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OEMとODMのハイブリッド開発が向くケースとは

目次
OEMとODMのハイブリッド開発が向くケースとは
はじめに:変化する製造業の現場とハイブリッド開発の重要性
製造業の現場では、厳しいコスト競争と技術革新の両方に対応することが求められています。
従来は、OEM(Original Equipment Manufacturer:受託製造)、ODM(Original Design Manufacturer:設計・開発受託製造)のいずれかに発注方法を絞って業務を進めるケースが大半でした。
しかし今、OEMとODMを掛け合わせる「ハイブリッド開発」という新しい選択肢が台頭し、既存の調達購買手法の枠組みを大きく広げつつあります。
本記事では、20年以上の製造現場経験をもとに、OEMやODM単体ではカバーしきれなかった「新しい現場ニーズ」にハイブリッド開発がどのようにマッチするのか、現場目線で徹底解説します。
バイヤー志望の方、サプライヤーでバイヤーの心理を知りたい方も必見です。
OEMとODM、それぞれの特性を簡単におさらい
まず、基本となるOEM・ODMの特徴を簡単に整理しましょう。
OEMは、自社ブランドの商品を他社に製造委託し、設計や仕様は基本的に発注者側が細かく指示します。
一方、ODMは、製造委託だけでなく、設計・開発段階からサプライヤーが担う形で進行します。
コストダウンや短納期化、開発リスクの分散など「調達の柔軟性」の観点からも、両者は明確な違いがあります。
しかし、市場や技術の変化が速い現在、OEMかODMの“一択”運用では限界を感じる現場も増えています。
ハイブリッド開発とは何か――境界を越える新しいアプローチ
ハイブリッド開発とは、製品の一部機能やサブアセンブリはOEM方式、他の一部はODM方式というように、プロジェクト内でOEMとODMの「いいとこ取り」をする調達戦略です。
現場では、設計の中核部分は自社主導で守りたいが、周辺機構や一部の構造物(カバーや筐体)はサプライヤーへ設計・製造ごと委託したい、などの柔軟なニーズが多発しています。
このような場面で、OEM・ODMの手法をハイブリッドに導入することで、効率化とリスクヘッジ、技術の最適化が両立できるのです。
OEMとODMのハイブリッド開発が向く5つの代表的ケース
1. 市場変化への迅速対応が不可欠な新興製品開発
家電やデジタル機器など、消費者ニーズやトレンドの移り変わりが激しい分野では、部品やモジュールの開発・組み合わせに、OEM・ODMのハイブリッド手法が威力を発揮します。
たとえば、デザインやブランド価値が主力となるスマートデバイスでは、ユーザーインターフェース部分は自社が細かく監修(OEM方式)。
一方、通信やバッテリー、筐体など大量生産で強みを持つ構造部分はODMパートナーに開発から一任する、といった切り分けが理想的です。
このような複合的な分業は、時間短縮やコスト削減、仕様の急変更への柔軟対応を可能とします。
2. “多品種少量生産”戦略をとるニッチメーカー
近年、カスタマイズ製品やBTO(Build to Order)の広がりとともに、“多品種少量生産”を追求するメーカーが増えています。
このような場合、基幹部品や基盤設計は自社で一括管理(OEM)。
周辺部の仕様変更が頻繁にある部分のみODMに委託し、個別案件ごとの開発負担を減らすことで、営業競争力を維持しやすくなります。
この方式は、部品共通化や開発項目ごとの役割分担を最適化できるため、在庫管理や原価低減といった課題解決にもつながります。
3. 自社技術のコア領域を守りたいとき
自社の強みである先端技術や独自ノウハウを「ブラックボックス」として厳密管理したい、競合に技術流出したくない、というニーズは多くのメーカーで共通です。
この場合、コア技術に直結する部分の設計・製造は完全に自社/OEMで抑え、周辺技術(例:外装、配線、インターフェース類)はODMで最適提案できるサプライヤーに開発依頼するという形が最適化します。
