投稿日:2025年10月22日

地方発中小企業が大都市の取引先とリモート商談を成立させるコツ

地方発中小企業が大都市の取引先とリモート商談を成立させるコツ

地方でモノづくりに尽力する中小企業が、大都市のメーカーやサプライヤーとの商談を実現させることは、かつては容易ではありませんでした。
交通費や時間、そして“対面ありき”という昭和的商慣習が壁となり、なかなか東京や大阪の大手企業とのご縁をつかめなかった経験は、現場管理職の方なら一度は味わっていることでしょう。
しかし、2020年以降はコロナ禍を契機にオンライン商談が一般化し、どこにいても等しくビジネスチャンスを掴める環境が整いつつあります。
一方、リモートだからこそ生じる新たな課題や、非対面ならではの難しさに悩む企業も少なくありません。

この記事では、地方の製造業中小企業が、大都市の取引先とリモート(オンライン)商談を成立させ、ビジネスを広げていくための具体的なコツを、現場目線でご紹介します。
調達購買、生産管理、品質管理に携わってきた立場だからこそ見える、「昭和的アナログ商習慣」と「現代的リモート戦略」の融合ノウハウをお伝えします。

リモート商談が広がる今、求められる新しい視点

昭和から続く「顔合わせ信仰」を超えるには

日本の製造業では「相手の顔色を見て、互いの信頼を確かめてから商売が進む」という文化が今でも根強く残っています。
いわゆる対面重視の風土です。
営業担当や工場長がクタクタになりながら大都市まで出張して、ようやく案件のスタートラインに立てるという話も珍しくありません。

この「顔合わせ信仰」を超えるため、オンライン上でも「きちんと向き合っている」「信頼できる会社だ」と感じてもらう工夫が重要になります。
地方企業が「リモートでも大都市の担当者の心に残る」ために押さえておきたいポイントをまず整理しましょう。

リモートならではの課題と可能性

リモート商談の場合、現場工場やショールームを直接案内したり、その場の空気・雰囲気を味わってもらうことができません。
逆にいえば、どんな遠方のお客様にも、自社の魅力を公平に伝えることができるともいえます。

つまり、「リアルではできなかったプレゼン」や、「遠方だからこそ生きる独自性」を見極めることが地方発企業の発展のカギとなります。

リモート商談で大都市企業と信頼を築く具体的なコツ

準備が8割:商談前の情報整理と見せ方設計

オンライン商談は、実は「準備の良し悪し」でほぼ勝負が決まります。
下記2つを徹底的に行うことが第一歩です。

  • 商談相手企業や担当者について最新情報を収集する(近年の経営方針、抱えている課題、競合動向など)
  • 自社の強み・事例・設備・品質管理体制を『数値で』分かりやすく整理し、画像・動画も組み合わせて資料化する

リモート商談では、言葉や雰囲気の伝わり方に限界があります。
ですから「具体的なデータ」と「見える化資料」を駆使して、論理的な訴求力を高めましょう。
もし可能であれば「自社の現場が動いている様子」「製造ラインの自動化設備」などを動画で撮影して商談冒頭に流すことで、臨場感も補えます。

『場数』を積む:オンライン商談の進め方を型にする

ネット回線のトラブル、カメラ・マイクの不調、ファイル共有のもたつき…。
慣れないうちはIT関連の「ちょっとした不手際」で信頼を損ねることもあります。
社内で定期的にリモート商談の模擬練習を行い、以下の型を徹底しましょう。

  • 冒頭で「今日は何をどこまで話すか」を明示する
  • 一案件一案件ごとに「自社がどのように貢献できるか」を端的に伝える
  • オンライン画面を有効活用し、説明時は『画面共有+目線』を意識する
  • 相手の発言や問い合わせには“即レス&その場で画面を見せる”でリズム良く対応する

オンライン特有の「時間の緊張感」を掴み、相手のストレスにならないテンポで進行できるよう、日頃から訓練しておくことが成果につながります。

「共通言語」を意識した説明で距離を縮める

大都市のカスタマーと地方企業、実は商談現場でよく“言葉のギャップ”が起きます。
たとえば設備の呼び方や工程管理用語、品質評価の判断基準など、地域や社歴によって微妙に認識が異なる場合があります。

