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ガラス製調味料容器の印刷で結露対策と密着層の設計

目次
はじめに:ガラス製調味料容器の印刷現場で起こる“大敵”とは
ガラス製調味料容器は、その美しい透明感や高級感、そして食品への安全性が評価され、今なお多くの現場で採用されています。
しかし、ラベルやロゴ、成分表示などの印刷工程において、現場では必ずと言っていいほど“結露”という大きな壁にぶつかります。
この結露による印刷不良は、製造現場の歩留まり低下、クレーム増加、最悪の場合は出荷停止や返品騒ぎへと発展します。
また、結露以外にも、インキや塗膜の密着が悪いことで印刷が簡単にはがれる“密着不良”も悩みの種です。
ここでは、製造現場の視点から、実際の失敗事例や成功事例も交えつつ、ガラス製調味料容器の印刷において最大のポイントとなる「結露対策」と「密着層の設計」について、実践的に解説します。
ガラス容器ならではの印刷課題:なぜ結露が問題になるのか
ガラスは結露しやすい。——そのワケ
ガラス容器が冷蔵庫から出てきた場合や、空調の設定や工程の中で温度差が発生するタイミングで、ガラス表面に空気中の水分が瞬時に結露します。
このうっすらと浮かぶ水滴が、インキやUV塗装、スクリーン印刷時の物理的サポートをことごとく阻みます。
昭和の現場では、結露したら布で拭く、高温の熱風を当てる──といった“カン”頼りの作業で対応しがちでした。
ですが、これでは根本解決にならず、印刷直後の密着試験では合格するものの、実使用環境下においては印刷面がすぐに劣化・剥離……ということも珍しくありません。
印刷不良につながるメカニズム
結露したガラス表面にインキや印刷用プライマーを塗布すると、水とインキの間に界面が生じ、物理的な接着が妨げられます。
また、インキが溶剤型でもUV型でも、この水分があることで適切な硬化や乾燥が成立せず、最終的には“ピール”(はがれ)や“ブリスター”(泡状の剥離)などの不良を引き起こします。
現場で使える、結露対策の最前線
結露しない段取りづくり
最大の対策は、結露が発生しない温湿度管理を徹底することです。
1. ガラス容器は、必ず印刷予定日の前日には室温に十分な時間置き、庫内温度と現場の温度差をなくします。
2. 工場内の温湿度をモニタリングし、露点(結露が生じる温度)を下回らないようエアコンや除湿機でコントロールします。
3. どうしても冷蔵庫出しにせざるをえない現場では、出庫後は常温・低湿度環境で十分に馴染ませる“エージング棚”を設置してください。
これらは調達購買部門が納入タイミングや物流ルートも巻き込んで設計し直すことで、物理的に結露リスクを極小化可能です。
結露リセットのための除去工程
現場では、「人の手を掛けない」自動工程が理想ですが、結露は思わぬタイミングで発生します。
そのため、エアブローや専用ラインヒーターによるガラス表面の乾燥工程を必ず設けましょう。
また、「一般的な布拭き」は繊維や異物混入リスクがあり推奨されません。
可能な場合は、無塵クロスとイソプロピルアルコール(IPA)洗浄を併用することがおすすめです。
密着層(プライマー)設計の重要性
“密着層”とは何か?
密着層とは、インキやトップコートとガラス表面の間の「架け橋」となるプライマーのことです。
単なる接着剤ではなく、インキとの科学的親和性とガラス表面の無機的な性質を“つなげる”設計が生命線です。
密着不良を防止するには
ガラス製調味料容器で多用されるのは、下記のプライマー工程です。
1. 表面活性化処理(コロナ/プラズマ処理):ガラス表面のエネルギーを高め、インキが“浮かない”状態を作る
2. 化学プライマー塗布:ガラス特有の無機表面にイオン結合やシランカップリングで“つなぎ”を付加
3. インキ塗装:UVや溶剤インキでも、プライマーの組成と親和性を事前検証
現場によっては、コスト優先でプライマー工程を割愛しようとするケースもありますが、ここは“歩留まり”と“ブランド信用”という観点からも絶対に妥協できません。
現場トラブルと成功例から学ぶ
「プライマーに頼らずインキ性能だけで密着できないか?」という現場発の声も多いです。
ですが、過去の失敗事例を見ると、日常扱う洗剤や油分、アルコールふき取りの摩擦負荷試験で簡単にはがれる製品は、問答無用で市場クレームの種となります。
逆に、初期コストが多少上がっても、しっかりと表面活性化+化学プライマー工程を経た現場では、数年にわたってトラブルゼロというケースも多数です。
調達バイヤー・サプライヤーが知るべき“現場発、実践的設計指針”
バイヤーは、工程設計まで踏み込んで交渉せよ
バイヤーの仕事は単価交渉だけではありません。
「どのような品質基準で、どんなプロセスで容器印刷が管理されているか」までサプライヤーと共有·設計段階から会話できるかが、最大のポイントです。
・業界標準(ASTM/ISO/JIS等)だけでなく実際のユーザー現場(流通・保管状況)までシミュレーションする
・“納品時の温度・湿度記録”までサプライヤーに求め、脱アナログな品質保証体制を組み込む
・過去のクレームや類似商品での成功・失敗ストーリーを現場とともにPDCAサイクルを回す
このような対話が現場を変え、結露対策や密着層設計の精度を飛躍的に高めます。
サプライヤーは“最終製品視点”で提案せよ
単に「印刷できます」というだけでなく、
・どんな温湿度管理のもとで運用しているのか
・プライマーやインキの仕様、テスト環境・サンプル提出方法
・現場で起こりうるイレギュラー(温度急変・工程混在)時のフォロー体制
これらまでを、まとめてパッケージングし、データや工程例として提案できるか。
これが今後の“選ばれる”サプライヤーの条件と言えるでしょう。
まとめ:結露対策と密着層設計が、ブランドの未来を護る
ガラス製調味料容器の印刷トラブル、特に結露や密着不良は、現場主義・現場改善の延長線上だけでなく、全体最適化を見据えたラテラルシンキングが必須課題です。
温湿度管理・工程設計・プライマー選定・現場教育・バイヤーとサプライヤーの密な連携――これらを高度に融合させることで、歩留まり向上と市場でのブランド維持、そして製造現場の働き方さえも変革できます。
アナログ文化の色濃い業界でも、実践的な工程設計と最新知見、関係者との連携によって、より安全で高品質、競争力あるガラス容器製品の供給が実現できます。
製造業に携わる皆さま一人ひとりが、ぜひこの知識とノウハウを現場に持ち帰り、明日からの“改善”に役立ててください。
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