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試作回数を減らすための感覚と数値の橋渡しをする試験分析法

目次
はじめに:現場の悩み「試作回数が減らない理由」
多くの製造業現場では、「試作の回数をもっと減らせないか?」という悩みが常にあります。
試作は、商品品質の向上や不具合低減には不可欠ですが、増えすぎればコストも時間も膨大になり、市場スピードにも大きな影響を及ぼします。
ベテラン技術者の「この感覚だと上手くいくはず」という職人的勘と、設計図や仕様書に並んだ数字――いわば感覚と数値は、時に対立しながら現場に根強く残っています。
この二つの間にある「あいまいな距離感」と「深い溝」をどう埋めるかが、今こそ製造現場に問われています。
今回は、感覚と数値の橋渡しを実現し、試作回数の削減への鍵となる“試験分析法”について、現場の視点と最新動向を踏まえて解説します。
なぜベテランの“感覚”だけではリスクが高いのか
習慣化した職人芸の限界
製造業、とくに昭和から続く工場では、熟練作業者による「経験則」に大きく依存してきました。
これは素晴らしい財産で、その場しのぎではなく実際に多くの課題を乗り越えてきた歴史があります。
ただし、感覚には必ず「言語化できない」部分が残り、決定の背景が曖昧だと、再現性や標準化が困難になります。
グローバル化とコンプライアンスの壁
近年、大手メーカーは国内外のサプライチェーンにまたがった生産や調達体制を持つようになりました。
その中で、公平・透明な意思決定や、根拠ある品質保証が求められます。
「ベテランの肌感覚」だけで品質が良い・悪いと判断する時代ではなくなっています。
“数値”だけでも上手くいかない理由
現場のリアルを無視できない
一方で、AIやIoTによるデジタル化、各種センサの導入が進み、“すべてを数値で管理すればOK”と思われがちですが、実際の現場はそう単純ではありません。
装置に現れる微妙な振動や音、部品同士のわずかな干渉――こういった現象の背景には、まだ数値化しづらい「現場独特の情報」が含まれているからです。
数値基準の落とし穴
各種測定値や規格値だけで合否判定した場合、本当は改善の余地があるのに見逃してしまう、あるいは意味のない「基準達成」にこだわることで、不要な試作や手戻りが増えることもあります。
感覚と数値の“橋渡し”とは何か?
製造現場で「橋渡し」という言葉が鍵になります。
それは、ベテラン技術者が持つ“肌感覚”を巧みに数値やデータに置き換え、「裏付け」として論理的判断へ昇華することです。
また、逆にシステムや数値管理の裏側に隠れてしまいがちな、現場特有の勘所や小さな変化を数値として可視化し、「見える化」することでもあります。
試験分析法の重要性とその基本ステップ
1. 目的を明確化する
試作回数を減らすために、まずは「どんな質を担保したいのか」「何が現状の障壁なのか」を徹底的に洗い出します。
2. 感覚情報の構造化
ベテラン技術者が現場で着目している“感覚的な指標”――たとえば「この部品はいつもより柔らかい」「この音は正常時とわずかに違う」という感覚を、まずは丁寧にヒアリングして一覧化します。
3. 数値化・定量化の工夫
次に、その“感覚”をどのような測定器・手法で「数値」に落とし込めるかを検討します。
例えば、
– 触感→圧力センサや硬度計
– 異音→FFTによる波形解析
– 色味→分光光度計
といった具合です。
重要なのは、「正確に再現できる形」に落とし込む工夫、そこに現場ノウハウが活きます。
4. 実験計画法の活用とデータ解析
どのパラメータがどれだけ結果に影響するか、統計的な実験計画(DOE)や多変量解析なども活用し、相関性や因果関係を探ります。
こうした統計手法は、現場の感覚で「なぜだろう?」と感じていたモヤモヤの正体を突き止める強力な武器です。
5. 定量評価の見える化と再標準化
得られたデータや解析結果を分かりやすく図表化し、現場スタッフと共有します。
また、現場の全員が同じ目線で「この水準ならOK」「ここを超えたらNG」と判断できるよう、標準作業書やチェックリストに落とし込みます。
今でも昭和アナログ文化が根強い理由と、“橋渡し”の実践例
現場コミュニケーションの壁
特に昭和期に成長した企業文化では、現場スタッフと設計・開発部門とのコミュニケーションが形式的になりがちです。
これでは、職人の持つ暗黙知や勘所が十分に伝わらず、逆に設計側も課題の本質を掴みきれません。
サンプルケース:異音トラブルの数値化
ある中堅自動車部品メーカーでは、トランスミッションの異音評価で、長年ベテラン担当の耳頼りで合否が判断されていました。
工程改善のため、異音の質や頻度をFFT解析で周波数スペクトルとして数値化。
さらに、音響試験のデータベースと現場の感覚評価を突き合わせることで、“異常”の閾値を明確化。
その結果、無駄な再試作や手戻りが減り、新人スタッフでも同等水準の判定ができるようになりました。
試験分析法がバイヤー/サプライヤー関係にもたらす価値
現場共通言語の確立
数値化された試験分析データは、バイヤーとサプライヤー間で重要な「共通言語」となります。
感覚頼みの不明確な品質評価ではなく、客観的な数値根拠を用いることで、契約交渉も円滑になり、信頼感が高まります。
調達・購買の判断基準の確かな進化
バイヤーは、価格面に加え、こうした試験分析データを活用することで、“どのサプライヤーが真に安定供給できるか?”“どこに改善余地があるか?”を論理的に評価できます。
サプライヤー側も、現場技術者や営業が自信を持った証拠データを揃えることで、付加価値提案にもつながるのです。
工場の自動化・DX時代における試験分析の未来
AI・ビッグデータ活用の展望
今後は、現場で蓄積された膨大な試験・測定データをAIで分析し、過去の不具合発生パターンや傾向を自動抽出することが加速します。
その中でいかに「現場の感覚」をデジタルデータに置き換えていくかが求められています。
人とデジタルの共存がカギ
AI・ロボットが進化しても、現場で“気付く人”の存在は必ず必要です。
何が異常なのか、機械が気付きにくい初期兆候も、現場目線の試験分析が補完していくことで、真に価値ある自動化・省力化が実現します。
まとめ:試作回数削減のために、感覚と数値の“融合”を進めよう
製造業における試作回数削減は、単に作業を省略する・コストを下げるという短絡的なものではありません。
ベテランの“勘”と最新技術による“数値化”“データ化”をしっかり橋渡しし、現場のリアルと論理思考を融合した試験分析法が、今の時代には不可欠です。
バイヤー、サプライヤー、現場技術者――すべての立場が共通言語を持つことで、品質・コスト・納期の三位一体の改善サイクルが力強く回り始めます。
この“橋渡し”は一朝一夕で実現するものではありません。
現場で生まれる新しい感覚や知見を、丁寧なヒアリングとデータ収集で価値ある「数字」へと結晶化させていく。
この積み重ねが、製造業をさらに強く、持続的に発展させる原動力になるのです。
試作回数削減のため、ぜひ自社の“感覚と数値の橋渡し”を、今こそ本気で取り組んでみてはいかがでしょうか。
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