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小規模企業でもできる海外クラウド展示会への出展と動画商談の実践

目次
はじめに:製造業の新時代、海外クラウド展示会の可能性
近年、製造業を取り巻く事業環境は大きく様変わりしています。
特に、コロナ禍をきっかけに海外への渡航が制限されたことで、対面型の国際展示会や商談が困難になりました。
しかし、その一方でITや通信技術の進化によって「クラウド展示会」や「オンライン商談」といった新しい仕組みが急速に普及しています。
これは、昭和の時代からアナログ慣習が根強く残る製造業界にとっても、躍進のチャンスとなり得る変革の波です。
本記事では、大手メーカーの現場経験と調達・品質・生産管理の知見を活かし、特に小規模メーカーや中堅企業のために、海外クラウド展示会の出展ノウハウと動画商談実践を詳しく解説します。
小規模企業と海外ビジネスの壁
従来の「当たり前」が通用しなくなった現場
これまで海外展示会といえば、大手企業が潤沢な資金や人材を投入して豪華なブースを構える場でした。
一方で中小製造業や地域企業は「言葉の壁」「現地渡航のコスト」「限られたリソース」から、なかなか出展への一歩を踏み出せませんでした。
しかし、昨今のクラウド展示会は物理的な壁や資金の格差を覆します。
Web上で実施されるため、現地への渡航や多人数の動員が不要です。
さらに、多くのプラットフォームがリーズナブルな価格で提供されており、小さな企業でもグローバル市場に自社技術や製品をアピールできます。
クラウド展示会に変革をもたらす「ラテラルシンキング」
従来「展示会=物理会場」と捉えがちでしたが、クラウド展示会は発想の転換を求めています。
大切なのは「場を借りる」から「価値を創る」への変化です。
動画やデジタルコンテンツを駆使した双方向型のプレゼンテーション、商談の機会創出こそ最大の強みになります。
クラウド展示会出展の基本ステップ
1.情報収集とプラットフォームの比較検討
まずは自社が狙いたい市場と、展示プラットフォームの選定です。
クラウド展示会は、業界特化型から総合型まで多様なサービスが並びます。
主要な事例としては、J-GoodTech、Alibaba.com、Messe Düsseldorfのデジタル版などが挙げられます。
プラットフォームごとに以下の観点で比較しましょう。
– 参加企業・来場バイヤー層(国・企業規模・業種)
– 料金体系(出展料・コンテンツ制作費・オプション)
– サポート体制(言語対応・PR支援・個別フォロー)
– 自社製品と親和性があるテーマかどうか
2.自社の価値提案と出展戦略の明確化
クラウド展示会ではリアルの“モノづくり”の手触りや重厚感が伝わりにくい分、「何が自社の強みか」を端的に伝える必要があります。
現場ベースでよくありがちな誤解は「製品スペックや寸法・精度」を並べただけの説明です。
バイヤーが知りたいのは「御社に発注することで自社の課題がどう解決できるか」です。
ポイントは、
– 他社製品と差別化する独自技術・実績
– 調達リーダーやバイヤー視点の課題提案
– ターゲットセグメント(業界・用途)の明示
– 動画や図版によるわかりやすい機能訴求
こうした要素を踏まえたうえで、1分程度の短い動画と、概要をしっかり記載した資料を用意しましょう。
3.デジタルコンテンツの企画と制作
オンライン展示会の要は「商材動画」「ウェビナー」「デジタルパンフレット」です。
ここで重要なのは「現場目線」の説得力です。
例えば、
– 加工現場や品質管理工程の動画を自撮りスマホで撮影するだけでも信用度が増します
– 英語字幕やナレーションをシンプルに付けると海外バイヤーの第一印象を良くできます(翻訳アプリや無料ツールで十分、完璧さよりスピードと伝える意思が肝心です)
– 「改善の歴史」や「お客様からのQ&A」など現場で起きた実例は、規模の小さい企業こそ強いアピール材料になります
