投稿日:2025年11月13日

リブTシャツの乾燥でリブ収縮を防ぐためのテンションフレームと温度安定制御

リブTシャツの乾燥プロセスにおける課題とは

リブTシャツは、その伸縮性とフィット感が特徴ですが、製造工程の中でも特に「乾燥」工程が製品の品質を大きく左右します。

特に注意すべきは、リブ部分の収縮です。

リブ編みは普通の天竺編みと比較して弾性があり、引っ張られて元に戻る性質が強いため、乾燥時のテンション(張力)や温度変化によって寸法変化・収縮が顕著になります。

ここで失敗すると「襟元が波打つ」「袖や裾がよれる」といったクレームに繋がりやすくなります。

この問題は、昭和時代からのアナログな乾燥機や行き当たりばったりの運転に依存している現場にありがちな事例です。

業界内では「湿度環境を一定化するのが難しい」「人の勘に頼っている」など、改善の余地があるテーマでもあります。

そこで、リブTシャツの生地を乾燥させる際にどうやって収縮を防ぐのか。

テンションフレームの使い方や温度の安定制御について、現場で培ったノウハウと現在の業界動向を織り交ぜて深掘りしてみたいと思います。

なぜリブ部分が収縮しやすいのか?

リブ生地の構造的特徴

リブTシャツのリブ部分は、主に輪編み機(丸編み機)で編まれた1×1や2×2のリブ編みが採用されます。

このリブ編みは、山(表目)と谷(裏目)が交互に並んでおり、ゴムのような弾性を持っています。

生地を横方向(幅方向)に引っ張ると幅が広がり、逆にテンションを緩めると、編目がぎゅっと詰まって幅が狭くなります。

このため、乾燥時に何も考えずに干すと、リブ部分が物理的に「ちぢみジワ」を作り、本来のサイズよりも短くなってしまうのです。

乾燥機の中で何が起こるのか

リブTシャツを工業用乾燥機で大量に処理する現場では、乾燥機の棚やベルト上に生地を「乗せる」だけの場合が多いです。

このとき、生地が自重や振動で「収縮」しやすい状態になります。

もし乾燥温度が不安定なら、リブが均一に乾かずテンションムラが生じ、部分的なちぢみの原因になります。

「テンションコントロール」と「温度安定性」が原則的なカギとなります。

現場で実践されるテンションフレームの重要性

テンションフレームとは?

リブTシャツの乾燥工程で使われる代表的な設備が「テンションフレーム」です。

これは、乾燥機の内部またはその前後に配置され、生地を一定の幅(テンション)で引っ張りながら工程を進める枠(フレーム)です。

テンションフレームは、生地の両端をクランプして物理的に幅を固定したまま、乾燥・熱処理・セット工程を連続的に行うことが可能です。

特にリブTシャツでは、襟や袖などのパーツ生地をテンションフレームにセットし、リブが希望する「仕上がり幅」に近い状態で乾燥・セットできるため、戻り縮みのリスクを大きく軽減できます。

テンションの最適化はどう行うか

実務現場では、各素材やリブの設計に応じて「張力(テンション)」「引張り度合い(ストレッチ率)」を操作します。

例えば、通常の30%〜35%がリブの標準的な縮率の場合、そこに合わせてテンションフレームの幅を予め設定し、生地に均一な引っ張りを加えます。

また、現在ではテンションや送り速度を自動制御できるデジタルテンションフレームも増えており、従来の「職人勘」から脱却し、データで管理できるようになっています。

この技術導入は現場の属人化を防ぎ、不良流出リスクを大幅に減らします。

アナログ現場でどう実践しているか

しかしながら、日本の多くの縫製・染色現場では「テンションゲージは使わず、常務の“目分量”」という古典的な方法が今も根強く残っています。

これは「何十年もベテランがやってきた方法だから失敗がない」という思い込みが根強いことに起因しますが、実際にはオーダーによる個体差もふえ、不安定な仕上がりにつながることも多いです。

だからこそ、テンションフレームの標準化や自動化は、稼働品質の安定と生産性UPの両立に直結すると言えるでしょう。

温度安定制御でさらにリブ収縮を防ぐ

なぜ温度制御が必要なのか

生地の乾燥時の温度ムラや急な温度上昇・下降は、繊維自体の「熱収縮」挙動を不均一にします。

例えば、天日干しと温風乾燥は温度と湿度の分布の仕方が違います。

リブ部分は他の部位よりも密度が高いため、乾燥速度が遅く、急激な加熱で“極端な収縮”を起こしやすいのです。

また、編み目の中の水分が一様に抜けないと「部分的な縮み」や「シワ」になりやすい傾向があります。

したがって、生地全体の温度を安定的に制御しつつ、リブ部分では特に温度分布を均一化することが重要です。

実際にどのように安定化を行うのか

最新の工業用乾燥機には、「PID制御」などの高度な温度制御機構が搭載されています。

これにより、設定温度を±1℃以内で長時間キープすることができ、過度な熱ショックによる収縮を防止します。

また現場によっては、乾燥機内に温度センサーを複数設置し、「入り口」「内部」「出口」の各ポイントで平均値を管理し、リアルタイムで温度調整するスマート制御も採用されています。

