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トートバッグのプリントがにじまないための乳剤厚と露光時間の調整

目次
はじめに:トートバッグプリントの品質を左右する「乳剤厚」と「露光時間」
トートバッグのプリントは、販促品やノベルティ、ブランドグッズなど幅広い場面で活用されている重要な製品です。
多種多様なデザインを生地に写し取るシルクスクリーン印刷ですが、その品質に大きく直結するのが「乳剤厚」と「露光時間」の調整です。
この調整がうまくいかないと、にじみやカスレ、大きな版ズレ、さらには量産の歩留まり低下といった深刻な課題につながります。
昭和から続く日本の印刷業界でも、「経験則でなんとかしている」「昔ながらの感覚に頼ってしまいミスが減らない」といった現場の悩みは今も根強く残っています。
本記事では、20年以上製造業の現場で培った知見をもとに、今求められる「現場のリアル」と「明日から現場で使える具体策」を徹底解説します。
バイヤー志望の方にも、サプライヤーとして顧客の要求品質を満たすためにも、知っておきたいトピックを網羅しています。
にじみの仕組みと乳剤厚・露光時間が与えるメカニズム
なぜ、トートバッグのプリントでにじみが起きるのか
トートバッグは一般的にキャンバスや綿など、吸水性に富む生地を多用します。
この素材特性上、インクが版から生地へ「のせすぎる」と、繊維の隙間にまでインクが流れ込み、輪郭がぼやけてしまう現象(にじみ)が発生しやすくなります。
この「にじみ」を制御するために重要なのが、「乳剤厚」と「露光時間」の二大パラメータです。
乳剤厚とは何か。厚いと良い?薄いと良い?
乳剤とは、感光材を意味し、シルクスクリーン版のメッシュ(網)の上に塗布することで、インクが通る部分と通らない部分を分ける役割を持ちます。
「乳剤厚」とは、メッシュ上に塗布されたこの乳剤の層の厚みを指します。
厚すぎる乳剤
– インクが版上に多くたまり、一度に生地へ供給されるインク量が増え、にじみの原因に
– 細かいデザインが潰れやすくなるリスク
薄すぎる乳剤
– インク通過量が減り、プリントの発色・濃度が下がる
– 乳剤そのものが剥がれやすく、版耐久性が低下
つまり、
「厚すぎず・薄すぎず」
それでいて「デザインや生地の条件に合わせて調整」が求められます。
露光時間が仕上がりに与える影響とは
乳剤にポジフィルムを載せ、紫外線(UV)をあてて硬化(感光)させる工程が「露光」です。
この露光時間が短いと
– 乳剤が十分硬化せず、プリント中はがれやすい
– インクが版の隙間から漏れて、にじみ・ぼやけの原因
逆に長すぎると
– 目的のデザイン部分まで乳剤が硬化してしまい、抜けにくい(細絵が再現できない)
ちょうどよい「露光時間」を見極めることが、にじみ制御と版再現率向上の鍵です。
現場で生きる調整テクニック:乳剤厚と露光時間の最適化手法
1. 乳剤厚の最適化ステップ
1.メッシュ番号選定
生地とデザインに応じ「何メッシュ(糸/インチ)」を使うかを決定します。細いデザイン・高精細なら高メッシュ(細目)、ざっくり濃くのせるなら中・低メッシュを。
2.乳剤の塗り方・回数調整
一般的な水性インクの場合、50〜80μm程度で均一な乳剤厚がスタート基準です。経験則で左右されがちですが、膜厚計(マイクロゲージ)を導入して数値管理することで、大幅な安定化が狙えます。
3.乾燥方法に注意
乳剤を塗った後、風乾または熱乾します。このときに温度や湿度のバラつきがあると、ムラが出てにじみや版剥がれが起きやすくなります。恒温・恒湿庫での乾燥管理が理想です。
4.定期的な版状態の点検
量産過程で「乳剤の段差」や「端部の薄化」が起きていないか、こまめな点検と補修が現場歩留まりを左右します。
2. 露光時間の管理手法
1.光源・距離・出力の把握
UVランプの出力、照射距離、経年劣化を正確にデータ化し、露光機毎のレシピを標準化します。
