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海外は“安さ重視”ではなく“価値重視”という違いの理解

目次
はじめに:なぜ今、「価値重視」が問われるのか
日本の製造業は、精密さや誠実な仕事ぶりで世界から高い評価を受けてきました。
しかし、グローバル化が進む中で、多くの現場やサプライヤーが「コスト最優先」「安さ至上主義」の現状に悩みや疑問を感じているのではないでしょうか。
実は、海外の調達現場やバイヤーの多くは、単なる価格競争ではなく、「価値」に重点をおいた調達・購買活動を展開しています。
この「価値重視」の発想と、いまだに根強く残る日本製造業の「安さ重視」文化。
両者の違いを理解し、新たな一歩を踏み出すことが、国際競争力の強化、そして現場の働き方改善に直結します。
この記事では、製造業の現場目線で「価値重視」の本質を紐解きつつ、今後の購買・調達、サプライヤー戦略に活かすためのヒントをお伝えします。
「安さ重視」調達の実態と限界
日本の製造業に根付く“昭和的”コストダウン文化
かつて、高度経済成長期からバブル期まで、日本製造業は競争力の源泉を「コストダウン」に見出してきました。
自前主義や川上からの一括発注、系列重視など、独特の商習慣の中で「とにかく安く!」を合言葉に調達や生産が進んできたのです。
この背景には、生産管理・品質管理の徹底と、現場の不断の改善による「効率化神話」が密接に結びついています。
コストダウンの努力自体は尊く、現場力の強みでもあります。
しかし、グローバル化が進み、製品ライフサイクルが短期化し、テクノロジーも日進月歩となった現在、「安さ」をとことん突き詰める手法には大きな限界が現れています。
コストだけを見る危険性
安さ重視が行き過ぎると、調達コストは下がるものの、次のような副作用が生じやすくなります。
– 品質トラブルが頻発し、対応工数・クレームコストが膨らむ
– サプライヤーの利益余力が減り、イノベーションや提案力が落ちる
– 価格交渉が激化し、長期的パートナーシップが希薄化する
– 担当バイヤーが「安いモノ探し」のみで手一杯となり、企画力や戦略立案が疎かになる
特に驚くのは、現場管理職や工場長クラスでも「他社より安ければいい」「苦し紛れの値下げ要請は仕事のうち」と無自覚に口にしてしまう、そんな風土が根強い点です。
その結果、「値下げ競争に疲弊したサプライヤー」「付加価値提案をしなくなるメーカー」など、産業全体の活力低下につながっているのが現状です。
海外の購買現場で進む「価値重視」への転換
“Value for Money” の本質
欧米の製造業、特にドイツやアメリカのバイヤー・調達責任者の多くは、「Value for Money(お金に見合う価値)」という考え方を強調します。
単純なコスト比較ではなく、“何にいくら払うのか” という「対価=価値」を重視し、下記のようなポイントを包括的に見ています。
– 期待する品質・性能への信頼度
– 納期遵守力や危機対応力
– 技術提案や共同開発力
– 長期的なパートナーとしての成長性・柔軟性
– 社会的責任やサステナビリティ(持続可能性)への配慮
つまり、値段が安いこと=良いサプライヤーとは限らず、「この会社・この現場と組むことで、自社ビジネスに“どんな価値”を生み出せるのか?」という視点が最重要となります。
名目コストから“トータルバリュー”評価へ
欧米企業の先進的な現場は、調達コスト・生産コストに加え、QCD(品質、コスト、納期)は当然、イノベーション・環境配慮・将来の“共創余力”まで含めた「トータルバリュー重視」の評価指標へと転換しています。
このため、単年度の逆ザヤ発注や無理なコストダウン要請は極力避けられ、バイヤーも現場の作業者・開発エンジニアとの対話を重ねながら、「本当に価値を生むサプライヤー育成」を重視します。
実際、サプライヤー表彰やイノベーションアワードなどを定期的に開く企業も多く、「低価格発注だけが調達担当の腕の見せどころ」という発想は過去のものとなっています。
日本企業が陥りがちな「ギャップ」とその背景
なぜ“安さ競争”から抜け出せないのか?
