- お役立ち記事
- 地場素材を現代の消費者に届けるためのプロダクトリデザインの実践法
地場素材を現代の消費者に届けるためのプロダクトリデザインの実践法

目次
はじめに――地場素材が持つ可能性と製造業の使命
地場素材とはその土地ならではの特産原料や伝統技術を指します。
木材、陶器、織物、金属、食品など、多岐にわたり日本各地に受け継がれてきました。
しかし、現代社会においては消費者ニーズの多様化、グローバル化、安価な代替品の台頭により、こうした地場素材は埋没しがちです。
一方で、持続可能性への注目や体験価値志向の高まり、サプライチェーンの再構築が叫ばれる昨今、地域素材・地域技術の「再発見」こそが日本製造業の新たな地平を切り拓く鍵となります。
「地場素材を現代の消費者にどう届けるか」――これはバイヤー、メーカー、サプライヤー、製造現場すべてに共通する、大きな挑戦です。
本記事では、昭和的なアナログ思考と、現代の製造業界が直面する現実、双方の視点から「地場素材のプロダクトリデザイン」の実践法を紐解いていきます。
プロダクトリデザインとは何か――単なるリニューアルではない本質
製造現場で「リデザイン」という言葉が挙がると、多くはパッケージ刷新やロゴ変更など、外観の手直し止まりになりがちです。
しかし本当の意味でのプロダクトリデザインは「消費者の生活や価値観の変化を読み込み、素材の良さを活かしながら製品・サービスとして生まれ変わらせる」ことです。
たとえば、伝統的な和紙。
昭和のまま、書道や包装紙として売ろうとしても市場は縮小するばかりですが、「柔らかさ・通気性・天然由来」の特徴を生かし、現代のインテリア素材やファッション、エコプロダクトに転用することも十分可能です。
プロダクトリデザインとは、
・本来の強み・価値(=地場素材固有の特長)を再定義し直す
・消費者課題や時代ニーズを現場がしっかりと捉える
・ブランドストーリーや体験価値も設計に組み込む
ことに他なりません。
昭和から抜け出せない製造業の現状とその課題
旧態依然の体質が現場の足かせに
地場素材の活用に向け最も大きな障壁となるのが、長年培われてきた「よそ者は受け入れない」「新しい使い方はご法度」「経験が絶対」「生地(素材)は分かっている人にしか扱えない」といった職人文化・商慣習です。
また、バイヤー部門も「前年踏襲」「既存顧客重視」「リスク回避型」の傾向が強く、サプライヤーがどんなに新しい提案をしても話が通らない、というケースが頻発します。
こうした昭和型の体質に現代的なマーケティングやデザイン思考を持ち込むこと自体が「異端」と見なされかねません。
現場起点のDXが進まない理由
多くの中小・地場メーカーでは、生産管理や品質管理も未だに紙ベース、「見て覚えろ」文化が息づいています。
IT/DXによる売上管理や在庫管理の刷新は一部進んでいますが、現場日報や生産原価、消費者フィードバックのシステム化は遅れがちです。
消費者の声や最新のトレンドをスピーディーに現場へ伝える仕組み自体が不足しています。
プロダクトリデザイン成功のカギ――現場から始まる変革
素材の物語を「消費者の文脈」で語り直す
地場素材のプロダクトリデザインは、「何を作るか」以前に「なぜその素材が現代生活に必要なのか」を掘り下げることから始まります。
それには、地域独自の歴史や地理、生産者の思いを素材・製品の背景として「消費者の言葉で」再解釈することが重要です。
例:ある岐阜の美濃焼タイルメーカーは、従来の内装・外壁向けだけでなく、抗菌性や耐熱性をアピールポイントに“お皿型スマホ充電ステーション”やペット用品としての転用開発に着手しました。
単なる用途変更でなく「美濃焼という文化を、現代生活の便利さと組み合わせる」という文脈で物語を再設計しました。
現場・サプライヤー・バイヤー間の“対話型開発”を徹底する
従来の調達購買プロセスは「見積もり依存・仕様渡し一発勝負」のような縦割り構造で動いてきました。
