投稿日:2025年11月13日

サーフTシャツ印刷で耐塩性を上げるための撥水インクとUVプロテクト処理

サーフTシャツ印刷における耐塩性の重要性とは

サーファーや海辺で働く方にとって、Tシャツは単なる衣服以上の役割を担います。
激しい紫外線や海水、そして潮風は、日常使いのTシャツでは想像できないほど過酷な環境を作り出します。
特に海水に含まれる塩分は、Tシャツのプリント部分に対して大きなダメージ要因となります。
このため、サーフTシャツ印刷では「耐塩性」がとても重視されます。

サーフTシャツの印刷は、一般的なTシャツと比べて特殊な対応が求められます。
単なる見た目や鮮やかなデザインだけでなく、プリント部分が海水や潮風に何度もさらされても色落ちや亀裂が生じにくい「機能性」をもたせる必要があるからです。

耐塩性を高める撥水インクの選び方

撥水インクの特徴と種類

撥水インクは、その名の通り水をはじく性質をもったインクです。
サーフTシャツに用いることで、プリント表面の水分や塩分の浸透を抑える役割を果たします。
撥水インクには大きく分けて「顔料系インク」と「樹脂系インク」の2種類があります。
顔料系は色鮮やかな仕上がりが特長で、樹脂系はより高い耐水・耐摩耗性を発揮します。

例えば、シルクスクリーン印刷で使用する油性の樹脂系インクは撥水性が高く、長期間着用しても印刷部分のヒビ割れや色抜けが起こりにくいです。
水性インクの改良も進められており、近年では水性でも高い撥水性を発揮する特殊インクも開発されています。

現場での撥水インク活用のコツ

撥水インクを導入する際、以下の現場目線のポイントを押さえておくと、より高耐久なサーフTシャツ印刷が可能です。

1. 下処理(プライマー処理)の徹底
生地表面のごみや余分な油分を徹底的に除去することで、インクの定着度合いが大きく向上します。
特にコットン100%生地やストレッチ素材では、プリント前に導電プライマーや専用処理剤の使用をおすすめします。

2. 乾燥・硬化工程の管理
印刷後の熱処理(キュアリング)が不十分だと、撥水インク本来の性能が発揮されません。
指定された温度と時間でしっかり硬化させることが、耐塩性向上の要です。

3. 適切な膜厚コントロール
膜厚が厚すぎるとひび割れや剥がれのリスクが高まります。
一方、薄いと耐水性や耐塩性が不足します。
最適なバランスを見極めましょう。

UVプロテクト処理で紫外線からプリントを守る

紫外線ダメージのメカニズム

海辺の環境で想像以上に深刻なのが「紫外線ダメージ」です。
紫外線に長くさらされると、印刷インク内の顔料や樹脂成分が分解・変質し、色あせや劣化が進みやすくなります。
さらに、紫外線はTシャツそのものの生地繊維も劣化させます。

UVプロテクト処理で耐久性アップ

サーフTシャツの印刷品質を保つには、撥水インクに加えて「UVプロテクト処理」が不可欠です。
これは簡単に言うと、印刷したあとにUVカット効果を持つ透明なコーティング剤(オーバーコート)をプリント表面に塗布する工程です。

UVプロテクトコーティング剤には主に次の特性があります。

– 紫外線を吸収・散乱させてプリントを直接守る
– 表面に透明な被膜を形成し、色落ちや摩耗も防ぐ
– 撥水インクとの相乗効果で「ダブルブロック」を構築できる

現場効果としては、UVプロテクト処理を施すことで、従来の倍以上の耐白化・耐塩性を実現できたケースも多々あります。
また近年は環境対応型(エコタイプ)、柔軟性に優れたストレッチ対応型などスマートな製品も豊富です。

昭和から脱却できないアナログ業界でも普及が進む理由

旧来の課題と最新現場ニーズ

長らく製造現場では「コスト優先」「手作業重視」といった昭和型のオペレーションが多数派でした。
Tシャツ印刷でも、見た目の美しさや単純な耐久性しか評価されないことが多く、機能性にこだわる提案は後回しにされがちだったのです。

しかし近年は、SDGsや働き方改革による現場環境改善への意識変化、業界横断的なプロジェクト案件の増加などから「高付加価値化」への要求が強まっています。
特に、サーフ系アパレルはグローバル市場への挑戦やブランドイメージ向上を狙う企業が増え、差別化ポイントとして「機能性プリント」の開発導入が標準になりつつあります。

撥水インクとUVプロテクトの導入による経営メリット

撥水インクやUVプロテクト処理を導入することは、一見コスト増ととらえがちですが、実際には中長期で見て以下のメリットにつながります。

・クレームや返品リスクの減少
高耐久なプリント商品は、消費者からの信頼・満足度が大幅向上します。

・ブランド価値の差別化
一般的なプリントTシャツとの差別化が可能となり、アパレルブランドの「ファン」を増やせます。

・ロットやライン多様化への柔軟対応
工程の自動化やSCM(サプライチェーンマネジメント)革新と親和性が高く、今後の生産手法変革にもフィットします。

バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点で考えるべきこと

バイヤーが重視する選定ポイント

バイヤー(購買担当)がTシャツ印刷サプライヤーを選ぶポイントは、いまや「コストだけ」では決まりません。
特にサーフTシャツなど機能性アパレルの場合、バイヤーは以下の点を重視します。

– 実証データ(耐水・耐塩・耐紫外線テスト)の信頼性
– 一貫した品質保証体制(トレーサビリティ、クレーム時の即応力)
– 生産ラインの柔軟性(小ロット・多品種・短納期への対応力)
– 環境配慮材料・グリーン調達への取り組み

印刷現場や開発現場がこれらのニーズを正面的に受け止めて提案型営業を心がけることで、受注拡大につながります。

サプライヤーが磨くべき現場力とは

一方サプライヤー側としては、単に「新製品」「最新技術」として押し売りするのではなく、現場実践に基づいた付加価値提案が必要です。
たとえば、

– 実際に10回以上の洗濯+海水塗布テストでの色落ち比較データの提示
– サーフィン大会や海辺イベントでのモニター実績紹介
– 既存顧客からの声(アンケートや事例ストーリー)の活用

といった“実績の見える化”は、バイヤーの心理的ハードルを下げ、新たな取引口座の獲得に非常に有利に働きます。

まとめ:工場現場から始まるサーフTシャツ印刷の新時代

製造業の現場目線で見ても、サーフTシャツ印刷は単なる「きれいなデザインをプリントする」だけの仕事ではなくなりました。
海水や紫外線という厳しい条件を乗り越えるためには、撥水インクやUVプロテクト処理といった最先端の技術を日常レベルで使いこなすことが不可欠です。

また、昭和型のオペレーションから一歩進んで、SDGs・ESG配慮や多様な生産体制との連携、サプライチェーン全体による高付加価値化が求められています。
バイヤー・サプライヤー両方の視点を持ち、多面的に提案や改善を重ねていくことで、サーフTシャツ印刷業界は次世代の成長と発展が期待できるでしょう。

“現場から生まれる本物の価値”を大切に、製造現場の知恵とノウハウを今後も業界へ発信し続けていきます。

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