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イオン液体と無機膜を融合した分離膜技術の応用と産学連携の可能性

目次
はじめに ― 製造業の現場から見た最新分離膜技術
工場生産の現場では、コスト競争力の確保と品質・生産性向上のため、絶え間ないイノベーションが求められています。
中でも分離・精製工程にかかるエネルギーとコストの削減は、メーカー各社共通の大きな課題です。
こうした背景のもと、「イオン液体と無機膜を融合した分離膜技術」が、今まさに注目されています。
本記事では、現場目線から見た技術の実践メリットや展望、更には日本の製造業に根付く産学連携の可能性について深掘りします。
また、バイヤーやサプライヤーなど調達・購買業務、ものづくりに関わる皆様が、今後どのようにこの技術と関わっていくべきかのヒントも提示します。
なぜ今、「イオン液体×無機膜」なのか?
従来型分離技術の課題
化学・食品・医薬・環境産業では、蒸留や抽出、吸着等の分離技術が長年利用されてきました。
しかしこれらには、
・高温・大エネルギー消費
・大量の溶媒使用と二次廃棄物の発生
・複雑なメンテナンス工程
といった課題がつきものです。
ひとつ間違いが起これば、不良率増加や工程トラブル、品質問題と直結してしまいます。
単体膜の限界と新提案
無機膜(セラミック膜やゼオライト膜など)は高耐久・耐薬品性が強みですが、分離選択性で課題を抱えがちです。
一方、イオン液体は親水性/疎水性の高度なチューニング性があり、特定成分の選択分離や、低エネルギー分離が可能になります。
イオン液体の「選択性」と無機膜の「耐久性・安定性」を合体したハイブリッド分離膜は、両者の弱点を補う全く新しいソリューションになるのです。
イオン液体/無機膜複合分離膜の原理と鍵技術
技術概要と仕組み
イオン液体は常温で液体状態を保つ塩で、多様な陽イオン・陰イオンの組み合わせで物性制御ができます。
複合分離膜は、
「無機多孔質膜の構造内部や表面にイオン液体層を保持」
して化学的・物理的な“マトリックス”をつくりだします。
これによって、従来型膜よりも
・特定成分の高選択分離
・耐熱・耐薬品・長寿命
・揮発性有機化合物、CO2、水分など多様な対象物質の処理
が現実的なものとなります。
主要分野での活用実例
実用例としては、
・精密化学品の有機溶媒分離/回収
・バイオマスや廃プラ由来資源のグリーンプロセス
・二酸化炭素の分離回収や水素製造/貯蔵分野
などでの応用開発が進んでいます。
着実に社会実装が広がりを見せており、従来の「大量のエネルギー・溶媒消費」を根本から覆すポテンシャルも十分です。
現場から見た導入価値 ― 生産管理・品質・コストの観点
生産性向上と設備投資効率
複合分離膜の導入で、連続プロセス化や省スペース化が容易になります。
また、無機膜の堅牢性により、現場でのトラブルや安定稼働率向上にも寄与します。
初期投資こそ従来よりやや高い場合もありますが、中長期的にはエネルギー/薬品コスト、メンテナンスコスト、製品回収率の向上によりトータルコストダウンが期待できます。
アナログ現場でこそ光るメリット
昭和型の「人海戦術」から「自動化・工程最適化」への一歩が必要なアナログ現場ほど、ハイブリッド分離膜の効果は大きいです。
例えば人手による抽出や精製、回収勘頼みだった分離工程を、IoTやセンサーと組み合わせて自動化することで、ベテラン技能のばらつき起因不良や品質ムラの削減にもつながります。
調達バイヤー/サプライヤー目線での新潮流
部材調達戦略のポイント
複合分離膜技術は、イオン液体原料・無機膜材料・膜成形装置など多様な部材調達が発生します。
バイヤーとしては、原材料の安定調達先の選定、品質トレース体制の構築、先進技術を持つベンチャー/スタートアップとの連携も重要なミッションとなります。
調達先開拓や、サプライヤーの技術力評価スキルが、一層問われる分野です。
サプライヤー目線:付加価値提案が要
単純な価格勝負よりも、「どのくらい現場課題や工程上の管理要件に応えられるか」が取引成立の成否を分けます。
特にカスタマイズ技術、高度な材料分析や膜構造設計力、アフターサポート体制の有無、が重要な付加価値となります。
サプライヤー自ら現場課題を把握し、能動的な改善案をバイヤー側に働きかけるような姿勢が求められます。
産学連携のリアル:進化を加速するパートナーシップ
オープンイノベーション実例の紹介
この分野は、“大学・公的研究機関 × 産業界”の共同開発が非常に活発です。
例えば国内外の国立大学が持つ分離膜の合成技術と、大手化学・素材メーカーの量産化ノウハウが掛け合わさり、社会実装が加速しています。
また近年は、既存の共同研究枠組みに留まらず、国や自治体の補助金/助成金、アカデミックベンチャーとの連携も進展しています。
期待される人材と組織カルチャー
こうした産学連携を支えるのは、従来の“たらい回し調整型”でなく、
・現場起点で課題設定ができる人
・ラテラルシンキング(水平思考)で新たな適用範囲を切り拓く人
・異分野交流や社内外の壁を越えるコミュニケーション力
を持つ人材や組織です。
日本の製造業が停滞した昭和型から令和時代へ脱皮するカギは、こうした人材育成や企業文化の転換にもあるでしょう。
今後の課題と展望
量産・コスト競争力の壁
現時点では、複合分離膜の安定大量生産と、低コスト化、耐久性向上が工業スケール展開の課題として残ります。
特にイオン液体の安定調達や、更なる環境負荷低減、安全性向上、新規用途開発といった多角的課題があります。
これらを着実に乗り越えていくには、産学融合の共同開発体制、現場改善の継続、サプライチェーン全体での知恵と工夫が不可欠です。
サステナビリティ時代の差別化要素
SDGs、カーボンニュートラルの潮流の中、従来型溶媒や高エネルギー消費の工程が規制強化される傾向にあります。
イオン液体と無機膜を使ったグリーン分離技術は、この厳しい時代の中で
「サステナブルな競争力の源泉」
となり得ます。
単なるコスト競争から、付加価値・環境価値を前面に出した新しい調達・開発戦略が今後の勝敗を左右するでしょう。
まとめ ― 現場から未来を切り拓くものづくりへ
イオン液体と無機膜の融合という分離膜技術は、日本の製造業が抱える「現場目線の課題」を力強く解決しうる画期的なソリューションです。
今後も、バイヤーとサプライヤー、そして現場技術者と研究者が力を合わせ、常に現場の変化、社会のニーズに敬意を払いながら新たな地平を開拓していくことが重要です。
昭和型アナログ現場を経験してきたからこそ、時代の転換を追い風に、これからも現場発のものづくり進化をリードしていきましょう。
製造業に関わる皆様一人ひとりが、“分離膜”というキーテクノロジーの可能性を最大限活かし、日本のものづくりの未来を支える担い手となることを心から期待しています。
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