- お役立ち記事
- 特殊インク(蛍光・蓄光)を使う際の露光調整と網点再現のポイント
特殊インク(蛍光・蓄光)を使う際の露光調整と網点再現のポイント

目次
はじめに:特殊インクと製造現場の挑戦
製造業の現場では多様化するニーズに応えるべく、特殊インクの活用が進んでいます。
中でも蛍光インクや蓄光インクといった特殊インクは、安全標識や装飾品、セキュリティ用途で不可欠な存在となっています。
しかし、これらのインクは標準的な油性・水性インクと異なり、露光や網点再現に関して独特のノウハウが必要です。
昭和時代のアナログな運用体制が根強く残る工場でも、特殊インクの導入や品質安定化は避けて通れない課題です。
この記事では、現場のリアルな視点から、特殊インクにおける露光調整や網点再現のコツを体系的に解説していきます。
特殊インクがもたらす付加価値
蛍光インクは、紫外線など特定の波長の光を受けて鮮やかに発色する特性があります。
交通標識や印刷物に多く用いられ、遠目でも視認性を上げる効果があります。
一方、蓄光インクは光を蓄えて時間差で徐々に発光する特性を持ち、暗所での安全標識や夜間用部材などに使われます。
これらの特殊インクは、製品そのものの価値向上だけでなく、差別化や安全性の強化という観点でも大きなメリットをもたらします。
ただし一方で、印刷現場ではコントロールが難しい側面があるため、確かな知識と経験が求められます。
特殊インクの露光調整とは
特殊インクの印刷では、刷版を作成する際の「露光工程」が非常に重要です。
特に蛍光や蓄光インクの場合、インクの粒子が大きいため、網点(ドット)の再現性が落ちたり、版の劣化が早まるリスクがあります。
このため、砂時計の砂が流れるように露光時間を調整し、最適なバランスを見極めることが品質管理の鍵となります。
露光不足のリスク
露光が不足すると、刷版の細部が正しく形成できません。
結果として印刷面の網点が潰れてしまい、細かい階調やグラデーションが再現されなくなります。
また、刷版の耐久性も低くなり、ロット途中で版交換が必要となるケースも増えます。
過剰露光のリスク
一方で、露光が強すぎれば感光性樹脂が過度に硬化し、細い線や微細な点が抜け落ちたり、インクの転写ムラが発生しやすくなります。
特に蓄光インクは表面硬度が高く発色ムラを生じやすいため、過剰露光による摩耗やインクづまりにも注意が必要です。
網点再現のポイント
実際の製品づくりでは、網点の正確な再現が最終品質に大きく響きます。
特殊インクで網点を正しく刷り込むには、下記のような観点が重要になります。
スクリーン線数の最適化
蛍光・蓄光インクは顔料が粗く、通常よりもスクリーン線数(LPI:Lines Per Inch)を下げる必要があります。
一般的なインクが175LPIなら、特殊インクでは100~133LPI程度に落とすことで、目詰まりや網点潰れを回避できます。
これにより、高い視認性と網点の抜けを両立させることが可能になります。
網点形状の工夫
網点形状については、円形や楕円形の選択も検討しましょう。
特殊インクはインク量が多く必要になるため、通常の正方形ではなく、転写効率が高い形状を選ぶことがポイントになります。
また、AM(Amplitude Modulation)方式、FM(Frequency Modulation)方式のどちらが適しているかも、実際に試験印刷を重ねて最適化しましょう。
刷圧とブランケット管理
特殊インクでは刷圧(印刷時の圧力)が非常に重要です。
過剰な刷圧は網点潰れや裏移りを引き起こします。
一方で、刷圧が弱すぎるとキレイな網点が出ません。
また、蓄光インクでは粒子が残りやすいので、ブランケットの管理も徹底し、定期的なクリーニングを怠らないようにします。
昭和的アナログ現場の現実と突破口
長年、製造業現場では「職人の勘」が重視されてきました。
特殊インクの設定も、経験と手探りによる調整が中心です。
しかし、このやり方だけでは人材育成が遅れがちで、技術継承も難しくなります。
ここで重要なのは、「知見の可視化」と「工程標準化」です。
例えば、特定のロットでうまくいった露光・網点パラメータや、失敗事例をデータとしてストックし、新人でも再現できる仕組み作りが大切です。
QC活動やカイゼン提案を活用し、ベテランのノウハウを明文化する取り組みが、業界の生産性を底上げします。
併せて、デジタル露光システムの導入や印刷シミュレーションソフトを活用すれば、設定の「標準化→自動化」も夢物語ではありません。
たとえ部品一つ、設定値一つでも「なぜ」を深掘りする姿勢が、古くて新しいものづくりに変革をもたらします。
バイヤーが押さえるべき視点
もしあなたが調達・購買担当者(バイヤー)であれば、特殊インク導入時には発注先選定やコストだけでなく、技術支援体制にも目を向けましょう。
例えば、安価なインクや外注先を選んだがために、不具合や苦情対応コストが膨れあがるリスクも少なくありません。
「現場テスト結果の共有」「技術担当者の派遣」など、アフターサポート体制がしっかりしているパートナーを選ぶことが、安定した調達と工程全体の最適化につながります。
サプライヤーが知るべきバイヤー目線の本音
サプライヤー(供給業者)の立場からも、バイヤーが何を重視しているかを理解しておくことが大事です。
バイヤーは単なる価格だけでなく、「工程トラブルを最小化できるか」「緊急時にフォローが受けられるか」「標準化やQMS(品質マネジメントシステム)対応ができるか」に強い関心を持っています。
また、不良やクレーム対応で現場に迷惑をかけた場合、履歴管理や原因究明をどれだけ速く・正確にできるかも、サプライヤー選定の大きなポイントです。
こうした観点から自社の製品データやサポート情報を見直し、現場目線の提案型営業を心がけることが信頼構築のカギとなります。
特殊インクの未来を切り拓くには
特殊インク(蛍光・蓄光)は、今後ますます安全分野・アート分野・セキュリティ分野での用途拡大が見込まれています。
IoTやAI技術による品質管理自動化、校正作業の効率化など、マンパワーだけに頼らない脱・昭和の体制づくりが重要です。
最後に、どんなに時代が進化しても、現場で試行錯誤した実感や、「現物を見て、触れて、舐めてみる」五感の情報がものづくりの本質です。
現場で培った知恵を仲間や次世代につなぎ、新しい時代の地平線を共につくっていきましょう。
まとめ
特殊インクの露光調整と網点再現は、現場の工夫と知見の積み重ねによってしか完成しません。
ノウハウを「暗黙知」から「形式知」へと昇華し、標準化、デジタル化を推進する。
そして、バイヤーもサプライヤーも現場の実情を知り、互いの立場を理解して協力体制を築く。
こうした取り組みこそが、日本の製造業を次のステージへ導き、自らのキャリアや現場にも確かな価値をもたらすと確信しています。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)