投稿日:2025年10月24日

営業活動を効率化して全国展開を実現するデータドリブン営業戦略

はじめに――変革期を迎える製造業の営業活動

日本の製造業は、世界随一の品質と現場力を武器に、長年にわたり国内外の市場で存在感を発揮してきました。
しかし現在、グローバル競争の激化や顧客ニーズの多様化、サプライチェーンの複雑化、IT技術の進化など、かつてない環境変化に直面しています。
とくに営業活動については、従来の「足で稼ぐ」やり方だけでは業績拡大、エリア拡大の両立が難しくなりつつあります。

本記事では、20年以上製造現場を経験した視点から、データを活用した“データドリブン営業戦略”がどのように日本のものづくり企業の営業力を高め、全国展開や新規市場開拓の鍵となるのかを、多面的に解説します。
営業担当者だけでなく、購買・調達、生産管理部門、サプライヤーの方々にも現場と経営の両方から役立つ最新知見を提供します。

日本の製造業の営業現場のリアル:アナログと属人性の課題

昭和、平成時代から続く“営業の現場主義”

従来の製造業では、営業というと「足繁く顧客を訪問し、信頼関係を築く」ことが最重視されてきました。
“現場力”や“人間力”というキーワードのもと、担当営業の経験や勘、交渉力が成否を分けてきた歴史があります。
案件管理や顧客情報も、データベースやツールではなく日報やエクセル、時には紙のメモや名刺ファイルに頼る。
このようなアナログで属人的な営業スタイルは、多くの中小・中堅製造企業で令和の現在もなお根強く残っています。

営業活動の非効率と情報の“サイロ化”

営業担当者ごとに顧客リストや案件情報の持ち方が違い、進捗や成果の可視化が難しい。
マーケティング部門や生産部門と情報が連携されず、受注から生産、納品まで無駄な調整や待ち時間が発生する。
ベテラン営業のノウハウや成功パターンがデジタル化・マニュアル化されておらず、誰かが異動・退職した途端に顧客との関係が希薄になってしまう。
こうした“昭和型営業スタイル”は、時代の変化に適応しきれなくなってきています。

なぜ今、データ活用が必須なのか?

一方で、B2Bビジネスであっても顧客は積極的にネットで情報を収集し、複数のサプライヤーを比較する時代です。
生産現場ではIoTやAI、ビッグデータ分析が急速に普及しているにも関わらず、営業活動だけが取り残されてしまえば、優良案件を獲得し続けることはできません。
全国展開や売上拡大、安定受注を実現するためには、現場力とデータ力の両輪が求められているのです。

データドリブン営業の本質――「計画」と「改善」による営業の自動化

データが営業にもたらす3つのパラダイム転換

データドリブン営業とは単なるデジタル化やITツール導入の話ではありません。
現場営業を「勘と根性」から「計画と改善」型に構造転換し、全国レベル・全社員レベルで営業力を標準化・最大化していくための戦略です。

1.勘・経験の属人営業 → 確率論・再現性の高い営業
2.“人に紐づく顧客” → “会社に紐づく顧客・案件情報”
3.“過去実績重視” → “今とこれから”のリアルタイムな予測・改善

これらの視点が、営業活動だけでなく、内外のバイヤーやサプライヤーとの関係づくり、さらには生産現場の効率化にも波及効果をもたらします。

データドリブン営業の実践プロセス

成功するデータ活用営業には、下記プロセスが欠かせません。

1.顧客・案件・活動データ(定量・定性)の収集・蓄積
2.分析で仮説・KPIを設定し、営業戦略へ落とし込む
3.活動プロセスを可視化・標準化し、各担当者に浸透させる
4.成果の進捗・失注理由を継続的に分析、改善につなげる

このサイクルをまわすことで、限られた営業リソースでも全国規模のエリアカバーや新規市場開拓が現実味を帯びてきます。

現場力×データ力のシナジー――“根性営業”の限界と定量マネジメント

現場で起こりがちな営業の落とし穴

・「Aさんは得意だから新規開拓を任せよう」
・「Bさんのところは前年対比で推移しているから大丈夫」
・「定期的に挨拶・訪問していれば、また注文が入るだろう」

こういった判断や運用が、気づけば“売上の頭打ち”や“特定営業依存”を引き起こしていませんか?
全国展開を目指すなら、「誰がやっても成果が出る」営業インフラ構築=根性に頼らず定量データで営業戦略を組み立てることが不可欠です。