昭和時代の乾燥機では「回し数(タイマー)」と「炎の調整つまみ」が頼りでしたが、近年はIoT技術を盛り込んだ自動記録・遠隔モニタリング機能も普及しつつあります。

湿度コントロールも見逃せないポイント

実は、温度だけでなく「湿度」管理もリブ収縮予防に有効です。

ある程度の湿度を保ちつつ段階的に乾燥させることで、繊維の内部に残る水分を均等に飛ばし、急な収縮・締まりを防ぐことができます。

業界最先端モデルでは、乾燥室内に加湿器を組み合わせて「湿度曲線」を描きながら、乾燥プロファイルを自動制御しています。

このレベルまで来れば、Tシャツのリブ収縮問題はほぼ解消できると言えるでしょう。

バイヤーやサプライヤーが知るべき現場の工夫と最新動向

バイヤーの視点で抑えておきたいこと

高品質なリブTシャツの調達においては、リブ部分の「外観」と「寸法安定性」が大事なKPIになります。

バイヤーとしては、下記の点を確認するのがポイントです。

– テンションフレームの使用有無、手法・管理体制
– 乾燥機の温度と湿度の制御水準(手動 or 自動、記録の有無)
– リアルタイムモニタリングや品質データの取得体制
– どのような「不良対策」「再発防止」ノウハウを持っているか

こうした情報は、現場担当者と直接話し合い、「なぜその基準・設備・工程なのか」という理由や工夫をヒアリングすることが有効です。

カタログや書面では分からない“現場力”のバロメーターになるからです。

サプライヤーがバイヤーの期待を超えるには?

サプライヤーとしては、バイヤーの“隠れたニーズ”を掘り出す視点が大切です。

具体的には、

– 乾燥機の温度記録やテンション設定値のデータロギング
– 試作品やロットごとの「収縮率変動レポート」の提出
– 工程改善や設備ストーリー(昭和時代の旧乾燥機→最新モデルへの切換事例など)の提示
– イレギュラー時の対応策、突発トラブル時のエビデンス提出

これらは、サプライヤー自身が現場をよく知り、社内で共有・教育しやすい状態を作ることで初めて可能になります。

昭和流の「気合と根性」から、DX時代の「エビデンスベース」へ、進化を続けることがブランド力向上に直結します。

今後の業界の動きと生産ラインの未来展望

デジタル制御と人的スキルの融合が新たな常識になる

テンションフレームや乾燥機の自動制御システムは、コスト削減や生産性UPにも直結します。

とはいえ、どれほどデジタル化・自動化を進めても「現場を見る目」「微調整のセンス」は不可欠です。

AIやIoTを道具として活用しつつ、ベテラン作業者の知見やノウハウをDXツールに組み込むことが、リブTシャツ分野の収縮問題には最強のアプローチになるはずです。

ムダの削減と品質競争が深化する時代へ

消費者の要求水準が高まるにつれ、サプライチェーン全体での「見える化」「無駄削減」「品質標準化」は不可避です。

テンションフレームや温度安定装置の導入・運用を、“コスト”ではなく“先行投資”と捉える発想が、アナログ業界でも主流になりつつあります。

この変革の波をうまく捉えることで、現場独自の柔軟さと最新設備の強みを両立し、競合との差異化も十分に実現できます。

まとめ:現場と業界の知を結集して、次の一手を打とう

リブTシャツの乾燥におけるリブ収縮の課題は、テンションフレームの活用と温度・湿度コントロールが本質的なカギとなります。

アナログ現場の勘と職人技の積み重ねを土台にしつつ、最新の自動化技術やデータ管理を融合させて「安定品質」の実現を目指しましょう。

バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場で、現場の工夫を深く知り、見える化し、共有していくことが、これからの製造業の競争に勝ち抜く唯一の道です。

昭和の伝統と令和のDX、両者をつなぐ“架け橋”となるリブTシャツの乾燥工程こそ、製造業の新しい知見が集約されるフィールドなのです。

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