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投稿日:2025年6月21日

海外発注プリント配線板の品質確保と管理のノウハウ

はじめに:グローバル化時代のプリント配線板調達の現状

製造業ではデジタル化、自動化が進む中でも、根強くアナログな慣習が残る業界文化があります。

その中でも、プリント配線板(PCB)の調達は、日本国内だけでなくアジアを中心にグローバル化が加速しています。

グローバル化のメリットは、コストダウンと生産キャパシティ拡大ですが、同時に、品質管理や納期遵守など新たな課題も浮き彫りになっています。

本記事では、製造現場目線で培った実践的なノウハウと、今なお昭和的な価値観が根付く業界動向を踏まえ、海外発注PCBの品質確保と管理の具体的なポイントを解説します。

現場のバイヤーの視点、これから調達業務を目指す方、サプライヤーとしてバイヤー心理を知りたい方、それぞれの立場に気づきやヒントを持ち帰っていただける内容です。

海外発注のプリント配線板で発生しやすい品質トラブルとは

なぜ国内と同じ感覚で依頼すると失敗するのか

PCBを海外に発注する場合、多くの現場担当者が「国内と同じ感覚」で依頼してしまい、思わぬトラブルに直面します。

たとえば、図面や仕様書を送れば「これで大丈夫だろう」と考えてしまいがちですが、海外サプライヤーは、日本独自のものづくり慣習や微妙な表記のニュアンスに疎いことが多いです。

納期や納品形態、部材指定、品質規格についても、国内基準とは異なる認識を持っています。

したがって、現地語・英語・日本語すべてで解釈齟齬がないよう入念な情報伝達が重要です。

主なトラブル事例

具体的なトラブル例としては、以下のようなものが挙げられます。

– パターンずれやショート、スルーホール不良などの初歩的品質不良
– ROHS・REACH対応など環境規制の見落とし
– 材料変更による特性劣化や信頼性問題
– 部品ハンドリング時の静電気対策・ESD管理の不備
– パッケージング方法による板面傷や曲がり
– 製造履歴・トレーサビリティ情報の不十分さ
– 不良原因調査(8D Report)や再発防止策の曖昧さ

これらは指示の細かさ、現地との認識合わせ、出荷前検査の体制、工場監査などで防ぐことができますが、アナログな慣習のままメール一本で済ませるなど、手を抜いたやり取りが後々大きなツケになります。

海外サプライヤーの品質意識と日本バイヤーのジェネレーションギャップ

海外の視座:スペック準拠重視、プロセス<アウトカム

東南アジアや中国などのPCBメーカーは、「スペック通りに作る」ことに主眼を置き、「なぜその要求があるのか(工程での理由や背景)」までは踏み込もうとしません。

日本で築き上げられた「品質は設計・工程・現場に宿る」「現場で見つけた気づきを設計へフィードバックする」文化とのズレが生まれる背景です。

また、納期内に規格どおり品物を納めることを重視し、現場改善やミス防止対策など、PDCAを主体的に回す意識が希薄なことも少なくありません。

バイヤー側で「常識」と思っていた細かな配慮、例えば基板表面処理の違いによるハンダ性、レーザー穿孔部のバリ管理、加飾・印刷の色指定精度なども、具体的指示を積み重ねなければ意図が伝わりません。

日本バイヤーの課題:昭和的な安心感依存からの脱却

一方、日本の調達側には「顔が見える」「電話一本で相手がすぐ対処してくれる」といった、昭和的な安心感・信頼感が根強く残っています。

しかし、グローバルサプライチェーンでは、メールやチャット、翻訳ソフトを使いこなし、論理的かつエビデンスに基づく対応力が求められます。

海外とのやり取りは想定外のことが多発するため、「言った・言わない」では解決できません。

すべての約束事、変更履歴をドキュメント化し、問題発生時も感情論ではなくデータで管理する「平成・令和型」の購買姿勢へのアップデートが必須です。

トラブル予防!現場で必ず押さえるべき品質ポイント

1. 仕様書・製造指示書の記載精度を高める

最初のボタンの掛け違いを防ぐためには、あらゆる仕様を「言葉」ではなく「図・数値・サンプル」で明示することが重要です。

部材グレード、厚み、銅箔の種類、表面仕上げの種類、耐熱グレード、環境規制対応(RoHS, REACH)、色指定、外形寸法等を“曖昧な言葉”ではなく、すべて数値と具体例で記載します。

