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陶器皿の製版で釉薬との密着を確保するための乳剤厚制御と焼成対応設計

目次
はじめに:製造業の現場から見た陶器皿の課題
昨今、製造業の現場ではアナログな職人技とデジタル技術、双方の融合がますます求められる時代となっています。
陶器皿の製版工程は、特にその象徴と言えるでしょう。
最近、新規サプライヤーに参入を希望するバイヤーや、経験豊富な既存サプライヤーでも「釉薬との密着性不足」という品質トラブルが絶えません。
この記事では、陶器皿の製造プロセスにおける「製版時の乳剤厚制御」と「焼成工程に向けた設計対応」に焦点を当て、現場目線で実践的に解説します。
現場の経験と最新の業界動向も交え、釉薬との密着性にこだわった製版設計の真髄を伝えます。
また、調達・購買担当バイヤーおよび、サプライヤーとしてバイヤーが重視するポイントを知りたい方にも役立つ内容です。
釉薬密着の重要性と、なぜ課題になるのか
陶器皿の表面装飾に使用される釉薬は、単に見た目の美しさを担保するだけでなく、耐久性・耐水性といった製品性能に直結しています。
しかし、製版工程でインクや絵付け層と基材(素地)との間に十分な密着性が確保されないと、焼成後に釉薬が剥離したりヒビ割れが生じたりします。
この密着不良は、最終検品でのNG率増加・クレーム発生、廃棄ロスの増大といった深刻な問題に直結します。
なぜ密着不良が起こるのでしょうか。
主要因は、製版時に用いる乳剤(感光材)の厚みと均一性、そして焼成工程での温度管理設計のバランスです。
特に昭和時代から残る「手作業重視文化」の現場では、乳剤厚の均一さや管理指標の標準化が遅れている例が多く、せっかく個人職人が見事に仕上げても再現性のバラつきが大きくなります。
乳剤厚制御のポイント:密着性の要を押さえる
乳剤厚の均一化とコントロールが品質の鍵
製版=スクリーン印刷の工程では、「乳剤厚=インクの転写量・解像度・密着性のコントロール」に直結します。
乳剤が厚すぎると、インクの堆積量が増えて焼成時に膨れや剥がれが増加。
逆に薄すぎるとデザインの再現性や発色が弱くなり、釉薬層の下でインクが焼き切れてしまう場合もあります。
製造業の現場で実効的な乳剤厚管理の手法は次の通りです。
- 乳剤塗布後の初期乾燥条件(温湿度・時間)の標準化
- ミクロン単位での乳剤厚測定(膜厚計などの導入)
- 定期的なスクリーン枠・スキージーの点検・メンテナンス
- サンプリングによる試焼きと焼成後の密着試験(クロスカット法・剥離試験など)のフィードバック
また、現場でよく見られる属人的なノウハウを「標準作業手順書(SOP)」にまとめ、ベテランと若手のスキルギャップを解消することで、品質のバラつきも抑制できます。
よくある失敗事例-昭和的アナログ作業の落とし穴
たとえば、職人の経験則で乳剤の厚みを「だいたいこのくらい」と感覚で決めてしまうことは、今でも地方の熟練工場で見受けられます。
雨天・乾燥の変化、異なる作業者ごとの微妙なズレが積み重なり、不良率の高止まりに繋がります。
また、管理職が乳剤厚に注意を向けず、検査工程でNG品の山を前に「誰のせいだ」と責任転嫁が続く現場もあり、これは経営リスクと直結します。
焼成設計の工夫:乳剤との相互影響から最適条件を探る
焼成温度・時間の決め方と密着性の関係
焼成工程の設計は「温度」「時間」「雰囲気」の3要素が主となります。
最適条件は、乳剤厚や使用するインク・釉薬の組み合わせによって変動します。
焼成温度が低すぎるとインクが焼き付かず、密着不良や発色不良に。
反対に高すぎると、釉薬とインク層に異常反応が起きて色流れや割れが発生するリスクがあります。
業界最先端の現場では、以下のアプローチが成功しています。
- 温度分布シミュレーションによる複数焼成ラインの最適設計
- 焼成曲線データのDX化・IoT化によるリアルタイム解析・フィードバック
