投稿日:2025年11月9日

ガラス皿印刷で感光剤のピンホールを防ぐ脱泡フィルタと撹拌管理

ガラス皿印刷における感光剤のピンホールとは何か

ガラス皿印刷は、工業用途はもちろん、家電や車載ガラスなど幅広い分野で必要不可欠なプロセスです。

特に近年は高精細なデザインや機能性印刷が求められるようになり、印刷現場では高い品質基準が求められています。

その際、感光剤を用いた印刷では、「ピンホール」という欠陥が発生することが大きな課題となっています。

ピンホールとは、印刷面に微小な穴や黒点が発生する現象のことを指します。

ほんのわずかな不純物や泡が、感光剤層に残ることで焼き付け工程で抜けやムラとなり、意匠性や機能性を著しく損なう原因になります。

ピンホールは微細なものであっても後工程で不具合検出されやすく、再印刷や廃棄コストが発生します。

ですから、これを未然に防ぐノウハウが、現場の品質維持には不可欠なのです。

なぜピンホールが発生するのか? 現場でのリアルな要因

ガラス皿印刷におけるピンホールは、主に「微細な泡」や「異物混入」「塗布時の気泡取り不良」によって発生します。

現場でよく見る要因は以下のとおりです。

感光剤の攪拌時に発生する気泡

感光剤は粉末や液体原料を混合し、一定時間攪拌(かくはん)する必要があります。

この工程で気泡が発生してしまうと、そのまま塗布・印刷時に残存しやすいです。

撹拌が不足すれば材料が均質にならず、撹拌が過多でも過剰な泡を抱き込みやすくなります。

脱泡工程と従来の課題

多くの工場では、「真空脱泡機」で材料を静置し、泡を抜いてから使用します。

昭和期から長らくこの手法が主流でしたが、実際には大きな泡は消えても、微細な泡や再付着した異物は残りやすいです。

また、設備や管理ルールが属人的になりやすく、脱泡の精度はオペレータの熟練度に依存しがちでした。

脱泡フィルタ導入によるピンホール低減の実際

そこで昨今注目されているのが、「脱泡フィルタ」の活用です。

これは撹拌・溶解後の感光剤をフィルタでろ過しながら充填することで、物理的に微細な泡や異物をシャットアウトする画期的な方法です。

実際に現場で使われている脱泡フィルタの種類

一般的なのは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やナイロン系の微細フィルタです。

1ミクロン以下のろ過精度を持つことで、気泡のみならずコンタミや未溶解物質も同時に除去できます。

フィルタハウジングはステンレス製や樹脂製で、充填設備に後付けすることも可能です。

脱泡フィルタの効果と検証例

現場での検証では、フィルタ非装着時と比べてピンホール発生率が10分の1以下に抑制できた事例もあります。

また、夜間や少人化運転でも一定の品質が保てるため、作業者のスキルに依存しない安定生産が実現できます。

「フィルタの目詰まりをどう管理するか?」もポイントですが、予防保全・交換タイミングをルール化すれば対応可能です。

撹拌管理の見直しがピンホール撲滅への近道

脱泡フィルタの力を最大化するには、上流の撹拌管理にも着目すべきです。

現場で「撹拌と脱泡を一緒くた」に考えているケースも多いですが、本来は全くの別工程です。

撹拌管理で重要なポイント

・撹拌の速度、時間、撹拌子の形状をレシピ化し、誰がやっても同じ結果となるように標準化すること

・もう一度「撹拌完了」の基準を再定義し、攪拌不足・過剰を防ぐこと

・撹拌後は一定時間静置するなど、泡の“上がり”を促進する措置も有効

現状管理票やハンドブックの見直し、現場での勉強会も欠かせません。

撹拌管理のデジタル化は進んでいるか?

実は多くの昭和型現場では、今も「目視」や「勘」が多くを占めています。

近年は温度センサーや粘度測定器を接続し、IoTで撹拌プロセスの自動記録・フィードバック体制を整える動きも出てきました。

バイヤーやサプライヤーの立場から見て、こうした「データに基づく品質保証」の意識は高く評価されます。

ピンホール管理は“入口”と“出口”、両面での徹底が肝心

ピンホール対策は、現場に根付いた「いきあたりばったり」ではなく、工程全体の見える化と標準化が求められます。

材料の「入口」と最終品の「出口」、両方で維持管理を徹底する必要があります。

入口での管理:フィルタ・撹拌・原料検査

材料入荷~攪拌~脱泡~塗布までの工程で、原料ロット・攪拌レシピ・フィルタ有無という3点をルール化しましょう。

ZEROディフェクト(不具合ゼロ)の思想を持ち込み、「OK」と判断できない材料は一切先送りしない姿勢が重要です。

出口での管理:ピンホール・外観検査の自動化

出口側では、カメラによる外観検査装置の導入で、ごく小さなピンホールも見逃さず検出できます。

目視や伝統的なライト検査との組み合わせや、AI画像処理と連動させたシステム化も進めましょう。

「どんな工程コントロールでも不良品はゼロにはならない」ことを念頭に、駅ごとの出口管理もセットで進めます。

昭和的アナログ現場での“現場感覚”の価値

ここまで科学的なプロセス管理の話をしてきましたが、やはり現場に根付いた「勘どころ」も重要です。

昭和時代から積み上げてきた、ベテラン現場の異常感知力は、ちょっとした色目・泡の変化などで工程異常を察知する大きな武器です。

ただし、その「秘伝のノウハウ」が属人化しすぎて「暗黙知」になってしまうのも問題です。

ベテランの気付きやポイントを若手や海外拠点にも形式知化し、標準作業や教育手順として残す仕掛けづくりが求められます。

デジタル技術で標準化・見える化し、ベテランの現場対応力で補強する。

この「ハイブリッド体制」こそ、昭和的体質を克服しながら競争力を発揮する唯一の道といえるでしょう。

バイヤー・サプライヤーの立場から重視すべきポイント

バイヤーを目指す方や、サプライヤーの方がバイヤー目線を知りたい場合は、以下の観点を押さえる必要があります。

なぜこうした管理が重視されるのか?

・完成品メーカーや最終ユーザーが厳しい品質保証を求める今、ピンホールのような種類の「微細な欠陥」も大きなリスクとなります

・工程起点での「原因管理」「再発防止策」を説明できるサプライヤーは、信頼されるパートナーとなりやすい

・データに基づく管理や、設備投資の裏付けを示すことで、価格だけでなく“安心感”も提供できる

結果として、単なる「安い材料」「早い納期」だけでなく、「高品質な工程保証・リスク対策」という付加価値が評価される時代です。

バイヤーを希望する方はこうした現場管理の視点を持ち、調達先選定や改善活動に役立てると良いでしょう。

まとめ:見えないピンホールを未然に防ぐ「工程力」が競争力を生む

ガラス皿印刷におけるピンホール対策は、見えにくい課題ですが、高品質・安定生産の要です。

脱泡フィルタの導入と撹拌管理の標準化、昭和から続く現場ノウハウの形式知化など、「入口」「出口」両面での徹底管理が現代製造現場の真骨頂です。

バイヤーもサプライヤーも、こうした“工程力”をアピール・把握することで、持続的なモノづくりと、お客様満足を実現できるのです。

昭和の良さとデジタルの良さを融合し、これからの製造業を担っていきましょう。

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