2.テストピースによる感光テスト
新しい版や新調乳剤ごとに、露光テストピースで「ベストな抜け」「ベストな硬化具合」を必ず確認。異常が起きた場合は作業直前に必ず検証しましょう。
3.日常点検の実施
露光機のランプ寿命・乳剤の保管状態(冷蔵推奨)・ポジフィルムの劣化有無も日々目視または記録で管理すること。
4.作業標準書の整備
最適露光値や異常対応フローを「暗黙知」から「標準作業書」にし、新人・バイトでも迷わず実行できる仕組みづくりが重要です。
見逃されがちな三つの落とし穴:昭和アナログ現場に潜むリスク
1. 職人の勘・ベテラン頼みから脱却できていない
「この色、この肌触りならこれくらい」…この“勘”が日本現場の強みである一方、「人が抜けたら標準が回らなくなる」「属人化による再現性低下」を今も多くの工場で目にします。
数値化・標準化ツール(膜厚計・露光タイマー・チェックシート)は「高価な自動化設備」ではなく、今日からでも導入可能な改善策です。
2. 「品質トラブル=作業者のせい」で片付けていないか
歩留まり悪化やクレーム時、“慣れていないからミスした”と個人の問題に帰着しがちですが、本質は「調整ルールや設備の未整備」です。
トートバッグのような量販品にこそ、
– 調整根拠の見える化
– ヒューマンエラーを排除できる作業設計
が、利益率・顧客満足度を左右します。
3. サプライヤーまかせ/材料任せの盲点
インク屋や乳剤メーカーの推奨値に盲目的に従う現場も少なくありません。
大切なのは、「自分の現場で再現できるデータを自分の手で取得・改善」することです。
新しい素材や案件ごとに「現場固有の最適解」を模索する姿勢が、サプライチェーン全体の競争力を向上させます。
バイヤー・サプライヤー必見:品質提案力で差をつけるポイント
バイヤー志望者が身につけたい視点
– 工場現場で「何をどう調整することで品質がつくられるか」を理解し、サプライヤーに具体的な提案・フィードバックができること
– 「なぜにじみ対策にコストや納期が影響するのか」を論理的に説明(社内・顧客先ともに)
サプライヤー現場が磨きたい実践力
– 調整ノウハウを“社内マニュアル化”し、誰でも高レベルで運用できる土壌づくり
– ショット品・多品種少量、また大量生産など、案件に応じたベストプラクティスを蓄積
– 「バイヤー=最終顧客目線」のクレームリスク低減策を、先回りして提案できる力
これからのトートバッグプリントに求められること
7000円や1万円以上を超えるプレミアム品、もしくはサステナブル意識が高いブランドトートなど、プリント品質の要求は日々高まっています。
乳剤厚・露光時間の調整は、単なる作業技術ではなく
– ブランドイメージ
– 事業の信頼
– 価格競争力
を左右する根幹的な技術要素です。
現場力を地道に磨くこと。
最新ツール・設備と現場スキルを融合して歩留まりを上げること。
そして、“人頼み”から“仕組み化”へと進化すること。
こうした地道な努力が、日本の製造業に勝ち残る力を与え、大量生産でも高付加価値を実現する道を切り開きます。
まとめ:トートバッグプリント品質の未来を切り拓くために
トートバッグプリントにおける「乳剤厚」と「露光時間」の調整は、非常にアナログでありながらも、実は奥深い世界です。
現場目線で数値化・標準化を徹底することで、
– どこでも誰でも同じ品質
– ユーザーが期待する“くっきり美しいプリント”を安定して提供
できるようになります。
そして、「現場発の工程改善」はサプライヤー・バイヤーそれぞれの立場からも、商談の付加価値やサービスの差別化につながります。
にじみを制し、仕組み化で現場負荷を減らせる製造現場は、クライアントからも一目置かれ、業界の発展に確実に貢献できるはずです。
製造現場の感覚と知識を磨き、未来への地平線をともに切り拓きましょう。
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