データがもたらす「見える化」の衝撃

例えば、以下のような営業KPIを可視化し改善すれば――

・業界カテゴリごとの受注確度、公差、単価の傾向把握
・フェーズごとの引合件数~受注件数の歩留率
・訪問頻度と案件確度の相関、案件化までのリードタイム
・失注(競合負け・納期遅延・価格NG…)の根本理由

属人的・感覚的に見過ごされていた“隠れた無駄”や“勝ち筋”もよく見えてきます。
具体的な改善策(例:見積提案前の要件ヒアリング強化、引合~手配のリードタイム短縮、商談のオンライン化推進等)を、現場目線でPDCAサイクルとして定着させられます。

営業活動の全国展開を実現するための具体策

1.“地盤営業”から“データで広げる営業”へ

従来の「地盤型営業」(担当が持っている土地やルート重視)では、ノウハウが個人に集約され、全国展開や新規市場攻略が思うように進みません。
顧客データベース・案件管理システム(SFA/CRM)を活用し、すべての顧客・案件情報を会社資産として活用すれば、未開拓エリアでも過去類似案件の営業パターンや成功要素を再現可能となります。

2.バイヤー/サプライヤー視点の“価値訴求”

全国のバイヤーや購買担当者は、「納期厳守」「コスト訴求」「仕様対応」だけでなく、「ビジネスリスクの最小化」や「サプライチェーン安定」など、総合評価基準でサプライヤーを選びます。
データドリブン営業では、過去納入実績データやトラブル発生時の対応履歴、生産能力やリードタイム短縮実績といった“数字による信頼”も武器にできます。
これにより、「なんとなく良さそう」な営業から「この会社なら安心できる」という明確な価値訴求に変えられるのです。

3.オンライン商談とリアル営業の融合戦略

コロナ禍で一気に加速したオンライン商談・ウェビナー等は、属人化脱却と全国展開の両輪になります。
受発注・ヒアリング・納期調整などデジタル化できる部分は標準化・効率化し、逆に「どうしても必要な現場立会い」「工場見学」など価値の高い工程はリアルで実施する。
この“ハイブリッド営業体制”が、限られた営業リソースでもエリア・業界横断的な成長をもたらします。

バイヤー/サプライヤーの立場から見る“データ営業”の評価ポイント

バイヤーが重視するサプライヤー選定基準の変化

バイヤーは今、単なる“価格交渉の相手”ではなく「提案力があり、データ根拠のある企業」とのパートナーシップを求めています。
年間の受発注実績、納期遵守率、不具合発生件数、代替案の提示スピード等、“数字で評価できる材料”が整っているサプライヤーほど、信頼感・発注シェアの拡大につながります。

サプライヤー企業が自社営業に活かすポイント

サプライヤー自身がデータに基づき「過去○○社、××分野で採用実績あり」「納入後のトラブル率△%未満」「歩留り改善で生産性○%向上」など、“定量データ+現場事例”を積極的に発信・営業資料化する。
これがバイヤーの「意思決定リスク低減」につながり、競合他社との差別化に直結します。

昭和型アナログ営業からの脱却――自社に合った変革の進め方

1.最初から100点を目指さない“小さな一歩”から

現場主義・アナログ文化が根づいた会社ほど、「DX化は大掛かりで難しい」という声が出がちです。
まずは現場レベルで使いやすい“見える化”ツール(例:excel集計の定型フォーマット化、進捗可視化ボードの活用)から。
徐々にSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の部分導入など、“できる範囲で始めて、成功体験を積み上げる”進め方が組織定着のコツです。

2.現場リーダー(工場長・主任・営業責任者)主導の改革が成功のカギ

単なるIT導入や社内命令では社員に浸透しません。
現場を知るリーダー自らがデータ活用の意義・メリットを語り、現場の声を吸い上げたルール改善を根気強く繰り返すことで、昭和型営業文化からの変革が広がります。

まとめ――データドリブン営業で“全国で戦える製造業”へ

製造業を取り巻く環境は、大きな転換点を迎えています。
営業の現場も今や、「根性」と「勘」だけでは勝ちきれません。
数字と現場の知恵を融合させたデータドリブン営業によって、無駄や属人性を取り除き、誰もが再現性を持って営業成果を出せる仕組み作りこそが、これからの全国展開・成長戦略の根幹となります。

バイヤー・サプライヤーの立場でも、「何となくよい」ではなく、「データ」を根拠に“選ばれる企業”を目指しましょう。
アナログとデジタルの“いいとこどり”で、日本のものづくりがもう一段飛躍する――。
そんな未来を、ともに切り拓いていきましょう。

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