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陶器プレートの印刷で発色ムラを防ぐための加熱乾燥プロセス設計

目次
はじめに
陶器プレートはその美しい絵付けや独特の色合いで、多くの食卓や空間を彩り続けています。
しかし、こうした陶器の魅力を最大限に引き出すためには、印刷後の発色ムラをいかに防ぐかが非常に重要です。
特に加熱乾燥工程の設計は、安定した品質と生産効率の両立に直結します。
この記事では、20年以上製造現場で培った知見を基に、現場で役立つ実践的なノウハウと、これからの工場自動化やDX化を見据えた考え方を共有します。
今もなお続く、陶器印刷現場の“昭和的”課題
なぜ今でも「発色ムラ」が発生しやすいのか?
陶器プレートの印刷工程は一見、単純な作業だと思われがちです。
しかし、現場では印刷インクの性状はもちろん、陶器素地の吸水性や表面状態、乾燥環境のわずかな違いまでもが発色ムラを生み出す要因となります。
特に、昭和から引き継がれた伝統的な手法や設備が根強く残る現場では、「経験と勘」に頼ったプロセス管理が主流であり、これがムラ発生の根本原因となりやすい状況です。
アナログ現場にありがちな改善の壁
例えば、加熱乾燥の温度設定ひとつを取っても、「先輩がこう言っていた」「この温度帯が昔からのやり方だ」といった属人的な手法が残っています。
現場作業員の肌感覚に頼りがちで、工程の標準化や再現性確保が難しくなりがちです。
このような昭和的組織文化や非デジタルな管理体制は、顧客の品質要求が年々高まる現在、明確なボトルネックの一つになっています。
発色ムラの発生メカニズムとその本質
陶器プレート印刷における発色ムラの具体例
発色ムラとは、陶器プレートの同一面において期待した色調・濃度が均一に表現されない現象を指します。
以下がよくある発生パターンです。
– 同一ロットなのに色の濃さが微妙に違う
– 絵柄の一部だけザラつきや薄さが目立つ
– 端部だけがぼやけたり濃すぎたりする
こうしたムラが発生した製品は、不良品となり返品やクレームの対象となるリスクが高まります。
印刷から加熱乾燥までの一連管理がカギ
発色ムラは印刷工程のインク転写ミスだけが原因とは限りません。
むしろ、「印刷→加熱乾燥」までの一連管理がバラバラだと、リカバリーが効かずムラ発生率が上がります。
例えば、インクの物理分離(顔料とバインダーの層分離)、水分と有機溶剤の揮発差(乾燥速度ムラ)、さらには乾燥炉内の温度・風速の局所ムラなど、複合的な要因が隠れた発色ムラを招くのです。
最新の工場管理が提案する、加熱乾燥プロセス設計のポイント
「理論」と「現場感覚」の融合を目指そう
これからの現場が目指すべきは、理論に裏付けされた標準化と、実際の現場で使える“微調整の許容”を両立することです。
属人的なノウハウと最新技術を融合させるため、「なぜこの工程が必要なのか」「なぜこの温度・時間なのか」を現場メンバー全員で理解し合うことが肝心です。
1.インクの物性理解から始める
まず大前提は、印刷に使うインクの組成や乾燥挙動をメーカー情報だけに頼らず、実際の炉の挙動と結び付けて捉え直すことです。
インクは顔料・バインダー・溶剤が絶妙なバランスで配合されています。
加熱中の温度上昇カーブでどの成分が何度で揮発・硬化し始めるか、加熱し過ぎると何が起きるかなど、ラボ試験と現場検証の繰り返しで地道に把握することが大切です。
2.乾燥炉の温度分布・風量を徹底分析
次に、実際の乾燥炉の温度分布・風量分布を点検します。
昭和時代から使っている場合、炉内の温度ムラやホットスポットが放置されていることが多いです。
温度データロガーと熱画像カメラを活用し、複数点で同時測定することで、理想的な曲線加熱が得られているかチェックしましょう。
