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日本の調達が重視する“リスクヘッジ力”の伝え方

目次
日本の調達現場が最重視する「リスクヘッジ力」とは
調達購買の世界で近年ますます注目されているキーワードが「リスクヘッジ力」です。
これは単なる原材料や部品の値下げ交渉だけではなく、サプライチェーン全体を俯瞰した“危機管理能力”といってもよいでしょう。
特に昭和から続くアナログな商習慣が根強く残る日本の製造業では、これまで以上にリスクへの備えが問われる局面が増えています。
本記事では、日本の調達現場に深く根付いた「リスクヘッジ力」とその伝え方について、現場の生の視点で解説していきます。
そもそもなぜリスクヘッジが重要視されるのか
ものづくり大国日本の抱える“致命的脆弱性”
日本の精緻なサプライチェーンは、高品質な製品を安定供給する上で世界的な強みとなっています。
しかしその反面、「ひとつの部品が入らない」だけで工場全体が停止する、まさに“一点集中型”の危うさも孕んでいます。
2011年の東日本大震災や、2020年の新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンを経て、この弱点が一気に顕在化しました。
「日本のものづくりは Supply Chain のどこに弱みがあるのか?」
この自問が調達購買部門だけでなく、全社的な課題となりリスクヘッジ強化が叫ばれているのです。
バイヤーの頭の中は「何が止まるとどう困るか」でいっぱい
実は、素材や部品・パーツ・サービスなど“購買対象”を選ぶにあたり、バイヤーは「もしもの時にどうリカバリーするか」を常に考えています。
・自然災害
・海外サプライヤーの政情不安
・物流トラブル
・サイバー攻撃
・品質逸脱
さまざまなリスクを想定し、柔軟かつ具体的な対策力(=リスクヘッジ力)を持ったサプライヤーを選定する動きが加速しています。
普段は価格や納期だけでなく、「非常時対応策」を極めて重視していることをサプライヤー視点でもしっかり理解する必要があります。
リスクヘッジ力の本質とは?
調達部門が「重視しているポイント」
多くの部品メーカーや材料商社は、「大手に選ばれるには単価を下げて納期を守るだけ」と考えがちです。
確かにコストや安定供給は大切ですが、リスクヘッジ力という重要ファクターを押さえることで、実は格段に取引競争力が高まります。
・自然災害時やパンデミック発生時に即時対応できるか?
・BCP(事業継続計画)は具体化されているか?
・代替生産拠点や在庫体制が明確になっているか?
・サイバーセキュリティ、情報流出リスクも想定しているか?
・有事の際の連絡・伝達経路や意思決定ルールはどうか?
これらが“調達購買からみたリスクヘッジ力”です。
製品提案や営業の現場でここが伝わらないと、「いざというとき弱いサプライヤー」との評価になりやすいのです。
日本の特殊な“相手目線文化”を知る
日本の大手製造業が持つ“リスク対応力重視”の価値観には、根強い「取引先を守る」相手目線があります。
「当社も万が一に備えて十分な用意をしているので、御社もぜひ一緒に安全網を作ってほしい」
そんな「共に乗り越えるパートナー」意識が強く、単なる購買取引を超えた“運命共同体”としての連帯感が色濃いのです。
この背景を読み取ったうえで、リスクヘッジに対する具体的な対応力や準備を積極的に伝えることが関係性の深まりにつながります。
昭和体質から抜け出せない業界の“現実”にも着目
紙による受発注、FAX、属人的ノウハウ…
いまだに紙の伝票やFAXが主流で、ノウハウが特定ベテランの頭の中だけに蓄積されている。
昭和時代から通用している現場文化が、今もなお多くの大手工場で息づいています。
これがいざ災害やパンデミックが起きた途端に、大幅な混乱のリスク要因となるのです。
「デジタル化が遅れているから、サイバー攻撃は関係ない」と考えるのは危険です。
今や複数の取引先ネットワークが少しでもデジタル化していれば、攻撃リスクや誤送信リスクは避けられないのです。
レガシー文化と付き合いながら何を伝えるべきか
こうしたアナログ文化圏で信頼されるためには、
・従来の紙やFAX対応はきちんと守る
・しかし、効率や安全確保のため部分的なデジタル化提案も併用する
・人任せだったリスク対応手順を「見える化」「標準化」する
このように、既存文化を否定せず、しかし次代へのステップも提案していく“ハイブリッド型の対応力”が評価されます。
サプライヤーが自社のリスク対応力をアピールする際、無理に業務改善を押しつけるのではなく、“今のやり方でも一歩進んだ備えができる”ことを伝えると刺さりやすくなります。
バイヤー目線で伝えるべき「リスクヘッジ力」実践例
具体的なアピールポイント例
1. 複数拠点による生産体制を持っている(災害時の供給継続が可能)
2. コア部材は2ライン以上で調達・在庫管理(ボトルネック回避)
3. 過去有事実績とそこからの改善事例(経験を共有)
4. BCP訓練や情報セキュリティ教育の実施回数・内容
5. 有事の際の緊急連絡網・意思決定フロー(誰が、どのタイミングで対応するか)
こうした情報は、定期的に「リスクヘッジニュース」としてバイヤーサイドへ発信しつづけることで取引信頼も増します。
「担当者が替わっても安心」まで見せる
昭和的な製造業界では、個人の勘や経験でやりくりしていることが多く「担当×担当の信頼」に依存しやすい特徴もあります。
だからこそ、
・BCPや緊急連絡体制をドキュメント化
・新任担当者向け教育や引継ぎ体制の整備
これを実務レベルまで落としこみ、「担当交代しても品質と納期は維持できる」ことを明瞭に伝えることが選定の大きな後押しとなります。
まとめ:これからの調達・購買に必要なのは“伝えるリスクヘッジ力”
製造業のサプライヤーは、これまで以上に「リスクヘッジ力」を積極的に社外と社内両方にアピールすることが必要です。
・なぜリスクヘッジが評価されるのか
・従来文化を尊重しながら一歩進むアピールの仕方
・具体的予防策・体制を、分かりやすく伝え続ける姿勢
これが、競争激化する日本の調達現場で勝ち抜く“新しい標準”になっています。
これからバイヤーを目指す方、現場でサプライヤー営業をする方は、ぜひ“現実のリスク”を具体的に想像し、その克服策を自信をもって伝えてください。
「なぜそこまで備えているのか?」
バイヤーとの信頼は、この問いへの説得力ある“答え”から始まります。
そして今後の業界発展のためには、単なる価格競争ではない、“共に守る力”が強いサプライヤー・バイヤー関係を広めていくことが求められています。
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