノウハウ」「人とロボットの協働現場」など、現場の空気感を映像やインタビューで伝えましょう。
バイヤーは「会いたくなる現場」や「現場力に惹かれる」動機づけを求めています。
バイヤー・サプライヤー視点で知っておきたいこと
OEMメーカーの技術ストーリーは、バイヤーやODM元だけでなく、サプライチェーン内の他社(協力工場や部品メーカー)にも響くものです。
– バイヤー志望者は、現場で何が起き、どんな人が何を大切にしているかをエピソードから学びましょう。
– サプライヤーは、バイヤーが「長期視点」「信頼性」「現場対応力」を重視して選定していることを意識してください。
– 技術では劣らないのに「なぜあの会社が選ばれるのか?」と感じた時は、こうしたストーリーデザインの有無を比較してみてください。
まとめ:物語で選ばれるOEMメーカーへ
OEMメーカーが自社の技術や「人と現場力」をストーリーとして発信することは、単なる販促手法ではありません。
現場での汗、挑戦、失敗、カイゼン、そして次への志を、一つの“商品の裏側”として語り継ぐことで、強いファン顧客やビジネスパートナーが生まれます。
製造業が長く抱えてきた「黙して語らず」の美徳を貫く一方で、世界中どこでも“中の人”が顔を出し、体温を持って技術を伝える時代です。
あなたの現場のリアルな物語こそ、最高の差別化ポイントになります。
しっかり作り込み、ぜひ世に発信しましょう。
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