特にフォーマットや単位系が異なる場合は、図面注記や写真付きマニュアルを活用しましょう。

2. サンプル提出と量産移行プロセス

いきなり一括大量発注するのではなく、必ず製造実力を見るためのサンプル(First Article)を製作させ、その検査・評価データをしっかり取得します。

寸法公差・見た目(外観)、電気特性、熱サイクル耐性など主な評価ポイントごとに、合否判定基準を数値で示します。

また、量産時は「1st lot」「2nd lot」…と時系列で各工程ごとのサンプリング検査を行い、工程の安定性を見極めましょう。

3. 工場監査・現場ヒアリングの実施

現地スタッフや品質管理責任者とのヒアリング、工場監査(現地またはオンライン中継)も極めて有効です。

従業員の教育水準、検査工程(抜き取りの頻度、管理機器の精度)、製造記録の保管状況、異常時対応の手順など、日本の「当たり前」が海外でも徹底されているか、目で見て確認します。

必要に応じて、自社フォーマットの監査チェックリストを作成し、「現場」に足を運べるのであれば、ラインの流れや不具合時の対応を直接確認しましょう。

4. 不具合発生時の初動・原因究明のシナリオ

仮に現品に異常や設計外の不良が見つかった場合、重要なのは「迅速な初動」と「再発防止策の設定」です。

海外サプライヤーでは、調査レポート(8D Reportなど)が形式的になりがちなため、必ず不良現品のデータ(写真・動画・検査報告書)を添付させ、再現試験・原因検証を第三者目線で要求しましょう。

また、代替品納入やリワーク体制の可否も含め、「対処のスピード」「専門家のアサイン状況」などで工場評価を見直す機会とすることが重要です。

バイヤー目線で押さえるべき管理ノウハウ

詳細なSCM管理:部品表・発注履歴・納期計画

海外調達では、物流リードタイムが長いため、端境期や繁忙期の納期遅延リスクを事前に想定する必要があります。

BOM(部品表)の構築、過去の調達履歴管理、Excelや専用ツールによる納期トラッキングを行い、予測精度を高めましょう。

また、サプライヤーごとに「定番ルール集」を作成すると、イレギュラー時の対応スピードが大きく向上します。

デジタルツールによるリスク低減と見える化

最近では、TeamsやSlackなどのコミュニケーションツール、PLM(製品ライフサイクル管理)システム、SCM(サプライチェーンマネジメント)ソフトの活用も進んでいます。

メールだけのやり取りだと情報が埋もれやすく、現地との「情報時差」すら把握できません。

ワークフロー化や進捗のダッシュボード化、異常発生時の自動アラート通知などの仕組みを取り入れることで、従来の「人頼み」管理から脱却し、属人性を排除できます。

契約・知財リスクへの備え

未だFAXや口頭での約束が残る業界ですが、海外調達においては、契約書(英語や現地語版)、知財権・データ取り扱いなど法的な備えも必要不可欠です。

品質異常や納期遅延で自社が損失を被る場合、明文化された契約条項が「最後の砦」となります。

また、回路図や意匠データの流出防止、二次使用の禁止など、契約段階で明確に記載しましょう。

サプライヤーの立場から見るバイヤーの本音

サプライヤーにとって、バイヤーの期待・不安・NGポイントが「見えない」ことは大きなストレスとなります。

しかし、バイヤーの本音は「安心して任せられる相手」なのか、「リスク先送りな相手」なのか、日常のやり取りで露呈します。

– イレギュラー対応や納期遅延時、すぐに情報共有してくれるか
– 品質トラブル時、曖昧なごまかしでなく事実ベースで説明できるか
– 契約内容や製造プロセス変更など、大事な約束事を文書化・エビデンス化できているか

これらに丁寧に応えられるサプライヤーは、間違いなくバイヤーからの信頼を獲得できるでしょう。

まとめ:昭和の慣習を超え、現場主義で品質を守る

海外発注プリント配線板の品質確保と管理は、従来の「お互いの信頼」や「阿吽の呼吸」では通用しない新時代に突入しています。

仕様明確化、初期サンプル実力把握、工場監査、ドキュメント管理、デジタルツール活用、契約管理など、「現場主義×論理主義」の両面を高度に融合することが必要不可欠です。

これは、昭和世代と平成・令和世代の知見を掛け合わせ、ベテランの経験と若手のデジタル対応力を一体化することに他なりません。

製造現場のノウハウは、日本の製造業の競争力の源泉です。

その知見を活かしつつ、グローバル競争時代の調達・品質管理を強化し、日本のものづくりを次世代へ継承していきましょう。

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