この段階で大規模な制作費をかけず、スマホや市販ツールを使い倒してトライアルすることをおすすめします。
4.オンライン商談予約とフォロー体制の構築
既に多くのクラウド展示会では「商談予約システム」が標準搭載されています。
HPで公開するだけでなく、SNSやメール等での来場誘致も必須です。
また、海外商談に不慣れな場合は「英語で書いた標準返信文」をいくつか事前用意しておきましょう。
初回面談→技術紹介→提案や見積の流れ毎に、現場エンジニアと営業が連携して“温度感高めに”返信できれば、商談ロスを最小化できます。
クラウド展示会と動画商談、現場で押さえるべきポイント
現場が主役になるコンテンツづくり
昭和的な「外注頼み」や「営業任せ」ではうまくいきません。
現場の社員が自ら登場し、技術のこだわりや現場改善の事例を発信します。
これがバイヤーにとって真の“ものづくり力”の証明となります。
司会進行を若手に任せ、実際の現場風景やリアルな質疑応答を交えましょう。
緊張する必要はありません。
むしろ多少のぎこちなさや「生の本音」こそ、海外バイヤーには好感を持たれます。
アナログ業界の「昭和思考」からの脱却
昭和の時代から製造業では「現場主義=口下手」「ITより現物」と捉えられてきました。
しかし近年、「現場で培った知恵」をデジタルで発信できるかどうかが次世代バイヤーの評価軸になっています。
ITが苦手だったり外国語が不安だという声ももちろん多いですが、完璧を求める必要はありません。
重要なのは、「惜しみなくやってみる」「挑戦しながら学ぶ」ことです。
一度動画を制作し、反応を見ながら現場と軌道修正する。
このループこそが、デジタル時代の“現場カイゼン”そのものです。
事例紹介:小規模メーカーが欧州バイヤーをつかんだ理由
ある地方の工作機械部品メーカーは、コロナ禍以降にオンライン展示会へ初挑戦しました。
最初はスマートフォンで自社工場の様子やスタッフインタビューを録画し、簡単な英語字幕を付加しました。
現地での渡航営業経験はゼロ、それでも丁寧に製品の「目的」「設計思想」「現場でのトラブル対応事例」を紹介したところ、ドイツの自動車部品サプライヤーのバイヤーが強い興味を持ちました。
その後、英語での動画商談を数回重ね、「現場責任者が技術的質問いつでもOK」を強調。
日本式の真面目さに現場力が加わったことで、半年後にサンプル発注につながりました。
大きなポイントは、カタログやウェブサイト以上に「人と現場」そのものが海外バイヤーの信頼を得たことです。
失敗しないための注意点と対策
用意周到な事前準備
– 外国語資料や技術データは必ず自社で二重チェック(翻訳ミスが商談信頼度を左右)
– オンライン接続や資料共有ツールの事前リハーサル
現場・営業の即応体制
– 海外からの問い合わせ・商談依頼は“迅速即答”が鉄則
– 特に時差を踏まえた連絡体制の整備(営業と現場責任者でグループチャットを作るのも有効)
「断られた」時こそヒントあり
商談が即受注につながるケースは多くありません。
バイヤーの反応や課題、断り文句の中に「次に改善すべきヒント」が詰まっています。
現場目線で顧客志向の動画や資料を繰り返し磨き続けましょう。
おわりに:新たな地平線を切り拓くために
日本の製造業は、現場の知見や小さな工夫の積み重ねによって今日の基盤を築いてきました。
たとえアナログ色の強い業界でも、デジタルでできることを“現場が主役”で進める時代がすでに始まっています。
海外クラウド展示会や動画商談は「決して特別なIT開発や高コストだけで勝負する場」ではありません。
むしろ、現場力を知恵と熱意で“見える化”し、社内外に次世代の信頼を築く格好の舞台です。
小規模企業だからこその小回り、現場が主役の発信力が、グローバル市場で必ず武器になります。
今こそ昭和の慣習を乗り越え、新たな挑戦を現場から始めていきましょう。
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