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金属製日用品ブランドで顧客に選ばれるための機能×美のバランス設計

目次
はじめに:選ばれるブランドになるために
昨今、日常使いされる金属製品にも「ブランド価値」が強く求められるようになりました。
機能性や価格だけでなく、美しさやサステナビリティも重要な選定基準となっています。
特に金属製日用品の分野では、長く使い続けられる丈夫さと、毎日手にするたびに感じるデザインの美しさ、この両者のバランスが選ばれるブランドへの道となります。
本記事では、20年以上製造業に従事し、工場現場から管理職まで経験した立場から、「金属製日用品ブランドで顧客に選ばれるための機能×美のバランス設計」について、現場目線で具体的に掘り下げます。
金属製日用品が抱える現場の課題と顧客ニーズの変遷
かつて日本の工業製品は「丈夫で長持ち」が最大の価値基準でした。
昭和時代、生活用品の金属製品はあくまで「生活の道具」としての機能性だけが重要視されてきました。
しかし21世紀に入り、消費者の意識は大きく変化しています。
1.「機能」だけでは売れない時代
今日では、単なる「機能」だけで市場で勝負することは極めて難しくなっています。
大量生産によるコスト競争力が中国や東南アジアメーカーに奪われ、機能面もある程度はコモディティ化しました。
メーカー発の「良い製品」だけでは、顧客から“選ばれる”ことができません。
2.消費者の“心”に響く要素とは
デザイン性、手触り、色合い、どこか温もりある美しさなど、いわゆる「感性価値」が購買の決め手となっています。
SNSの普及もあり、日用品も写真映えを意識した品揃えが求められるようになりました。
つまり“美”や“洗練”が買う理由になる時代です。
業界のアナログ体質と美しさへの挑戦
日本の多くの金属製造業者は町工場型、オーナーシップ経営が目立ちます。
効率よりも熟練者による手作業が評価される現場が多く、昭和の生産プロセスが今も色濃く残っています。
1.職人技とデザインの融合の難しさ
金属製品の現場には「加工はうまいが、デザインは苦手」という声が根強くあります。
CADや3Dモデリングを駆使した最新の設計にも、現場は「新しいやり方よりも、昔ながらの丁寧な手仕事こそ信頼できる」といった価値観が残ることも珍しくありません。
しかし、現代の顧客が求めるのは「機能と美の両立」です。
製品設計の段階から、職人技とデザイナーの感性をどう融合させるかが問われています。
2.「美の設計」はどこから始まるのか
造形や仕上げ面のバリ取り、光沢出し、エッジの丸みなど、微細な部分にこそ“日本の美”は宿ります。
また、使い続けたときの経年変化、美しさの持続にも気を配る必要があります。
デザインと現場ノウハウが分断されがちな体質をいかに乗り越えるか。
現場主導の“美の実装”が、他社との差別化に不可欠なのです。
製品バイヤーが重視する「機能×美」のポイント
製品バイヤー、特に大手流通・インテリアショップ担当者は、次のような視点で金属製日用品を評価しています。
1.使い勝手とユーザーエクスペリエンス
・滑りにくさ、持ちやすさ
・重すぎず軽すぎない絶妙なバランス
・スタッキング性や収納のしやすさ
これら機能面は図面や仕様書だけでは伝わりきれません。
現場で実際に触り「こういう使われ方がある」ことを想像する力が重要です。
2.空間になじむ美しさと差別化デザイン
・和洋どちらのインテリアにも合うシンプルな形態
・無垢の金属色、本物の質感や表情
・ロゴやブランドサインを控えめに入れ、主張しすぎない佇まい
店舗やネットで写真を見た瞬間に「これを暮らしに取り入れたい!」と感じてもらえる美しさが求められます。
3.安心・安全とサステナビリティの両立
・肌に優しい無害素材
・手入れのしやすさ、洗いやすさ
・再生可能資源やリサイクル性のPR
安全基準の取得や環境対応が今や不可欠です。
ここでも未来志向の要素と、現場対応力の両立が欠かせません。
現場視点で実践する「機能×美のバランス設計」
20年以上の現場経験から、具体的なアプローチ例を紹介します。
1.開発初期の段階から現場メンバーと意見交換
デザイナー、設計担当と工場現場のメンバーがアイデア段階からディスカッションを重ねることで、「デザイン的にカッコいいが、量産しにくい」「現場としては工夫できる」など現実解を導けます。
町工場の小規模企業でも、技術責任者を巻き込み「どうやったら作りやすいか、美しくできるか」を一緒に考えていく姿勢が、製品の完成度を大きく高めます。
2.量産段階での工程改善と最終品質の担保
金属製品は微妙な反りや歪み、傷が出やすい素材です。
装飾加工と最終仕上げ工程で、美的な仕上がりと機能性の両立を徹底するために、
・定量的な美しさの基準(艶、反射率など)
・加工跡などの許容範囲
・トレーサビリティや工程管理のシステム化
といった、現場主導のルール作りが有効です。
3.ユーザーレビューのフィードバックを現場に落とし込む
ECやSNSでの生のレビューは宝の山です。
例えば「洗いやすいけど、持ち手が滑る」「素敵だけど重い」などの声を、現場改善のきっかけにします。
工場現場とマーケティング部門が定期的に意見を交換するミーティングを設け、市場ニーズと現場の開発力を常に連動させることが重要です。
昭和から脱却、現場イノベーションの具体策
1.IT活用で設計-現場の壁を減らす
DX時代、CADデータを工場現場へリアルタイムで共有し、VRを活用したモックアップ設計なども導入が進んでいます。
小ロット多品種でPDCAを早回ししやすい製造体制を構築することで、より柔軟に美の追求ができる環境が生まれます。
2.多能工化と現場内コミュニケーション
古い分業体制ではなく、職人が複数工程を担当できる多能工化を奨励します。
「自分の作った部品が最終的にどのように“美しく”組み上がっていくのか」を理解できる人材育成が、全体の製品品質をワンランク引き上げます。
サプライヤー視点でバイヤーへの提案力アップ
サプライヤーの立場から「バイヤーが何を求めているか」を正確に把握することは、指名されるブランドへの近道です。
1.単なる仕様書提出ではなく“ストーリー提案”を
バイヤーは「なぜこのデザインなのか」「どんな現場の工夫があるのか」「生活がどう変わるのか」といった“物語”に価値を感じます。
製品一つひとつに、開発者や職人の想い、現場ならではの工夫エピソードを添えて提案しましょう。
2.現場見学会やワークショップの実施
バイヤーや実際のユーザーに工場見学、工程体験の機会を提供することで、金属日用品の裏側にあるこだわりを体感してもらえます。
「この会社なら信頼できる」と思わせるリアルな現場体験は、大きな差別化ポイントです。
まとめ:選ばれるブランドへの条件
金属製日用品のブランドとして顧客から「選ばれる」ためには、従来の“機能一点突破”では不十分です。
デザインと現場知識の融合、ユーザー視点の設計、現場での品質改善、そしてサプライヤーとしての誠実な提案力。
アナログ的な現場の良さを活かしつつ、新しい時代にも適応したイノベーションの積み重ねが、いつしか“美と機能”を兼ね備えたブランドとして市場に認められるカギとなります。
現場で積み上げた経験と知見を、これからも社会のため、未来のものづくりのために生かしていきたいと思います。
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