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ポロシャツの襟がヨレないための芯地選定とプレス条件

目次
はじめに:ポロシャツ製造現場の「襟ヨレ」問題を徹底攻略
ポロシャツは老若男女を問わず愛される定番アイテムです。
その製造工程には、見た目以上に繊細な品質管理と熟練のノウハウが必要です。
特に襟の「ヨレ」は着用時のだらしなさや、商品価値の低下を招くため、現場では大きな課題となっています。
本記事では、ポロシャツの襟がヨレないための芯地選定と、最適なプレス条件について、現場目線の実践的な知見を交えて詳しく解説します。
調達購買や生産管理、品質管理に携わる方、バイヤー志望の方、サプライヤーの立場からバイヤーの要望を知りたい方にも、きっと役立つ内容です。
ポロシャツ襟の「ヨレ」発生メカニズムを理解する
なぜ襟がヨレるのか?工程ごとに原因を分解
襟のヨレは製品仕様だけでなく、原材料の選定、縫製、プレスから物流まで、各工程での小さな管理ミスの積み重ねで発生します。
大きく分けて次の4つの要因が挙げられます。
1. 襟用芯地の選定ミス
2. 生地・芯地の保管および裁断の湿度管理ミス
3. 接着(フュージョン)圧・温度・時間の管理不良
4. 縫製時のヒキツリ・ねじれ・テンションの不足
とくに昭和時代から続くアナログ現場では、感覚頼みの作業が未だ多く、明確な数値管理や工程標準化が不足しがちです。
芯地選定のポイント:襟ヨレ防止の基礎
襟用芯地に求められる3つの機能
襟がヨレない、つまり「立ちがよく、美しい形状を保つ」ためには、芯地に下記の3つの機能が求められます。
1. 適度なハリ・コシ
2. 洗濯耐久性
3. 生地との高い親和性(追従性)
芯地にも様々な種類と厚み(gsm)、接着剤のタイプ(ホットメルト樹脂、パウダー、ウェーブ等)、織り方(バイアス、不織布、織物)などがあります。
最適な芯地の選び方:素材・用途に合わせて
– 綿(コットン)・混紡生地のポロシャツには、しなやかで追従性のある織布芯地(バイアス入り)を選びます
– ポリエステル主体の速乾ポロシャツやスポーツ用途では、洗濯耐久に優れた不織布芯地が適しています
– 襟のエッジ部分がカールしやすい場合は、樹脂接着部の厚みとパターンに注意を払い、端まで均等に接着できる芯地を選定しましょう
現場ではサンプル制作時に複数の芯地サンプルを比較し、仕上がり・洗濯後の状態・肌触りをチェック項目化して、定量評価することが重要です。
襟芯地の接着条件:プレス温度・圧力・時間3要素の管理
現場でできる!最適なプレス条件の出し方
芯地貼り付け(フュージョンプレス)の工程は、襟のヨレ対策で最も重視すべき「肝」といえます。
ここでは、プレスの三要素「温度」「圧力」「時間」に着目します。
– 温度:樹脂芯地の推奨温度(140-160℃目安)をメーカーシートで必ず確認。
低すぎると接着不良、高すぎると生地が縮みます。
– 圧力:標準は2.5~3.5kg/cm2。襟全体でのみ均一な圧をかけること。
機械プレスならパッド・クッションを点検し、ムラ取りを。
– 時間:10-15秒を基本。他工程との「同時進行で忘れプレス」にならないよう、タイマー管理を徹底。
この工程も、アナログ現場では「感覚頼り」になりやすいですが、小バッチでプレス条件テストを行い、接着強度・外観・洗濯後の剥がれ等を記録しましょう。
ロットごとに条件検証、標準化し、スキルの属人化を避けます。
芯地の事前保管・湿度管理も侮れない
芯地や生地の吸湿による伸縮・しわもヨレの原因です。
使用前には、原反を24時間室温で順応させる「養生」を実施し、芯地・生地の繊維バランスを均等化することをお勧めします。
とくに多湿シーズンや、空調未整備工場では必須の管理事項です。
縫製工程での実践的なヨレ防止策
縫製テンションと送りの調整
縫製時の送りガイドやミシンテンションが適切でないと、せっかく芯地で強化した襟も、ヒキツリや波打ち状のヨレが現れます。
– 襟ぐり部分や端部は、送り歯・押さえの調整で生地を一定速度で送るよう調整します
– 特にオペレーターによる「引っぱり縫い」「押し込み」は厳禁
– 検針工程やプレス後の「冷まし作業」の中で微妙なズレがないか、必ず目視チェックを実施
工場現場では山積み工程が発生しがちですが、襟の成形直後は平積み厳禁、専用ハンガーやトレーなどで保管する環境整備も大切です。
量産現場で役立つ最新アプローチとトレンド
自動化とデジタル管理の導入例
近年の大手工場やOEMパートナーでは、プレスや縫製条件の自動化・デジタル管理が進んでいます。
温度・圧・時間をデータロギングし、品質変動時は自動アラートを発するシステムも登場しています。
また三次元測定器や画像処理による襟部の立体外観検査など、AI・IoT活用も始まっています。
これにより、経験値や職人技だけに頼らない「科学的なヨレ対策」が主流となりつつあります。
バイヤーが重視する品質基準と商談ポイント
バイヤーの心を掴む「芯地の説明」とアピール法
バイヤーがポロシャツの発注候補を選ぶ際、芯地や襟の仕様について次のポイントに注目しています。
– 製品仕様書に「芯地タイプ・接着方法・プレス条件」明記があるか
– 洗濯試験(JIS対応)のデータが添付されているか
– 量産品での「長期型崩れ検証」の実施有無
サプライヤーの方は、これらの情報を定量的なデータや現場写真を交えながら、資料化してアピールすると、バイヤーからの信頼度が格段に上がります。
調達購買の現場で起きる「芯地グレードダウン」への警告
コストダウン要求で芯地スペックを落とす「見えないコストカット」が横行しやすいのも実情です。
その結果、襟ヨレが頻発し、返品やブランド価値毀損に繋がるリスクが発生します。
調達担当者は、目先のコストより長期的な品質・クレームコストも見据え、芯地スペックの妥協は慎重に行うべきです。
また、生産管理担当者や工場長は「芯地スペックが変更された際は必ず量産前の再検証」を徹底しましょう。
まとめ:昭和的アナログから一歩抜け出す襟ヨレ対策
ポロシャツの襟ヨレ対策は、一つ一つの地味なプロセス管理と、原材料・工程全体の科学的アプローチによって初めて実現できます。
アナログ現場に根付く「経験と勘」も大切ですが、属人化を避け、標準化・データ管理を取り入れることで、「安定した高品質」が量産現場でも守られます。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの皆さんにとっては、現場の見えにくい「芯地選定」「プレス条件」の根拠と実践方法を知ることが、提案力や信用力の向上につながります。
現場でのトライ&エラーを恐れず、データと現物サンプルに基づく改善を積み重ねていくことが、昭和から令和への新たな地平線を切り開く道となるでしょう。
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