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スニーカーのかかと部分を補強するヒールカウンターの構造

目次
はじめに:ヒールカウンターとは何か?
スニーカーを始め、さまざまなシューズのかかと部分には「ヒールカウンター(Heel Counter)」と呼ばれる補強部材が存在します。
ヒールカウンターは見落とされがちなパーツですが、着用感や靴の寿命、足の健康状態にまで大きく影響します。
本記事では、ヒールカウンターの基本的な構造やその役割、ものづくり現場での最新動向、また今も根強く残るアナログ的な製法や、その背景まで現場で働くプロの目線から解説します。
スニーカー業界でバイヤーを志す方や、バイヤーの意図を知りたいサプライヤー視点の方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
ヒールカウンターの役割とその重要性
なぜヒールカウンターが必要なのか
ヒールカウンターは、シューズのかかと部を内側から包み込んで補強するパーツです。
主な役割は次の通りです。
・かかと部分の型崩れ防止
・足の後部をしっかりとホールドし、歩行時の安定性を向上
・過度な回内・回外を軽減し、怪我リスクを低減
・シューズ本体の耐久性を向上
このようにシューズの構造上、大変重要なパーツですが、ユーザー視点では見た目で分かりづらいため、その存在が軽視されがちです。
現場での体験:ヒールカウンターの質が製品品質を左右する
私が工場長を務めていたころ、ヒールカウンターの材質や接着の工程が製品の返品率に直結した事例が幾度となくありました。
「歩いているうちにかかと部分が型崩れする」「ホールド感が悪く、足がズレる」といった消費者の声があり、品質管理部門とも密に連携し改善に努めてきた経験があります。
つまりヒールカウンターの設計・製造精度は、リピート購入やブランドイメージにも大きく影響する重要ポイントなのです。
ヒールカウンターの主な構造と素材
伝統的な構造:アナログの強みと課題
昭和の時代から継承される多くの靴製造工場では、いまだアナログ的な製法が根強く残っています。
古くは「厚紙(クラフト紙)」や「革」を型抜きし、局所的な補強材として縫いこむ手法が主流でした。
この製法は加工の自由度が高く、かかとのサイズやデザインに応じて柔軟な対応ができるため、今も一部高級革靴やセミオーダー靴では現役です。
一方で、大量生産やサステナビリティへの要求が高まる中、クラフト的手作業は作業効率・品質安定性・コストの面で課題も残っています。
現代の主流:プラスチック系素材と成形技術
現在広く使用されているヒールカウンターの素材は、主に以下のものです。
・熱可塑性樹脂(TPR、PP、PETなど)
・不織布を含浸させた樹脂系複合材
・サトウキビやトウモロコシ由来のバイオマスプラスチック
これらは外部からの圧力に強く、かつ成形や加工が容易なことが特徴です。
ヒールカウンターの形状は「サンドイッチ構造」となることが多く、アッパー素材(表地)とライニング(裏地)にはさみ込みライニングとの一体化を図ります。
特にスポーツ用途では、より複雑な三次元曲面や独自の補強リブなどもデザインされ、足の形に合わせてフィット感と耐久性の両立が図られています。
ヒールカウンターの製造工程と現場のこだわり
成形から取り付けまでの流れ
1. 材料選定
2. ヒールカウンターの型抜き(または射出成形)
3. 加熱成形による立体化
4. アッパー部材とヒールカウンターの位置合わせ(この工程が最も重要)
5. 接着・縫製もしくは熱溶着による仮どめ
6. 最終組立工程で本体と一体化
現場ではわずかなズレや接着不良でも、最終商品に大きな影響を及ぼすため、寸分違わぬ位置決めや加熱時間など、長年の経験がものを言います。
生産現場での工夫とラテラルシンキング
一見定型的な作業が多く見える工程でも、本当に優れた現場ほどラテラルシンキングが発揮されています。
たとえば、短期間で型が変わる多品種少量生産の場合、組立治具を可変式にしたり、樹脂素材の「しなり」を活かして微調整の手間を減らした事例があります。
また、現場スタッフ自らが「この素材は気温で硬化スピードが変わる」など、五感を駆使して異常を素早く察知。時にはメーカー規格にない独自の温度管理方法を編み出し、不良率低減につなげてきたことも多々ありました。
近年の最新動向と求められるバイヤー目線
サステナビリティの波とバイオ素材化
環境負荷低減は、スニーカー業界でも必須テーマとなっています。
ヒールカウンターにおいても、石油系プラスチックから「バイオマスプラスチック」への切り替え、「リサイクル材」の積極採用が進行中です。
現場目線で言えば、おなじ外観・性能を保証しつつも、コストや調達ルートの多様化にどう目を向けるかがバイヤーとしてのセンスの見せどころです。
スマートファクトリー化とヒールカウンターの自動化事例
昭和的なアナログ体制からの脱却が叫ばれていますが、現場によってはすべての工程を自動化できるわけではありません。
しかしAI搭載のカメラ検査や、三次元スキャナーによる寸法フィードバック、IoT連動による材料発注の自動化などは着実に現場へ浸透しつつあります。
とくにヒールカウンターは製造ラインのボトルネックになりやすい工程ですが、要所で「人と機械のベストミックス」が素材特性を活かした安定生産につながっています。
サプライヤーとしてバイヤーが本当に求めていること
バイヤー目線では「いつでも調達できる安定供給」「価格競争力」「短納期対応」など分かりやすい指標が重視されやすいです。
しかし競合から一歩抜けたいサプライヤーにとっては、現場視点で語れる「柔軟なカスタマイズ力」や「製造工程からの提案力」が差別化ポイントになります。
たとえば「この新素材をヒールカウンターに導入するとどんなコストメリットや歩留まり向上が期待できるか」など、単なる要望の受け売りではない、現場課題解決につながる提案が高く評価されます。
また品質面では「JIS規格」「ISO」「RoHS対応」など、認証取得も重要ですが、実際のクレーム対応や継続的な改善活動、納入後のフィードバック蓄積が信頼につながります。
ヒールカウンターがもたらす“現場発イノベーション”
ヒールカウンター一つにも、技術やノウハウの積み重ねが活きています。
たとえば、従来の型押しや射出成形だけでなく、3Dプリンターによるプロトタイプ作成や、AIによる素材配合の自動最適化などは、現場発のイノベーションとして今後加速していくでしょう。
また現場で感じた課題やヒントこそが商品企画やマーケティングに活かされる時代です。
現場でものをつくる人、買い付けるバイヤー、そのニーズを満たすサプライヤーが三位一体となって“変化対応力”を高めていくことが、今後のシューズ業界を支える原動力となります。
まとめ:ヒールカウンターから学ぶものづくりの本質
スニーカーのヒールカウンターは、単なる補強材で留まらず、ものづくりの奥深さや現場力、顧客目線の重要性、そしてサスティナビリティやイノベーションへと話が広がります。
古き良きアナログ手法も、現代のデジタル自動化も、どちらも足元を支えています。
業界を牽引する方、これからバイヤーやサプライヤーとして成長していきたい方は、こうした現場目線の知識と問題解決力にぜひ着目してください。
ヒールカウンターを通じて、みなさんのものづくりがさらに躍進することを願っています。
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