- 材料ロットごとの特性データベース化による個別管理
これにより、乳剤層に最適な焼成カーブを選定し、「インク・乳剤・釉薬」の三層の変化を統合的にコントロールすることが可能となっています。
焼成工程での「適応設計」とは
現代のキーワードは「適応設計」。
たとえば乳剤厚がわずかに変動した場合(季節・湿度・作業ロットによる違いなど)、そのまま焼成工程に流すのではなく、温度帯や上昇速度、保持時間を設定し直します。
この可変設計ができる工場は、密着性の安定・不良率低減・コスト削減に大きなアドバンテージを持つことになります。
実際、海外の先進工場では全自動で温度プロファイルが切り替えられる焼成炉も導入されており、今後は日本の中小工場にも普及が期待されます。
バイヤーとサプライヤー双方が知るべき「肝」のポイント
バイヤー視点:なぜ乳剤厚・焼成設計が見過ごせないのか
調達購買担当や新規バイヤーが陶器サプライヤーの現場監査でまず確認すべきは、「乳剤厚管理」と「焼成工程の設計根拠」です。
ここがアナログ現場のブラックボックスでブラックホールにもなりがちです。
現場管理が場当たり的であれば不良品のリスク、そのコストは全て購買側(最終納品先)が負担することになります。
バイヤーからサプライヤーに投げるべき代表的な質問は下記のようなものです。
- 乳剤厚を数値で管理しているか(±〇ミクロンのレンジがあるか)
- 実際の焼成温度プロファイルと品種ごとの最適条件をデータで保有しているか
- トラブル発生時の再発防止策(エビデンス付き)を即説明できるか
このポイントを押さえた監査・ヒアリングができれば、品質トラブルの未然防止や、トータルコストのコントロールに繋がります。
サプライヤー視点:「昭和からの進化」を現場力で示す
サプライヤー側も「うちは職人技が売りだ」と昭和的価値観のままでは通用しません。
乳剤厚のミクロン管理や焼成プロファイルの標準化は、他社との差別化ポイントです。
現場で培ったノウハウをデータ化して客観的に示す、“見える化”と“説得力ある技術説明”が求められています。
大手バイヤーとの新規取引の際、「標準作業手順書」「乳剤厚の管理データ」「トラブル事例と改善実績レポート」など、具体的な裏付けを提示することで、信頼度と選定率が確実にアップします。
ドラスティックなDX化は不要、まずは現場の本質を極める
業界ではIoTやAIなど最新技術への関心が高まっていますが、「まずはアナログ現場の本質的な品質管理の徹底」が土台です。
乳剤厚制御も焼成工程設計も、やたらと自動化・DX化するのではなく、“手作業の標準化”から始めるのが日本の製造業現場におけるリアルな成功パターンです。
極端な例ですが、「最先端の設備を導入しても、現場が日々の記録や管理に無関心では、結果として品管リスクを高めてしまう」という現象は、むしろよく起こっています。
大切なのは、職人技×数値管理の融合。
地道な改善活動を定着させ、必要に応じて小さな自動化やDXを段階的に取り入れることです。
まとめ:現場に根差した乳剤厚制御と焼成設計こそが競争力
陶器皿製版における釉薬との密着確保は、乳剤厚管理と焼成工程設計の両輪で成り立ちます。
この二つをいかにデータ・現場ノウハウで標準化し、且つ柔軟に最適化できるかが、バイヤー・サプライヤーいずれにとっても差別化の大きな武器となります。
「現場感覚」と「数値的根拠」の両方を持ち、先端技術も必要に応じて段階的に導入する――。
そんな“ラテラルシンキング”なものづくり姿勢を実践することで、昭和のアナログ業界から抜け出し、未来のものづくり競争をリードできるはずです。
陶器皿の密着設計に悩む現場の方、新しい発注先を探すバイヤーの方、そしてそのバイヤーのニーズに応えて新規参入を狙うサプライヤーの方。
それぞれの立場から「乳剤厚制御と焼成対応設計の奥深さ」に向き合うことで、製造業の新たな地平線を切りひらいていきましょう。
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