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OEM受託から自社ブランドに転換するための組織文化とマインドチェンジ

目次
はじめに:OEMから自社ブランドへ舵を切る理由
製造業の世界において、OEM(Original Equipment Manufacturer)受託は長らく安定したビジネスモデルとして多くの企業に選ばれてきました。
しかし近年、競争の激化やサプライチェーンのグローバル化、顧客ニーズの多様化を背景に、「自社ブランド」への転換を模索する企業が増えています。
この大転換は単なるビジネス構造の変更にとどまらず、組織文化や働く人々のマインドと深く結びついているのです。
本記事では、OEM受託中心の会社が自社ブランド事業に転換していく過程で必要となる組織文化の醸成や、現場目線で実践できるマインドチェンジの取り組みについて、昭和以来のアナログな風土が根強く残る製造業に特有の課題も交えながら、ラテラルに掘り下げていきます。
OEMビジネスモデルの強みと限界
OEMとは何か、その歴史的背景
OEMは他社ブランド製品の生産を請け負う形態で、製造業にとって安定した売上と生産量の確保が可能です。
「作れば売れる」「取引先に言われた通りに作ればよい」時代には、品質管理や工程改善、生産効率の追求こそが競争力の源泉でした。
OEMの限界:価格競争と差別化の難しさ
しかし1980年代から2000年代にかけて、グローバル競争が激化し、国内工場は中国や新興国との激しい価格競争に晒されることとなりました。
安定受注ゆえに「待ちの姿勢」、すなわち自社でマーケットを開拓する力や、新しい価値を創出する発想が育ちにくいという構造的な課題も浮き彫りとなりました。
サプライヤーも知っておきたいバイヤーの本音
発注側(バイヤー)の最大関心事は「コスト」「納期」「品質」ですが、その裏には常に「自社ブランドの価値向上」があります。
つまり、受託製造だけに安住していては、バイヤー側の要請次第で簡単に切り捨てられるリスクが常について回るのです。
自社ブランドへの転換がもたらす新たな可能性
ブランディングによる高付加価値化
自社ブランド事業は、製品の設計やマーケティング、販売チャネルの開拓まで、自社が一気通貫で手掛けます。
そのため、価格決定権を自ら持てると同時に、「顧客へ直接価値を届ける」という喜びも伴います。
経営の視点では、利益率向上や安定経営、人材育成の面でも大きなプラスです。
組織の意識変革が不可欠
OEMは「決まった仕様を効率よく作る」がゴールでしたが、自社ブランドへの転換では「市場起点で提案し、失敗も含めて挑戦する」ことが求められます。
これには昭和型の「前例主義」「減点主義」からの脱却、つまり組織文化・組織風土自体を組み替える必要があるのです。
昭和型組織文化から抜け出すためのキーアクション
守りの姿勢から「仮説・検証型」へ
生産現場では往々にして「これまで通り」「先輩のやり方を踏襲」といった空気が支配的です。
自社ブランド化には、現場の誰もが「なぜこの工程なのか」「どうすればお客様の課題を解決できるか」と日々考え続ける姿勢が必要です。
仮説を立てて検証し、たとえ失敗しても咎める文化ではなく「ナレッジ(知見)」と捉え、次に活かす土壌づくりが求められます。
全社視点での「価値観の再統一」
特に長年OEMメインで来た企業ほど、営業・開発・生産・品質管理など各部門が独立独歩になりがちです。
すべての部署がマーケット視点でものを考えるためには、「なぜ我々は自社ブランドを持つのか」「どんなお客様課題を解決したいのか」といった”ミッション・バリュー”を再定義し、全員が共有するプロセスが必須です。
社員一人ひとりを「共創者」に育てる
上意下達では主体性は生まれません。
朝礼やミーティングの中で「最近のお客様の声」「競合動向」などのマーケット情報をインプットしたり、定期的に”アイデアピッチ”や”失敗の共有エピソード”を発表する場を作ることで、現場主導の発想を生活習慣化させていくことが重要です。