機密保持契約(NDA)や試作検証の枠組みを整理しやすいため、社内外での管理コストやリスク低減にも寄与します。
4. レガシー産業のDX・自動化推進
昭和時代から根強く残るアナログ的な生産現場でも、今やデジタル化やスマートファクトリー化が加速しています。
例えば、既存ラインの自動化(FA化)・IoT化では、多数の既設設備や仕様が複雑にからみ合うため、部分的に現場仕様(OEM方式)と現代仕様(ODM方式)を組み合わせる必要があります。
現場の“大ベテラン”と最新テクノロジーの融合を図るうえでも、ハイブリッド調達は双方の強みを活かせるノウハウと言えます。
5. 海外拠点との協業・グローバル分業の推進
現代製造業では、設計は国内、量産は海外などグローバル分業が普通になっています。
この場合、重要機能パーツや仕様設定は国内本社でコントロール(OEM)。
現地拠点にはカスタマイズの自由度が高いサブユニットやパッケージ部分だけODMで任せる…といったケースが増えています。
サプライチェーン全体の最適化や、ローカライズ対応のスピード向上に直結しやすい点が大きなメリットです。
実現のポイント:ハイブリッド開発を成功に導く4つの要素
ハイブリッド開発のメリットを最大限引き出すには、現場でのノウハウ共有と合意形成がカギとなります。
以下の4点に特に留意しましょう。
1. 明確な「業務切り分け」とプロジェクト管理
何を自社で設計・製造し、何をサプライヤーへ委託するのか――業務範囲の切り分けを明確に定義する必要があります。
不明確なまま進めると、責任の所在や品質問題の原因が曖昧化しがちです。
WBS(作業分解構成図)やガントチャートなどを用いて、両社にとって“見える化”を進めることが重要です。
2. ユーザー視点での品質保証と仕様最適化
ODM部分に委託する際には、サプライヤー任せになりすぎて自社本来のユーザー志向や品質基準が薄くなりがちです。
そこを防ぐために、ユーザー視点に立った性能検証や、部材選定の基準管理などを調整しましょう。
共同レビュー会議や、仕様変更時の速やかな合意形成のルール作りも欠かせません。
3. 技術情報と知的財産の適切なコントロール
コア技術部分の情報流出や、ODM仕様が自社技術と被る場合の知的財産権(IPR)トラブルには、特に注意が必要です。
適切なNDA締結や情報管理フローの整備、トラブル発生時の解決策について予め協議しておくことが肝要です。
4. サプライチェーンの柔軟な再設計・最適化
部品や素材調達も含めた全体サプライチェーンの設計が、ハイブリッド開発の成功につながります。
従来の“掛け値商談”や“勘と経験”で進めるアナログ方式から一歩抜け出し、サプライヤーとの連携協調、ITシステムによる見える化推進も組み合わせることで、新たなシナジーを生み出せます。
バイヤー・サプライヤー双方に求められる姿勢とは
バイヤー、そしてサプライヤー双方の考え方や心理を理解することが、ハイブリッド開発の価値を最大化します。
バイヤーは、“発注すれば終わり”ではなく、サプライヤーの技術・提案力を積極的に引き出す「パートナー意識」と、リスク管理・イノベーション推進の両立が今後ますます重要になります。
対してサプライヤー側は、バイヤーの本当の課題やユーザー期待に寄り添い、自社技術だけでなく「提案ストーリー」や「現場課題解決力」を高めることがカギになります。
従来の“自分たちのやり方”に固執せず、現場目線でバイヤーの世界観や出口市場を理解する努力が、これからの時代にこそ求められているのです。
まとめ:現場から始める「調達進化」が業界地図を塗り替える
OEMとODMのハイブリッド開発は、単なる技術や手法の話ではなく、現場で培った知恵と課題解決力そのものの変革です。
“昭和から続く商習慣”に留まらず、グローバル競争とデジタルイノベーションの交差点で、製造業は今、根本から進化しています。
調達購買、生産管理、品質管理など、すべてのものづくり現場で「次の一手」を模索する皆さんに、この記事が一つの新しい地平線を指し示すヒントとなれば幸いです。
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