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リブ付きTシャツで縫い目ズレを防ぐためのテンション調整と治具設計

リブ付きTシャツで縫い目ズレを防ぐためのテンション調整と治具設計
はじめに:現場で生きるリブ付きTシャツの課題
リブ付きTシャツの生産ラインにおいて、縫い目ズレはよくあるお悩みごとです。
アパレル工場だけでなく、製造業全体に共通する「安定品質」「作業標準化」「不良低減」といった本質的テーマの中でも、とくにリブ付きTシャツの縫製は熟練工ですら難しさを感じます。
昭和から令和へと時代が進んでも、現場ではアナログ的ノウハウに頼ることが多いのが実情です。
この記事では、私が長年の現場経験で培った知見をもとに、縫い目ズレを防ぐための「テンション調整」と「治具設計」のコツを、実践的かつ誰でも取り組みやすいかたちで解説します。
そもそもリブ付きTシャツの縫い目ズレはなぜ起きるのか
縫い目ズレのメカニズムを理解することが品質改善の第一歩です。
Tシャツの首回りや袖口に使われる「リブ」は本体部分と比べて伸縮性が高く、その張力(テンション)が意図せず安定しないまま縫製現場に流れることが珍しくありません。
リブを過剰に引っ張ると吊れや波打ちが発生し、一方でテンションが弱すぎる場合は縫い合せがたるみ、仕上がり線が乱れやすくなります。
さらに、素材自体の差や裁断時の微妙なばらつき、ミシンの送り・針送りのちょっとしたムラが原因となり、仕上げた時にリブと本体の縫い合わせ目が曲がったり、ねじれたりします。
現場目線で見るテンション調整の本当の難しさ
テンション調整はマニュアル化しにくく、作業員の「手の感覚」に任せるケースが多く見られます。
例えば、ベテラン縫製者が「このくらいの引き具合だな」と経験や勘で良品を作れる一方、初心者や異動者が同じ工程に入ると納期ごと・生地ごとに不良率が大きく変動してしまう点が業界の根深い問題です。
テンション調整の重要性は理解されつつも、機械的な仕組みやルールで統一しきれず、人依存から抜け出せない現場が多いのです。
昭和アナログ現場の知恵:テンション管理の“勘”と“コツ”
私の現場経験上、テンション調整は「数値管理」よりも「体感値管理」が主流です。
以下に代表的なアナログ手法を紹介します。
1. 手ざわり比較法
縫製前に必ず本体生地とリブ生地を手で引っ張り、手ざわり強度を毎ロット・毎反で比較します。
2. 張力基準補助テープ用意
決められた長さのメジャーテープを使い、現場サイドで都度確認しながら仮留め位置決めを行います。
3. ピン打ち補助法
ズレ防止のためあらかじめピン打ちや仮糸留めを増やして、「引っ張りすぎ」を防ぎます。
これらは一見非効率にも思えますが、機械で完全自動化しにくい素材特性や、人の微妙な感覚を補うものとして“現場力”として根付いています。
テンション調整を数値化するアプローチ
ここ数年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波はアパレル業界にも押し寄せています。
現場のアナログ的知恵と、デジタル計測・記録を組み合わせることで、誰がやっても同じ品質が出る環境への変革が進行中です。
具体的なアクションを紹介します。
・リブテンション測定器の導入
簡易なバネばかり式やロードセルセンサーで、リブ引っ張りテンションを定量管理します。
・工程ごとのテンション記録表の運用
毎ロット・毎品種ごとに増減や変動履歴を記録し、次回生産時の基準とします。
・作業者教育への記録活用
テンション値と不良発生率を突合し「どれくらい引っ張ったら不良が出にくいか」を視覚化します。
こうした工夫によって、誰でも同じテンションで仮止め・縫製ができるよう訓練・標準化が進みます。
治具設計による縫い目ズレ防止のポイント
テンション管理とともに、物理的な治具(ジグ)の設計も不良削減の肝です。
縫い目ズレ防止治具について、現場実例を紹介します。
・リブ自動テンション送りガイド
ミシン台上に専用のリブガイドを設置することで、一定の摩擦・加圧でリブの送りテンションを自動保持します。
・リブ仮止め専用定寸治具
首回りや袖口の円周に合わせた寸法定規治具で、リブ長さの過不足を機械的に調整できます。
・縫製前ピン位置ガイド
ピン打ち用スリットやガイドシートを用意し、初心者が貼り付けズレしないようにサポートします。
これらの工夫は、“一人職人技”から“チーム生産”の現場へ移行する際にも役立ち、大量生産における安定品質の確保へ大きく貢献します。
治具設計を成功させる現場視点の4つのコツ
1. どの工程で誰が使っても迷わない(ユニバーサルデザイン化)
2. 材質や効率・安全性も踏まえて設計する(手や生地に優しい素材選定)
3. 現場スタッフから意見を集めて都度改善(現場主導のカイゼン活動)
4. 毎日の清掃・点検しやすさ(運用面も設計段階から考慮)
特に「③現場主導のカイゼン」は、現場の実情を知るスタッフの声を取り入れることで、効果的な治具設計へとつながります。
バイヤー・サプライヤー視点で見るテンション・治具管理
調達購買・バイヤー側であれば、品質保証観点からサプライヤーの「標準化状況」を確認することが重要です。
例えば、「治具設計書の有無」「テンション管理記録簿の開示」「テンション測定器の校正履歴」など、現場管理ドキュメントの取得が、不良低減や納期遵守の担保につながります。
サプライヤー側は、バイヤーにこうした標準化の取り組みやカイゼン改善事例を積極的にアピールして信頼獲得を目指すべきです。
また、「どんな治具・補助器具を現場で活用しているか」「作業員教育状況」も“数値化”や“実例写真”でわかりやすく伝えることが、新規受注・取引拡大にもプラス要素となります。
今後の現場が目指すべきDX×現場力の融合
技術革新が進むDX時代、AIやIoT、画像認識なども徐々に現場へ入り始めています。
例えば、
・画像解析による縫い目ズレの自動検知
・縫製ミシンと連動したテンション自動制御装置
こうしたソリューションを現場知恵と融合させることで、さらなる不良率削減、人手不足対策、リードタイム短縮が現実のものとなります。
まとめ:現場改善は今この瞬間から始められる
リブ付きTシャツの縫い目ズレ防止は、「テンション調整」と「治具設計」を地道に見直すことで大きく改善できます。
アナログ現場の知恵を尊重しつつ、デジタルや標準化の力を取り入れることで、誰でも高品質なモノづくりが叶う現場へと進化していきます。
この記事が、製造業の現場改善のヒントや、調達購買・バイヤー・サプライヤー各視点での課題解決の参考になることを願っています。
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