しかし、プロダクトリデザインでは素材そのものの活かし方を模索するため、現場の熟練者・バイヤー・営業・サプライヤー・デザイナー全員が、コンセプト段階からオープンに議論し、相互理解を深めなければなりません。
バイヤーにとっては、「売れるかどうか」だけでなく「素材や作り手の想い、ストーリーを伝えるにはどんな商品が良いか」を現場と考えることが次世代型バイヤーへの成長につながります。
消費者インサイトを徹底的に掘り下げるリサーチ体質
マーケティングデータに弱い、現場感覚優先の業種ほど、「消費者リサーチプロセス」の再設計が急務です。
小規模であってもターゲットインタビュー、ワークショップ、現地試用モニターなどを重ね、生の声を商品設計に反映する。
これによって、その地域素材でしか出せない独自の機能価値・情緒価値が商品コンセプトへと昇華されます。
調達・サプライチェーンの最適化――ローカルからグローバルまで
地場素材調達の「価値最大化」に向けた購買姿勢
従来の製造業バイヤーは「いかに安く原材料を買い付けるか」が第一でしたが、プロダクトリデザインではその姿勢を根本から変える必要があります。
すなわち「いかに価値のある地場素材とパートナーシップを築き、ともに独自価値を生み出すか」に軸足を移します。
価格だけでなく、供給の安定性、品質の再現性、地元コミュニティへの配慮といった多面的評価軸を設定する。
バイヤーは「Win-Winの調達」を通じて、素材のブランド化に貢献します。
生産管理・品質管理は「納得感」のある設計を
地場素材は性質にばらつきがある場合も多く、従来の画一的な品質基準では苦労することが少なくありません。
そこで重要なのが「徹底してユーザー目線、現場目線から品質基準のあり方を再定義する」ことです。
例えば多少の色違いや形状のばらつきを「味」として認め、むしろ個性としてブランディングに活かすこともプロダクトリデザインの重要な側面です。
最新事例に学ぶ――地場素材×プロダクトリデザイン成功のポイント
事例1:地域木材×住宅インテリア製品
北海道産カラマツを地元工房と連携し、独自加工技術で傷や湿気に強いフローリング材として商品化。
DIY向けパッケージやオンライン販売とも連動し、「地産地消のデザイン家具」ブームをけん引しました。
事例2:京丹後ちりめん×ハイエンドアパレル
もともと和装向けだった高級織物・ちりめんを、ファッションブランドと提携し現代的なジャケットやバッグなどにリデザイン。
織元の歴史やサステナビリティへの想いを取り込むことで、海外コレクションでも高評価を獲得しています。
事例3:瀬戸焼陶器×IoT家電
伝統工芸の瀬戸焼をIoT家電の外装パネル、音響拡散体として活用。
温かみ・意匠性・唯一無二の質感で差異化に成功し、工芸品の出口拡大・再ブランディングにつながりました。
まとめ――地場素材の価値を結晶化し、未来へつなぐ
プロダクトリデザインは、単なる製品刷新ではなく「素材そのものの新しい用途や価値を創造し、それを次世代顧客に届ける」ための現場改革です。
・昭和的価値観に固執せず、現場・バイヤー・サプライヤー間の対話型開発を推進する
・消費者インサイトを徹底的に分析し、マーケット・イン型の素材活用を進める
・品質管理や調達の考え方を現代仕様へとアップデートする
・小ロット・多品種時代における“価値最大化”に注力する
これらを愚直に積み重ねていくことで、地場素材は日本製造業の新たな牽引役となり得ます。
他社がまねのできない「地域と世界をつなぐものづくり」の一端を、私たち一人ひとりが担っているのです。
現場の知識とバイヤーの知見、サプライヤーの技術力が結集すれば、プロダクトリデザインの可能性は無限大です。
ぜひ、地場素材に眠る未来の種を一緒に発掘し、業界全体で育てていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)