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京焼の繊細さを活かした現代食器ブランドのコンセプトと販売設計

目次
はじめに:京焼の伝統と現代性の融合
京焼は、400年以上にわたり京都で育まれてきた日本の伝統的な陶器・磁器です。
薄く軽やかでありながら、細やかな絵付けや高度な釉薬技術による表情豊かな美しさが特徴です。
しかしながら、時代は急速に変化し、生活様式や消費者嗜好も多様化しています。
一方、製造業界では「昭和」から大きく価値観が変わりきれず、伝統産業は新たな市場の開拓と収益の両立に苦戦している現状があります。
そのような環境下、京焼の持つ繊細さを生かしつつ、現代の食卓にも自然に馴染む新しい食器ブランドを立ち上げるにはどうすればよいのか。
本記事では、長年製造業と購買・生産の現場を見てきた目線から、ブランドコンセプト設計と販売戦略を具体的かつ実践的に解説します。
京焼の繊細さとは何か:アナログゆえの価値
職人技術と個体差が生み出す美意識
京焼の最大の特徴は、極限まで薄く成形する「薄造り」、細密な絵付け、繊細な色調変化にあります。
これは産業ロボットが主役の現代工場では再現が難しく、職人の手作業ゆえに一点ごとに微妙な違いが生まれます。
この個体差は大量生産品では「不良」とみなされがちですが、京焼では真逆です。
手仕事ゆえの表情は消費者に「世界で一つ」「自分だけのもの」という特別感を与えます。
それを最大限活かす商品設計が重要です。
アナログならではの工程管理の難しさ
例えば成形後の乾燥や窯詰め、焼成温度管理には「勘」や「経験値」が大きくものをいいます。
AIやIoTで完全制御できないアナログ工程が、むしろブランドの「物語」になります。
この製造背景こそ、新ブランドを差別化する大きな武器です。
現代食器としてのブランドコンセプト設計
現代ライフスタイルとの親和性を意識する
ライフスタイルの多様化により現代人は「使い回しやすさ」「収納性」「食洗器対応」も食器に求めます。
伝統美を活かしつつ、洋食にもマッチする形状やあえて無地に近いニュアンスカラーの選定、「重なりやすい形」「割れにくい厚みとのバランス」を意識することで、日常使いしやすい京焼食器が生まれます。
サスティナブルな素材・工程への配慮
若年層を中心にサスティナブル消費が広がる今、地元産の粘土利用、天然素材の釉薬そして廃棄時の環境負荷まで配慮した設計がブランド価値を高めます。
「伝統産業×エコ」は強い訴求ポイントになります。
ストーリー性をブランドコアに据える
買い手は「誰がどうやって作ったのか」「どんな思いを込めたのか」に共感します。
ベテラン職人と若手作家の協業や、製造プロセスをウェブや動画で可視化・物語化することで、製品の価値は一段上がります。
工場現場からは「技術継承」「多様な職人チーム」の裏話なども積極的に発信しましょう。
販売設計:流通・価格戦略とマーケティング手法
直販・ECと体験型小売のハイブリッドモデル
従来の問屋・小売店依存型から、自社EC・ポップアップストアを組み合わせた柔軟な流通モデルが現代で有効です。
ECでは商品の物語や職人映像をしっかりコンテンツ化し、体験型ストア(百貨店イベント、ギャラリー等)では「触れる/知る場」をつくりファン化を狙います。
価格戦略:ストーリーと量産バランスの両立
単価の高い一点ものと、デイリーユース向けセミオーダー(例えば色・絵柄選択可)、工業製品的な規格品までラインナップを調整します。
高価格帯は「共感プレミアム」として一貫したストーリーや限定性を、普及帯では「公正価格」「世代を超えるデザイン」「優れた耐久性」を明確に打ち出します。
プロ向けと一般向けの二軸展開
有名レストランでのコラボ、料亭やカフェへの業務用提案の一方、一般消費者には「贈る文化(ギフト)」や「自宅で料亭の気分」を訴求。
プロユースの実績は、一般客に「プロも認めるクオリティ」という信頼感をもたらします。
製造現場視点:調達・生産管理のポイント
原材料調達の地産地消徹底
伝統ブランドであればあるほど、材料のトレーサビリティやサプライチェーン管理が重要です。
地域内で粘土や薪、釉薬の原料を循環させることは、ストーリー性の強化だけでなく、サプライチェーンでのリスク低減にもつながります。
品質管理は「揺らぎ」もブランド資源化
アナログ職人技ならではの微細なゆらぎを「個性」としてどのように許容・管理するかが現代品質管理のポイントです。
「手仕事の証明書」「一枚ごとに違う表情を楽しむ」のように、品質揺らぎをリスクでなく価値と認識しマネージメントします。
コスト管理と生産効率のバランス
単純な流れ作業化が難しい京焼でも、準量産用のパーツ共通化や、工程ごとのデジタル補助(例:焼成温度管理のIoT化)を取り入れることで効率向上は可能です。
人手不足に対応した「外部委託工程」の戦略的活用も重要となります。
バイヤー視点で考えるブランド展開
時代を読むバイヤーの選定基準
現代バイヤーは「売りやすさ」「安定供給」だけを重視していません。
「独自性」「ストーリー」「SDGs貢献度」「長期的に伸びる要素(=現代消費者と親和性)」を重視します。
単なるデザイン性だけでなく、「なぜ今、京焼なのか」「この商品で人生や社会がどう豊かになるか」まで説明できるロジックが必要です。
サプライヤー側が押さえるべきポイント
・納期の安定性と柔軟な対応力
・製品の由来情報や生産背景の可視化
・店頭POPやデジタル販促ツールの拡充
・プロモーションやタイアップへの積極的な提案
これらをしっかり準備することで、バイヤーの信頼を得やすくなります。
サプライヤーから見たバイヤーの「本音」:現場目線のポイント
バイヤーは常に「顧客の声」「売上責任」「店頭展開のしやすさ」を意識しています。
そのため、「売りっぱなし」でなく、ロットごとの微修正や販促プラン、廃番リスク・クレーム時のスピード対応まで細かく見られます。
また、新規ブランドはPRや売場開設直後だけの売上で終わらせない「育てる提案」が重要です。
現場でどんな問い合わせやトラブルが起こりうるかまで想定し、対応策を事前準備しておきましょう。
まとめ:京焼の未来を開くために
京焼の繊細さや職人技は、今の時代の「ものづくり」への問いかけでもあります。
「古き良いもの」と「現代らしさ」は対立するものではありません。
どちらも深く理解し、新たな価値や体験を設計することで国内外にファンを広げることができます。
現場に根差した発想、業界の本音、変化への柔軟な対応力を意識しながら、新たな京焼ブランドの創出と販路拡大に取り組んでいただきたいと思います。
これまで培われてきた伝統こそが、変革の大きな武器となるのです。
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