投稿日:2025年10月30日

サービス業が初めて製品を作るときに最初にやるべき市場リサーチと需要検証のステップ

サービス業が製品開発に挑む前に理解すべき製造業のリアル

サービス業から初めて製造業へ進出しようとしている企業が近年増加しています。

DXの波やサブスクリプション型ビジネスの拡大により、従来の枠を超えたサービス展開が求められる時代となりました。

しかし、製品を作り、そして売る ― その現場は決して華やかなものばかりではありません。

特にサービス業出身企業が陥りやすい「思いつき製造」の落とし穴を回避するため、市場リサーチと需要検証のプロセスは最重要課題です。

本記事では、製造現場のリアルを交えながら、ものづくりの現場で20年以上磨いてきた視点から、実践的かつ本質的なリサーチ・検証ステップを解説します。

昭和型ものづくりの幻想を超えて: 製品づくりの出発点とは

まず、製造業の現場には「作れば売れる」という時代のパラダイム(昭和的思考)がまだ根強く残っています。

需要を正しく把握せず、とにかく現場に作らせる―その結果、死蔵在庫や赤字プロダクトが生まれ、事業撤退というパターンは今も多いのです。

サービス業発のものづくりプロジェクトでは、現場スタッフが「ものづくり=職人技」と誤解することもしばしばです。

ですが、ターゲット市場を知らずに開発を進めることは、暗闇で的当てをするようなもの。

逆に言えば、「市場リサーチ」と「需要検証」を正しく踏めたプロジェクトだけが生き残れるのです。

市場リサーチの本質:机上調査から現場感覚へ

1. 業界慣習とバイヤー視点―異業種目線のリサーチ強化

まず行うべきは、今いる自社の業界(サービス業)の常識をいったん脇に置くことです。

製造業の商流や意思決定プロセスは、バイヤー(調達担当)が主導する場合が主流で、サービス業の「エンドユーザー直接課金」構造とは異なります。

例えば、BtoB向け製品の場合、バイヤーが重視するのは品質の安定性、納期厳守、コストパフォーマンス、保守体制です。

この違いを理解していないと、いくら良いアイデアがあっても製品は選ばれません。

競合製品・旧来から使われている類似製品の仕様や販売チャネル、価格レンジ、取引条件なども念入りに把握しましょう。

2. アナログ現場の「現実」を肌で感じる:現場訪問のススメ

インターネットや市場レポートだけでは見えないアナログ現場の「当たり前」、たとえば、

– 手書き帳票が主流
– 人海戦術に頼る工程
– 無言の慣習(たとえば現場リーダーのみが製品選定の決定権を持つ)

など、現地に足を運ばなければわからない空気感や問題点が必ずあります。

可能な限り、「工場見学」や「現場面談」、「ユーザーインタビュー」といったフィールドリサーチを実施してください。

そこで現場作業者や購買担当者から「こんなものがあったら助かる」、「いま困っているポイント」を直接吸い上げるのが、成功製品の第一歩です。

3. 関連法規制・認証取得要件もリサーチの一部

特にBtoB向け機器やパーツを扱う場合、関連法規制(工業規格や輸出入規制)、製品認証(PSEマーク、RoHS対応など)は必須確認事項です。

せっかく開発しても「認証が取れなくて販売できない」では本末転倒です。

事前に業界団体や公的機関の担当窓口にあたり、しっかり下調べしましょう。

需要検証ステップ:理論から現場実証へ

1. 顧客ニーズ・ペインポイントの「現場ヒアリング」

市場リサーチで業界構造が見えたら、次は具体的なニーズ=需要予測です。

サービス業から初進出する際は、「自分たちが便利だと思う」ではなく、現場の声(バイヤーや作業担当者の悩み、要改善ポイント)を徹底的に聞きましょう。

サプライヤー視点で考えると、

– どんな場面で購入判断されるのか
– 本当に解決したい現場の「困りごと」は何か
– どのような条件で契約が取れるのか

こうした具体的検証項目をヒアリングリストにして、量的・質的なデータを集めます。

2. ペルソナ像の明確化と商流シミュレーション

どんな業種・職種のバイヤー、購買担当、現場責任者がターゲットなのか。

また、その組織構造や意思決定フロー(決裁プロセス)を図解化してみましょう。

例えば「中堅精密部品メーカー」なら、

– 決裁者は資材部長
– 現場担当者が新製品情報を吸い上げるが、技術部の評価も必要
– 値決めは購買部主導

といった具体的な情報がわかると、製品開発・販売戦略が大きく変わります。

3. MVP試作とユーザー評価―現場フィードバックの最速循環

「売れるかも?」と感じたら、最小限仕様でMVP(Minimum Viable Product)試作を作り、特定顧客に使ってもらいましょう。

ここで大事なのは、「不完全でもとにかく現場に持ち込む」こと。

サービス業の大手企業だと、完璧な完成品を求めがちですが、製造業の現場は「とりあえず一度使ってから本格導入を決める」ケースが多いです。

初期ロットの段階で

– どんな誤作動やトラブル要因が多いか
– コスト・納期の制約は現実的か
– 買い手の再発注意思はあるか

こうした情報を集めては、すぐに設計や提供体制にフィードバックしましょう。

現場目線でブラッシュアップを繰り返す、それが「需要検証」の本質といえます。

市場と現場、両輪で回す「新しい製品開発」のすすめ

1. 昭和型から脱却、ラテラルシンキングで攻めのものづくりを

変化の激しい現代ものづくり現場では、「前例踏襲」は衰退への一本道です。

たとえば現場へのAIカメラ導入やIoT化が進む中、本当に現場が困っているのは「過剰なデータ量で情報が活用できない」「予算や教育不足で最新化できない」といった現実的コストや運用課題です。

サービス業出身ならではの柔軟発想(ラテラルシンキング)で、製造現場特有の不便や仕様ギャップを埋めていくことが大切です。

そして、「将来必ずこうなる」という確信が持てない分野でも、まず現場に提案し、小規模でも実証テストを重ねる。

このスピーディな検証サイクルが、新規参入製品の成否を大きく分けます。

2. サプライヤー、バイヤー両面の思考を身につける

製造業はサプライヤー(作る側)とバイヤー(選ぶ側)で「見ている世界」が違います。

バイヤー側の思考は、「どんなベネフィットが得られるか」「品質・納期のリスクはないか」「万一のフォロー体制は十分か」などシビアな視点から評価されます。

一方でサプライヤー側は「所有技術」「コスト優位性」「生産キャパ」などに目が行きがち。

サプライヤーの皆さんはぜひバイヤー的な視点を、バイヤー希望者はサプライヤー的な考え方(どこに困難があり、どう技術で解決できるか)を身につけておくと、商談・提案・契約のあらゆる場面で強みとなります。

まとめ:現場に根ざした市場リサーチが製造業進出のカギ

サービス業からものづくりに挑む際は、既存業界の慣習や現場独特の「空気感」を無視して製品を作っても、まず売れることはありません。

業界構造・商流・バイヤー心理を深掘りし、現場の悩みや困りごとを「自分ごと」としてインプットしましょう。

MVP試作と現場テストを最短で回し、リアルな声を製品に反映し続ける。

この地道なステップと、ラテラルシンキングを活かした課題解決こそ、サービス業発の製品開発で成功するための最短ルートです。

製造業の「現場目線」と「業界動向」をしっかりつかみ、未来のものづくりを切り開いていきましょう。

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