リモート商談では誤解やすれ違いを生みやすいので、

  • 「御社ではこのような呼び方・進め方ですか?」といった確認をこまめに行う
  • 特に専門用語は注釈入りの資料か、図解を活用する
  • 万が一噛み合わなかった場合でも、すぐに画面上で調べて訂正・補足をその場で伝える

こうした配慮が「分かりやすく、きちんと気遣いのできる会社」という印象を強く残します。

「地の利」をあえて強みに変える訴求ポイント

大都市の企業が地方発企業と取引する場合、「価格が安い」「納期が早い」だけではなく、
その土地ならではの強みやストーリー性に惹かれることも多いです。

たとえば、

  • 地域伝統の技術や職人技、地場素材の利用による差別化
  • 工場の自動化による生産コストの最適化
  • 現場の柔軟な対応で「カスタマイズOEM」に即応できること
  • 地方ならではのバリューチェーンの短さを活かしたクイック納品やトラブル対応力

これらを「デジタル資料+生産現場動画」で効果的に組み込むことで、大都市のスタッフに「一度話を聞いてみたい会社」だと思わせることが可能です。

リモート商談をうまく活かすための社内体制作り

経営と現場、双方の意識合わせが不可欠

「大都市での商談は営業に任せきり」「オンラインはまだ信用できない・難しい」という意識が社内に強いと、せっかくのチャンスを無駄にしてしまいます。

経営陣による“デジタル化の後押し”と“現場巻き込み”

・主要な商談・顧客管理のデジタル化を経営陣が主導し、現場スタッフを巻き込む
・自社強みを数値や動画で見せる資料作成について積極的なインセンティブを与える
・現場の若手やベテランにも、定期的なリモート商談体験を設ける

こうした組織横断的な「デジタル商談体質」への進化が今後さらに求められます。

ノウハウ蓄積と属人化の防止がカギ

昭和的なアナログ現場では、特定の営業担当や工場長だけが情報や人脈を持ち、“属人化の壁”が起きがちです。
オンライン商談時代は、この壁を崩して「社内みんなで知見を共有し、地道に改善する文化」づくりが不可欠です。

  • 商談ごとに議事録・資料・やりとり事例をオンラインで蓄積し、誰でも閲覧できる状態にしておく
  • リモート商談後は必ず振り返り会議を実施し、工夫点・失敗点・今後の要改善箇所を洗い出す
  • ITツールの活用事例や、工場現場の“リモート見学”ノウハウなどを動画で残す

デジタル時代の「暗黙知の形式知化」に積極的に取り組んでいきましょう。

これからの地方中小企業は、「現場力×リモート力」で勝負する

地方発企業だからこその「誠実な現場力」「アナログ対応の強み」。
これにオンライン時代の「効率」「データ」「デジタルプレゼン力」を掛け合わせることで、これまでにない地平線が開けます。

どんなにIT化が進んでも、製造業の商談は「あの会社なら安心して任せられる」という信頼感の蓄積で動いています。
アナログ時代に培った“現場対応力”を捨てず、リモートの効率性・情報発信力を取り入れていく。
このハイブリッド戦略こそが、今後の地方企業が大都市企業と対等に戦い、互いに発展していくための最良の道です。

まとめ:地方発から日本のものづくりを変える、その一歩へ

リモート商談は「ただのビデオ会議」ではありません。
地方の限界を打ち破り、知見や価値観を広げ、「自社の個性と現場力」で日本のものづくり全体を進化させる強力なツールです。

大都市のバイヤーが何を求めているか、どんな課題に直面しているのか。
サプライヤー目線でそれらを深く理解し、準備し、現場の声を響かせていくこと。
そして昭和的な良き文化は活かしつつ、令和のデジタルパワーで新たなビジネスチャンスを掴んでいきましょう。

読者の皆様と共に、これからの「新しい町工場のカタチ」を創造し、日本の製造業をさらに輝かせていければ幸いです。

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