現場主導イノベーションの実例とポイント
小さな改善を積み重ねる「現場からの提案文化」
私の経験上、工場の自動化や生産性向上も、最初は現場からの小さな気付きや提案に端を発することが多いです。
自社ブランド製品開発もまったく同じで、生産ラインで実際に手を動かしている担当者こそ、お客様に刺さる「使い勝手」や「現場で本当に困る点」に気付きやすい。
現場の声を拾いあげ、商品企画へつなぐ”フィードバックループ”を強化しましょう。
「組織横断」プロジェクトの立ち上げ
OEM事業では工程最適化や品質向上が独立して推進されがちですが、自社ブランド化では生産・開発・営業が一体となって素早く方向修正する「組織横断型」チーム作りが欠かせません。
月一回でも部門横断のミーティングを設け、「いま現場で起きているリアルな課題」「アイデアの種」を共有・検討する仕組みを作りましょう。
若手・中堅社員の「チャレンジ機会」を増やす
「どうせ変わらない」「言っても無駄」という空気がノウハウの陳腐化を招きます。
10年、20年選手のベテランだけでなく、若手や女性、技術職や販売・サービス部門の声を活かすプロジェクトにすることで、多様なアイデアや切り口が生まれます。
私自身、品質管理の現場から営業や企画側に”異動”したことで、全社視点・市場視点が身につきました。
人材の流動を促す人事戦略も大きなポイントです。
自社ブランドへの転換を阻む「よくある壁」と解決策
「時間がない」「人が足りない」問題へのアプローチ
通常業務と並行して新ブランド立ち上げ推進は、現場には大きな負荷です。
現場生産ラインや品質管理からプロジェクトリーダーを「期間限定」で選出し、思い切って専任あるいは兼任を明確化しましょう。
また、外部のプロ人材(コンサル・デザイナー・マーケター)のスポット活用も有効です。
失敗に対する恐れ、減点主義の打破
自社ブランドの最大のリスクは「作ったけど売れない」ことです。
しかし、OEMに安住し変革を躊躇するリスクこそ現代では最大の脅威です。
目標設定や人事評価も「チャレンジ姿勢」「仮説検証活動」に対する加点主義へと転換しましょう。
バイヤー側の目線に立つ発想法
OEM工程に携わる現場スタッフも、バイヤーがなぜその仕様を求めるのか、どのような価値基準で製品を見ているのかを知ることで、「マーケットイン」の意識が養われます。
ユーザーインタビューや営業担当との意見交換会などを積極的に設けると、受注生産体質への新たな気付きも生まれます。
これからの製造業に求められるリーダーシップ
現場の「心理的安全性」確保が最重要
現場が「自分の意見を言ってもいい、失敗も許容される」と感じられる環境こそ、イノベーションの最初の一歩です。
上司・管理者は、耳の痛い話にも真摯に向き合い、決して否定から入らないよう意識しましょう。
「選ばれるブランド」づくりの本質
最終的に重要なのは、組織全体が「お客様の課題の本質は何か」に敏感になることです。
単なるものづくりから一歩踏み出し、「自分たちだけの強み」「世界のどこで勝てるか」を考える習慣こそ、自社ブランドに魂を宿す原動力です。
まとめ:OEM経験を活かし、現代製造業の新たな地平へ
本記事で述べてきたように、OEM受託から自社ブランド事業への転換には、組織文化そのものの変革と、全社員が主体的にチャレンジするマインドチェンジが不可欠です。
昭和型のアナログな業界慣習が根強く残る製造業こそ、現場主導の細やかな改善力や、一人ひとりの「お客様志向」という武器があります。
既存の成功体験や常識にとらわれず、社員全員が共創・仮説検証型にシフトしていくこと。
その主体的な変化が、これからの選ばれる「ブランド製造業」への第一歩です。
OEMで培った現場力、品質管理ノウハウ、人と人との信頼構築力——この強みを最大限に活かしつつ、組織の新たな可能性に賭けて頂きたいと思います。
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