日本の現場には、効率化・改善活動で生産性を追求してきた成功体験が強く残っています。
また、系列取引の伝統、新卒一括採用による年功序列人事など、産業構造自体も「冒険よりも安心」「急な変化は避けたい」という保守的なインセンティブが働きがちです。
さらに、「品質は良くて当たり前」「価格はできるだけ安く」の二律背反を同時に求める過剰な要求が、“現場力”を逆に疲弊させてしまう状況も生まれています。
バイヤーが「価格交渉に強ければ有能」と評価されがちで、現場が「サプライヤーは値下げに付き合うのが当たり前」と思い込む。
こうした意識改革こそが最も難しい壁となっています。
「価値重視」への転換がもたらすメリットとは
日本企業でも、ものづくり革新やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、調達部門が「戦略的価値創造」の役割へとシフトしつつあります。
たとえば、
– 「顧客や市場の課題を一緒に捉え、サプライヤーと共創する」
– 「現場の困りごとに耳を傾け、クイックに試作・テストする文化を根付かせる」
– 「コストだけでなく、百年後も付き合いたい“相棒”を育てるマインドセット」
こうした現場主導の価値志向が、長期的に見ればサプライチェーン全体の競争力強化につながるのです。
具体的にどう転換すればよいか?現場目線7つのポイント
現場管理職・バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場で、「価値重視」の思考・行動へと転換するためのヒントを、私の経験と周囲の成功事例から整理します。
1. 現場の声を経営層に届ける
「本当に困っていること」「現場が感じる価値とは何か」について、ロジカルかつ率直に意見を上げ続けることが大切です。
現場管理職が定例報告で「〇〇サプライヤーの対応で助かった」「安くても納品遅延で困った」など具体的な事例を経営層にエスカレーションすることで、「価格以外の大切さ」を共有できます。
2. QCD+αの評価軸を設ける
購買・調達部門がサプライヤー表彰基準を刷新し、「イノベーション提案力」「製品改善への連携度」「緊急時の信頼感」など、独自の“+α”軸を盛り込むことで、関係性が大きく変わります。
特に、現場の小さな工夫を評価する文化を根付かせ、調達・技術・現場が一体となって価値基準を再設計しましょう。
3. 共創パートナーとしての対話機会を増やす
定期的なサプライヤーミーティングのほか、現場見学やワークショップ式の勉強会を実施し、バイヤー・調達担当者自らが「現場の痛みと可能性」を肌で感じることが重要です。
サプライヤーの現場と課題をともに見ることで、安さ重視から「課題解決重視」「関係深化重視」へ自然と転換できます。
4. 現場の成功事例を積極発信
「価格だけでなく、価値提案で選ばれた」「長年の協力でトラブルを未然に防げた」など、現場発の成功事例・失敗談を社内外に共有しましょう。
小さな“いい話”が積み重なると、他部署・他現場にも横展開しやすくなります。
5. サプライヤー側も“提案営業”を心がける
バイヤーが「安さだけでない」と感じてもらうためには、サプライヤー側から「御社課題をこう解決できます」「連携すればこういう付加価値が出せます」と能動的なシナリオ提案を行う姿勢が大切です。
上流工程から巻き込むことで「安さ重視バイヤー」も一歩踏み込んだ対話へ導けます。
6. バイヤーは“自社バリューチェーン全体”で考える
目先の原価だけでなく、「この材料・この部品が不良品率低減・納期短縮・最終顧客満足にどう効くか」、自社製品・サービスのバリューチェーン全体で価値をとらえ直す習慣をつけましょう。
他部門との連携や顧客フィードバックも重視することで、調達=コストセンターという認識を打破できます。
7. 海外現地法人・グローバル案件で「価値重視バイヤー」と競い合う
グローバル案件を通じて、欧米流のバイヤーと実際にやりとりする経験を増やすことで、「価値評価」の基準や交渉力の違いを肌で理解できます。
日本本社が「安さ重視」であっても、海外現地法人発の仕入れ事例・提案を積極的に国内に展開し、相互の学び合いを促進することが重要です。
まとめ:現場から「価値重視」への一歩を
製造業は今、大きな転換点に立たされています。
昭和的な“安さ追求”のままでは、世界に通じる競争力は築けません。
これからのキーワードは「トータルバリュー」「共創」「課題解決型のものづくり」です。
サプライヤーもバイヤーも、まずは目の前のコスト削減だけに囚われず、「なぜ」「どんな価値をもたらせるか」を問い続けてください。
現場から積み上がる実践が、やがて製造業全体の新たな地平線を切り拓く。
「価値重視」へと進む一歩を、今日から皆さんとともに踏み出していきましょう。
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