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ファッションTシャツの乾燥で柔らかさを保つための樹脂配合と硬化制御

目次
はじめに
ファッションTシャツは、着心地の良さやデザイン性、耐久性が要求されるアパレル製品の一つです。
とりわけ着心地の良さを大きく左右するのが、Tシャツの「柔らかさ」です。
この柔らかさは、単なる綿素材やデザインだけでなく、生地の仕上げ工程、特に樹脂配合や乾燥・硬化工程の制御によって大きく左右されます。
昭和から続くアナログ的な加工ノウハウと、現代のデジタル制御、スマートファクトリー化がせめぎ合う今、いかにして「柔らかさ」と「品質安定」を両立するのか──。
調達購買や生産管理、品質保証の実務目線で、具体的なノウハウや業界動向を交えて解説します。
現場が知っておきたいファッションTシャツの樹脂加工の基礎
柔らかさを左右する「樹脂加工」とは
Tシャツ生地の柔らかさをコントロールする上で要となるのが「樹脂加工」です。
この加工は、主に防縮、形状安定、感触改善(ソフト加工)などの目的で、綿やポリエステルなどの繊維に各種の樹脂(アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂など)を配合し、生地表面や内部に付与します。
樹脂は繊維内部に浸透、あるいは表面にコーティングされることで、手触りや弾力、しなやかさを付加します。
同時に、乾燥・硬化工程でこの樹脂を如何に制御するかが、生地の「ガサつき」や「柔らかさ」に直結します。
アナログ現場の暗黙知と現代のスマート制御
日本の伝統的なアパレル加工現場では、経験豊富な職人が「手触り」で柔らかさを判断し、乾燥温度や硬化時間、樹脂濃度を微調整してきました。
一方、海外量産や大手工場では、温度・時間をPLCやIoTデータで徹底管理し、再現性と歩留まりを重視します。
しかし、完全なデジタル化が柔らかさを必ずしも保証するわけではありません。
むしろ、現場の「勘どころ」や「リカバリー力」が、ライン異常や素材バラツキの際の品質維持に今でも有効です。
柔らかさに影響を与える主な樹脂と配合ノウハウ
主流となる樹脂の種類
現在、ファッションTシャツの樹脂加工で主に利用されるのは以下の3種です。
1. アクリル樹脂
汎用性が高く、ハリコシとソフト感のバランス調整がしやすいです。
短期間で硬化し、染色後の色持ちにも優れます。
2. ポリウレタン樹脂
高い伸縮性と弾力を材料に与えます。
フィット感や滑らかな手触りを重視したTシャツで多用されます。
3. シリコーン樹脂
最高レベルのソフト感を追求する場合に選ばれます。
すべり感、シルキーな肌触り、速乾性も向上します。
いずれも純粋にソフト感だけを追求するとコスト増・耐久性低下のリスクがあり、商品ターゲット、販売価格、ロット品質に応じた配合設計がポイントです。
業界現場ならではの配合コツ
特に昭和から続く老舗加工場では、次のような知見が受け継がれることが多いです。
– 樹脂のベースをアクリル一択にせず、ポリウレタン10%やシリコーン5%など微量添加で極端な「硬さ」や「ベタつき」を緩和
– 素材(オーガニックコットン、リサイクルポリエステルなど)のパティキュレイションによる樹脂吸着率の違いを事前測定し、溶液濃度を微調整
– 酸化・劣化対策として紫外線吸収剤や抗菌剤を低濃度配合し、柔らかさと機能性をバランスさせる
乾燥・硬化工程の制御が柔らかさと量産の命運を分ける
乾燥温度・時間の設定パラメータ
Tシャツ生地の柔らかさを維持したまま大量生産するために、以下のパラメータ管理が重要です。
– 乾燥温度:
60〜140℃の間で、素材・樹脂の種類ごとに最適値を設定します。
特に高機能Tシャツは過加熱(焼き過ぎ)による「パリパリ感」防止が重要です。
– 硬化時間:
短時間硬化(熱風トンネル式)は量産に適しますが、樹脂が繊維内部まで十分に反応せず、表面がガサつくリスクがあります。
逆に長時間硬化(コンベヤ乾燥)は柔らかさを維持できますが、生産性がやや低下します。
– 樹脂の定着:
乾燥直前で生地含水率を10〜25%に管理すると、樹脂が繊維深部まで浸透しやすくなります。
これは職人技だけでなく、近年はIoT計測器でのリアルタイム監視・制御にも活用され始めています。
よくあるトラブルと対応策
現場では以下のようなトラブルが頻出します。
– 生地ごと・ロットごとで柔らかさいちじるしく異なる
– 表面は柔らかいが数回洗濯で硬化感・パサつきが出る
– 一部が縮み・よじれ・色ムラになりリワーク不可
こうした場合、調達購買や生産管理担当者が抑えるべきポイントは、納品先のバイヤー目線に立った「均質性」と「安定供給」であり、次のような改善策が有効です。
– 樹脂加工前に必ず小ロットで試験乾燥し、現場作業者が「手触り」確認
– ロットごとに生地サイドのパラメータ(厚み、含水率、組成)をデータ化し、ライン調整
– 重要な工程はIoTセンサーでリアルタイム記録し、不良ロットの追跡性を確保
バイヤーが求める「柔らかさ」の本質と提案力
「柔らかさ」だけでは選ばれない時代
ここ数年、バイヤーやブランド企画担当者が求める「柔らかさ」は単なるふんわり感だけではありません。
消費者「触感評価」に加えて、「洗濯耐久性」「サステナ ビリティ素材」「イージーケア性」など、多面的な品質基準が求められます。
また、制服・スポーツウェアなど大量調達案件では「供給安定性」「仕様の再現性」が重視されます。
したがって、サプライヤー側は
– 樹脂のグリーン調達
– 不具合解析・是正事例の開示
– 長期継続ロット時の調整履歴
など、「見える化」「説明責任」「変更管理」の提案力を持つことで、バイヤーからの信頼度が格段にアップします。
バイヤーを目指す方へのポイント
ファッションTシャツのように品質バラつきが消費者の満足度に直結する製品の場合、単なる「メーカー選定」だけでなく、
– どこまで柔らかさにこだわるのか(ターゲット顧客層の分析)
– サプライヤーの現場管理体制・データ管理力の評価
– 自社アセスメントやフィールドテストの活用
など、品質保証部門と一体で「仕組み」と「現場の実力」双方を見抜く目が要求されます。
今後の業界動向と現場へのヒント
デジタル化だけでない“昭和力”の価値再発見
スマート工場化、DX活用が全盛の今でも、Tシャツの柔らかさを極めるためには「手触り評価」「五感品質」が求められ続けています。
特に、素材変更、SKU増加、多品種少量対応では、「現場での微調整」「不良時の即応」など、経験値に基づく判断が不可欠です。
今後の調達購買・品質管理現場では、
– データ・自動化とアナログ現場のノウハウ蓄積(動画記録、匠インタビューなど)の両立
– バイヤーや大手ブランドと「共創」する商品開発プロジェクトへの参画
– サステナ対応と各種法規制(GRS、OEKO-TEXなど)の遵守強化
がますます重要となるでしょう。
まとめ
ファッションTシャツの柔らかさは、最適な樹脂配合設計と乾燥・硬化工程の高度な制御から生まれます。
伝統的なアナログ現場の知恵と、IoTやスマート工場のデジタル化ノウハウの融合が、高品質・高付加価値Tシャツ量産を可能にします。
バイヤーを目指す方もサプライヤー側の方も、「現場でどのようにして柔らかさが生まれ、どんな管理が求められているか」を知っておくことは、今後の競争力強化に直結します。
昭和から続く現場ならではの柔軟性と、時代の変化に強い新しい取り組みをバランスよく組み合わせて、より高品質なファッションTシャツづくりに貢献しましょう。
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