特に、炉入口・出口の温度落ち込みや、ベルト搬送による熱の持ち込み・持ち出しを見逃しがちです。
3.最適な昇温プロファイルを設計する
陶器プレートの場合、急激な昇温・冷却はひび割れや焼きムラの要因になるため、「予熱→本乾燥→アニール(冷却)」の三段階でプロファイルを設計するのが一般的です。
近年はIoT機器を導入して、リアルタイムでロギング監視し、小さな異常や傾向変化も即座に把握できる体制が進んでいます。
昇温速度・到達温度・保持時間・炉の搬送速度などは、現場での微調整を標準作業として落とし込み、NG時のフィードバックループを必ず作ることが大事です。
4.人の作業バラツキにも着目しよう
炉や機械設備がどんなに均一でも、仕込み(投入)作業や引き出し作業が属人的だと、加熱プロファイルに乱れが生じます。
手動投入の場合は「姿勢・投入高さ・プレート重なり」などの標準化も忘れずに。
完全自動化が難しいなら、カメラ認識と人の作業分析を組み合わせた手順改善から始めるのも有効です。
バイヤー視点・サプライヤー視点で考えるプロセス設計
なぜバイヤーは発色ムラの「再現性」を重視するのか
バイヤー(調達・購買担当者)は、コストやリードタイムだけでなく製品の「安定供給」と「品質再現性」を最重要視します。
再現性とは、同じ発注条件で全く同じ仕上がりの製品を納入できる力を指します。
乾燥炉の管理状況や加熱条件の記録データが求められるのもそのためです。
安定した納品ができる工場は、顧客から信頼を得やすく、新規案件や大口案件を獲得しやすくなります。
バイヤーのニーズを読めるサプライヤーになるために
発色ムラの管理は一見、現場の技術者やオペレーターの関心領域に見えます。
しかし、実際には調達先選定(サプライヤー評価)でも「品質マネジメント能力」「異常対応プロセス」が問われます。
バイヤーが見ているのは、「再発防止力」「見える化力(管理データ提出)」など、調達・品質保証部門との信頼関係を構築しやすい“現場力”です。
自社だけでなく、お客様工程まで踏み込んだQCD管理が強みになります。
アナログ現場でも根付くべき、プロセス設計の新潮流
ヒトとモノと情報をつなぐ仕組み作りを
陶器プレートの発色ムラ対策においても、IoT導入や自動記録化は避けて通れません。
しかし、大規模投資や大掛かりなシステム刷新よりも、“いま現場にある資産・人材でどう連携しやすくするか”がスタートラインです。
例えば、毎日の炉温ログをエクセル管理からクラウド化する、異常発見時のフィードバックミーティングを定例化するなど、小さな改善でも持続的に実践が重要です。
属人的なノウハウからの脱却、そして標準化へ
伝統と最新技術の融合こそ、次世代の製造現場の生き残り策です。
昭和から続く“達人”の経験則を、見える化・言語化して現場に展開する。
そのうえで実際の数値・データと組み合わせて、誰でも安定して運用できる標準作業とする。
これこそが「高品質安定供給」を実現する最短ルートです。
まとめ
陶器プレートの印刷で発色ムラを防ぐ鍵は、加熱乾燥プロセス全体を俯瞰し、「なぜその条件なのか」を現場全体で合意し合うことにあります。
インクや設備の理解はもちろん、人の作業や情報共有の仕組み作りも大切です。
バイヤー(顧客)は、その現場力と標準化の力まで見ています。
アナログな現場にも、ラテラルシンキングと現場主義を融合させた地道な改善を根付かせ、自社現場を「昭和の常識」から「令和以降のグローバル現場」へと変革させていきましょう。
現場で働くすべての方が、誇りと自信を持てるプロセス設計を目指してください。
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